障がい者の求人を担当されている人事担当者の皆さんであれば、『職場適応援助者』という言葉を一度は聞かれたことがあるのではないでしょうか。別称『ジョブコーチ(JC)』とも言われ、障害者雇用関連の法律でしっかりと明記された資格です。
この職場適応援助者の役割は「企業に雇用された障がい者が職場で円滑に就労できるように専門的な立場からの支援をおこなう」というものです。もう少し具体的に紹介をすると、例えば「職場での仕事の進め方」「役割の理解」などのアドバイスや説明、「規則正しい生活リズム(睡眠・食事・通院・服薬など)」「ご家族との連携」などのプライベート面の支援が挙げられます。
主には障がい者に対しての支援が中心となりますが、職場の管理者・従業員へのアドバイスや本人とのスムーズな橋渡しとしての役目も担ってくれますので、人事担当者にとっては大きなメリットを感じる心強い存在です。もし、未経験からくる不安が障害者雇用の取り組みを邪魔するのであればこの機会に活用してみませんか。
この『職場適応援助者』には「配置型ジョブコーチ」「訪問型ジョブコーチ」「企業在籍型ジョブコーチ」の3つの種類があります。
配置型ジョブコーチ
各都道府県に設けられている「地域障がい者職業センター」に配置するジョブコーチを指します。就職等の困難性の高い障がい者を重点的な支援対象として自ら支援を行うほか、訪問型ジョブコーチ及び企業在籍型ジョブコーチと連携し支援を行う場合は、効果的・効率的な支援が行われるよう必要な助言・援助を行います。(以前までは、第1号職場適応援助者と呼びました)
訪問型ジョブコーチ
障がい者の就労支援を行う社会福祉法人等に雇用されるジョブコーチを指します。高齢・障がい・求職者雇用支援機構が実施する訪問型職場適応援助者養成研修又は厚生労働大臣が定める訪問型職場適応援助者養成研修を修了した者であって、必要な相当程度の経験及び能力を有する者が担当します。(以前までは、第1号職場適応援助者と呼びました)
企業在籍型ジョブコーチ
障がい者を雇用する企業に雇用されるジョブコーチを指します。機構が実施する企業在籍型職場適応援助者養成研修又は厚生労働大臣が定める企業在籍型職場適応援助者養成研修を修了した者が担当します。(以前までは、第2号職場適応援助者と呼びました)
今回は、『職場適応援助者』を活用することで受給できる助成金制度『障害者雇用安定助成金 障がい者職場適応援助コース』をご紹介します。現在、法定雇用率未達成のために罰金のような納付金を支払っている企業の担当者の方必見です。
障害者雇用安定助成金 障がい者職場適応援助コースとは
『障害者雇用安定助成金 障がい者職場適応援助コース』
【概要】
この制度は、企業に雇い入れされた障がい者が、職場での適応や定着などに課題がある場合、就労の安定を図るために企業へ『職場適応援助者(ジョブコーチ)』を派遣。障がい特性を踏まえた専門的な支援やアドバイスを障がい者本人並びに職場へ提供するサービスの費用の一部を助成金として受給できるものです。特に、今後雇用の数が増えてくることになる「精神障がい者」や「発達障がい者」の職場定着を目指す企業にとっては非常にメリットのある制度です。
【詳細】
管 轄:各地域の労働局
内 容:『障害者雇用安定助成金 障がい者職場適応援助コース』の受給には下記の2つのタイプに分けられます。
- 訪問型職場適応援助者による支援…事業主の依頼に合わせて、配置型ジョブコーチ及び訪問型ジョブコーチが企業に訪問し、支援計画に基づいたサポートを実施します。
- 企業在籍型職場適応援助者による支援…支援計画に基づいたサポートを自社で雇用する企業在籍型ジョブコーチに行わせた場合に助成金を支給します。
訪問型 | 企業在籍型 | |
---|---|---|
支援内容 |
① 支援計画書の策定 |
① 対象労働者および家族に対する支援 |
支援期間 |
1回の支援計画は最長1年8か月 |
1回の支援計画は最長6か月 |
支給額 |
支給額は①と② の合計です。 ①支援計画に基づいてジョブコーチ支援を行った日数に、以下の日額単価を掛けて算出された額 ②訪問型職場適応援助者養成研修に関する受講料を事業主がすべて負担し、かつ、養成研修の修了後 6か月以内に、初めての支援を実施した場合に、その受講料の1/2の額 |
支給額は①と②の合計です。 ①対象労働者1人あたりの月額(下表)に、支援計画に基づく支援を行った月数を掛けた額(最大6か月) ②企業在籍型職場適応援助者養成研修の受講料を事業主がすべて負担し、かつ、養成研修の修了後6か月以内に、初めての支援を実施した場合に、その受講料の1/2の額 |
また、受給を検討される際は所管の労働局へ問合せしてください。
厚生労働省HP 「障害者雇用安定助成金 障がい者職場適応援助コース」のご案内
障害者雇用安定助成金 障がい者職場適応援助コースを活用すべき企業とは
① 就労支援系の福祉事業所から人材採用をしている企業
現状の障害者雇用を見てみると、「精神障がい者」や「発達障がい者」の求人や採用が増えてきました。理解や経験値の高い企業であれば越えていくことができるハードルであっても、これから取り組みを始めようとする企業にとっては未知なる部分の多い経験となります。そのような時、外部資源となる就労支援系の福祉事業所の存在は企業にとって頼りになります。障がい者に関する知識習得や理解促進のアドバイスもしてもらえ、人材の紹介もしてもらえます。もちろん紹介してもらった人材を雇用した後、職場定着のためのサポートですが、その福祉事業所から来ていただく支援スタッフがジョブコーチの有資格者であれば、この助成金制度を活用することができます。
もし、就労支援系の福祉事業所からの人材採用の場合、ジョブコーチの資格について確認をしてみてください。
② 複数の障がい者を雇用している企業
あくまでも目安ですが、障がい者を10名以上雇用している企業であれば、在籍型ジョブコーチを取得されたほうが良いと思います。今後も企業に対する障害者雇用の義務は高くなっていきます。また、これまでの「身体障がい者」を中心とした求人から「精神障がい者」「発達障がい者」に移行していますので、職場での定着や専門性の高い支援を目指す上でも取得が望ましいと考えます。
その際、新たな障がい者の雇用時にこちらの助成金制度を活用していくことが可能です。
障害者雇用安定助成金 障がい者職場適応援助コースのポイント
この障害者雇用安定助成金 障がい者職場適応援助コースは、2018年度より新たに始まる「就労定着支援事業」を見ても、雇用された障がい者の職場定着率の向上に力を入れようとする国や厚生労働省の考えが大きく反映されています。
障害者雇用は、採用活動に力を入れている企業はあるのですが、定着こそが重要な点となります。義務感からの採用活動ではなく、この点をよくご存知の事業主の皆さんには、是非とも活用していただきたいと思います。
当ミルマガジンでは、なるべく分かりやすく解説をするつもりですが、受給を検討される際は必ず管轄の労働局や各種助成制度の窓口に問合せしてください。