助成金を知る『障害者雇用調整金/障害者雇用報奨金』

障がい者の求人や雇用を担当する人事担当者にとって自社の障がい者法定雇用率を常に把握しておくことが必要です。(理想を言えば経営層の方々にも気にしておいてほしいですが)

自社の法定雇用率が充足しているのであれば気持ちにも余裕がありますが、その数値がギリギリであったり、努力しているが達成できない状態だとしたら、新年度が始まる時期は迎えたくないなぁといったところではないでしょうか。この時期は「障害者雇用状況報告書」による六一報告があるため、いわゆる“前年度における障がい者求人や雇用定着の結果発表”のようなものです。この1年間でどれだけの成果が挙げられたのかが数値で表されることになりますので、人事担当者の力量が計られるといっても過言ではないと思います。

ご存知の通り、法律となる「障害者雇用納付金制度」のもと、年間を通じて雇用数が不足していた場合にはその数に応じて納付金(罰金)を納めることになっています。

改めて、納付金とは常用雇用労働者が101名以上の企業を対象に法定雇用率に満たない障害者雇用数だった場合、一人につき月額50,000円の納付金を国に納めるというものです。企業規模によっては年間に数百万円単位で納付しているところもあります。悲しいお話ですが、企業によっては障がい者をひとり雇い入れるよりもコストが低いから支払っておけばいいという認識でいる会社もありますが、「1年間頑張って儲けた利益から支払っていること」「法令を破っていること」をくれぐれも忘れないようにしてもらいたいです。

この「障害者雇用納付金制度」にはもうひとつの顔があります。それは、法定雇用率を上回って障がい者の雇用をしている場合、受給することができる助成金があります。

障害者雇用調整金・障害者雇用報奨金とは

【概要】この制度は、法定雇用率を満たしていない企業が納める納付金とは対照的に、法定雇用率を満たしている企業に対して支給される給付金となります。
このふたつの助成金制度の違いは“企業の規模”となり、『障害者雇用調整金』は常用雇用労働者101名以上の企業が対象。もうひとつの『障害者雇用報奨金』は納付金制度の対象ではない常用雇用労働者100名以下の企業が受給できる給付金です。

【詳細】

障害者雇用調整金

管 轄:各地域の独立行政法人 高齢・障がい・求職者雇用支援機構

内 容:常時雇用している労働者数が100人を超える事業主で障害者雇用率(2.2%)を超えて障がい者を雇用している場合は、その超えて雇用している障がい者数に応じて1人につき月額27,000円の障害者雇用調整金が支給されます。

障害者雇用報奨金

管 轄:各地域の独立行政法人 高齢・障がい・求職者雇用支援機構

内 容:常時雇用している労働者数が100人以下の事業主で、各月の雇用障がい者数の年度間合計数が一定数(各月の常時雇用している労働者数の4%の年度間合計数又は72人のいずれか多い数)を超えて障がい者を雇用している場合は、その一定数を超えて雇用している障がい者の人数に21,000円を乗じて得た額の報奨金が支給されます。

独立行政法人 高齢・障がい・求職者雇用支援金HPより 「障害者雇用納付金制度の概要」のご案内

障害者雇用調整金・障害者雇用報奨金を活用すべき企業とは

『障害者雇用調整金』および『障害者雇用報奨金』を活用すべき企業としては、当然のことながら、法定雇用率を充足している企業が対象となりますので、自社の雇用状況を確認した上で手続きを行ってください。

特に『障害者雇用報奨金』は、法定雇用率未達成による納付金支払いの対象ではない常用雇用労働者100名以下の企業が受給できる給付金です。少額ではあるもの、規模の小さな企業で障害者雇用に積極的な会社を応援する制度であるため、歓心するところであります

注意事項があります。ひとつはそれぞれには申告期間があります。

  • 障害者雇用調整金:毎年4月1日から5月15日まで
  • 障害者雇用報奨金:毎年4月1日から7月31日まで

『障害者雇用調整金』については期間も短く、既に過ぎてしまっていますが、毎年決まった時期となりますので、次回に申告までに法定雇用率を上回る成果をあげてください。

もうひとつも申告について。「障害者雇用状況報告書」は常用雇用労働者が101名以上の企業全部が対象となりますが、年間を通じて101名の期間が5ヶ月を超えた場合に申告義務が発生します。また、年度の途中に事業廃止などの理由で5ヶ月以上でない場合であっても申告が必要なることがありますので、念のため管轄の「独立行政法人 高齢・障がい・求職者雇用支援機構」にご確認ください。

障害者雇用調整金・障害者雇用報奨金のポイント

今後、企業に対して障害者雇用を促進する一方で、企業の求人や雇用定着を後押しする制度設計というものが求められないといけません。「障がい」に抱くイメージというのは、企業や一緒に働く従業員にとってはハードルであり、時には促進を邪魔する存在となります。国や厚生労働省が障がい者の雇用を進めるのであれば、なるべく企業が取り組みに対する姿勢が取れるだけの助成制度を増やしてもらいたいと願います。

追記ですが、今回ご紹介しました制度以外にも各自治体単位で障害者雇用における各種『奨励金』という制度を設けています。
検索するだけでいくつかの制度が出てきましたので下記に記載します。

当ミルマガジンでは、なるべく分かりやすく解説をするつもりですが、受給を検討される際は必ず管轄の労働局や各種助成制度の窓口に問合せしてください。

ABOUTこの記事をかいた人

[障害者雇用コンサルタント]
雇用義務のある企業向けに障害者雇用サポートを提供し、障害者の雇用定着に必要な環境整備・人事向け採用コーディネート・助成金相談、また障害者人材を活かした事業に関するアドバイスを実施。障害者雇用メリットの最大化を提案。その他、船井総研とコラボした勉強会・見学会の開催や助成金講座の講師やコラム執筆など、障害者雇用の普及に精力的に取り組んでいる。

▼アドバイス実施先(一部抜粋)
・opzt株式会社・川崎重工業株式会社・株式会社神戸製鋼所・沢井製薬株式会社・株式会社セイデン・日本開発株式会社・日本電産株式会社・株式会社ティーエルエス・パナソニック株式会社・大阪富士工業株式会社・株式会社船井総合研究所・株式会社リビングプラットフォーム