身近にある『マイノリティ』な視点から障がい者雇用を考える

自分が普段の生活の中で『マイノリティ』だと感じることがあるでしょうか。
ここで挙げる『マイノリティ』とは、「社会的少数派」「どちらかというと決定権を持たない側」といった社会的な不便さや不利な状況が考えられる集団を表すワードとして使用したいと思います。

我々が「身近な『マイノリティ』」として思い浮かべるなら、

  • 左利き
  • 社会進出した女性
  • 子供、若者
  • 外国人
  • ジェンダーレス  など

といったところでしょうか。

少数派対多数派といった対立構図を作りたいわけではないことを大前提とした上で、身近で比較的分かりやすい事例として「左利き」を取り上げてみたいと思います。日常生活の様々な場面で「左利き」という『マイノリティ』な立場が被る不便があります。

例えば、

  • 自動改札機:カードをかざしたり切符の挿入口が右側のみ
  • 自動販売機:お金の投入口が向かって右側に配置
  • パチンコ:玉を弾くハンドルが右側に配置
  • PC用マウス:販売されているほとんどが右利き用
  • カッター:刃の出し入れする操作が右利きのみ
  • 他にも包丁、ハサミ、楽器、サイドテーブル付チェアなど多数。

「左利き」の不便さはこれら設備や道具に限定されたものばかりではありません。
私の「左利き」の友人は、食事に行く際に座る位置を右利きの人以上に気にします。ラーメン屋さんでよく見られるカウンター形式のお店で食事を摂るときには、隣に座る右利きの人と肘が当たらないように気を使ったり、左側が壁の席に座ってしまうと左手を動かしにくくなってしまうから気をつけるなど、マジョリティである右利きには理解しづらい悩みがあります。
右利きの私自身「左利き」の友人を持ったことで特有の悩みや不便を知ることができたと自覚しています。

私の小さかった頃には、「左利きは右利きに矯正する」ことが当たり前のように言われていた時代でした。確かに、今よりももっと不便さを感じる時代でしたから、矯正してでも不便さを取り除いてやりたいと考える親の気持ちも分からないではないですが、「矯正」という言葉には多少抵抗を感じます。
この世の中にある設備やルールといったものは多数を占める人たちの声を強く反映して形成されています。

次に、社会に視点を移したときに「障がい者」も『マイノリティ』な集団だと言えます。「障がい者」の場合、一括りにしてしまいがちですが、身体・知的・精神の障がい特性による違いはもちろんのこと、同じ特性の障がい者であっても感じる不便や困りごとには個々で違いがあります。

先ず、イメージしていただきやすい「身体障がい」を例に考えてみたいと思います。東京や大阪にあるような都会は、モノやお店が豊富にあり、公共交通機関も発展しているため自由に行きたいところに行ける便利のいいところだと言われます。しかし「障がい者」にとっても同じかというとそうではありません。

例えば視覚障がい者が電車を利用して外出する際、ホームから転落するかもしれないリスクを忘れてはいけません。(ホームドアが未設置の駅がほとんど)車イスを使う障がい者は自宅の周辺環境によっては歩いて数分の距離にあるコンビニすら行くのに躊躇します。(自宅とお店の間に坂がある、未舗装の道路など)
更には、視覚過敏のある発達障がい者は照明が眩しいと感じる場所が屋内であってもサングラスを掛けている。知的障がい者が好きな電車に乗って大きな声をあげてしまう。といった行動について、障がいに対する理解と認識が浸透した環境下では許容されますが、この『マイノリティ』への理解にはもう少し時間が必要なようです。

『マイノリティ』に共通して感じるのは「量が少数だということにプラスして社会的な立場(発言力)が弱い集団」としての視点なのですが、それは企業内においてもあることを自然と強いられているように感じます。

それは「我慢」という言葉で表現されています。
私の考える「我慢」は、「一時的で決められた期間を辛抱強く耐え凌ぐこと」であって、その時間が過ぎれば解放される内容のものです。決して慢性的に耐え凌ぐことを強要したり、辛い状態が当前だと理解させることではないと思います。「障がい者」のような組織や社会の中での『マイノリティ』は声を上げることが難しい行為であったり、小さな声は届きにくいため、どうしても「我慢」やその先の「諦め」につながりやすくなります。

企業の人事担当者から「障がい者雇用で上手く進んでいる企業の特徴はどのようなところですか?」と質問を受けることがあります。頭に思い浮かぶのは、「はたらく障がい者の声に耳を傾け、その声に対応しようとする姿勢のある企業」です。これは障がい者に限定した話ではありません。発展、成長する組織や社会というのは、変化に気づき柔軟に対応しようとする意識から生まれると思います。
それぞれの立場が相手の気持ちを汲み取り、理解を示すことができる組織作りに取り組める企業は非常に魅力的に見えます。

ABOUTこの記事をかいた人

[障害者雇用コンサルタント]
雇用義務のある企業向けに障害者雇用サポートを提供し、障害者の雇用定着に必要な環境整備・人事向け採用コーディネート・助成金相談、また障害者人材を活かした事業に関するアドバイスを実施。障害者雇用メリットの最大化を提案。その他、船井総研とコラボした勉強会・見学会の開催や助成金講座の講師やコラム執筆など、障害者雇用の普及に精力的に取り組んでいる。

▼アドバイス実施先(一部抜粋)
・opzt株式会社・川崎重工業株式会社・株式会社神戸製鋼所・沢井製薬株式会社・株式会社セイデン・日本開発株式会社・日本電産株式会社・株式会社ティーエルエス・パナソニック株式会社・大阪富士工業株式会社・株式会社船井総合研究所・株式会社リビングプラットフォーム