「一般社団法人日本障害者雇用担当者協議会」について

企業の障がい者の求人・採用担当の皆さんはご存知のことだと思いますが、現在の法定雇用率2.3%が令和6年(2024年)4月1日に2.5%、令和8年(2026年)7月1日に2.7%へ引き上げられることが決まりました。
その他にも令和7年(2025年)4月1日には除外率制度の適応を受けている企業は一律10%の除外率引き下げ、精神障がい者の週20〜30時間未満の短時間労働を1カウントに算定とする法律の改正と週10~20時間の短時間労働で働く重度の身体障がい者・知的障がい者や精神障がい者も実雇用率への算定(0.5カウント)が可能となるなど、今後障がい者の雇用が更に進められることになります。

併せて、企業の障がい者人事担当者や職場管理者が障がい者雇用の実務担当者としている職場がほとんどだと思いますが、今後企業で働く障がい者が増えることで実務担当者の組織内での役割の重要性がより一層求められます。

2022年8月に一般社団法人日本障害者雇用担当者協議会〈以下、協議会〉を設立しました。協議会では、現役で障がい者雇用に携わる実務担当者が集まり、お互いの企業で取り組む障がい者雇用の場面で困った時・悩んだ時に解決策に出会える『プロフェッショナルが集う会』を目的に活動をしています。
今回は協議会の活動内容についてご紹介します。

「一般社団法人日本障害者雇用担当者協議会」とは

協議会は当初、企業の障がい者雇用を担当する実務担当者が企業の垣根を超えて横のつながりを作り、自社で取り組む障がい者雇用をより良いものに発展させることを目的として集まった任意団体として、コロナ禍である2020年9月に立ち上げました。

立ち上げ当初は大阪の企業数社の実務担当者が中心となって定期的に集まる場に参加しながら、その時の雇用状況を報告し合い、または直近に発生した出来事にまつわる相談を議題に意見を出し合う会として始まりました。
会を重ねるごとに参加される実務担当者の数も増え、それに合わせて各企業での取り組み事例や経験談も増えてきたため、悩みやそれぞれの組織で発生する課題といった実務担当者が職場で遭遇するものの解決に苦慮する内容について対応方法につながるヒントが得られる会へと発展してきました。

企業での事例をもとに障がい者雇用を世の中に広めていきたいと考える想いが強くなり、全国の企業を対象にする組織へと大きな一歩を踏み出す機会とするために2022年4月に協議会発足記念セミナーと題して、協議会に参加する企業の雇用事例の報告やパネルディスカッションなどを開催し、当日は多くの企業関係者の方々にご参加いただきました。

レポート:日本障害者雇用企業協議会『発足記念セミナー』

2022.06.14

このセミナーの開催をきっかけにして一般社団法人を設立し、現在は関西圏に限らず全国から参加を希望される企業があります
おそらく、冒頭でお伝えしました令和6年度以降の法改正による雇用状況を見極め、自社の取り組み強化を図る実務担当者からの問い合わせが増えているのだと感じます。



「実務担当者のための会」であること

協議会では「障がい者雇用の質の向上」を目指し、参加企業が取り組む障がい者雇用の事例を共有、参考となる取り組み方法や考え方・意識を拡散していきたいとの考えから「実務担当者のための会」であることが重要なミッションだと捉えています。

多くの実務担当者は企業の中で障がい者雇用の取り組みに関して孤軍奮闘しています。
その理由は、障がい者雇用が企業の中では優先順位として高くないために障がい者の求人活動や雇用定着に向けた取り組みの情報やデータが蓄積されていない組織が多いと感じます。実務担当者になった方に引き継がれる情報やデータは纏められてないことが少なくないため、手探りで取り組みを進めたり、相談事があっても聞く先も分からない、頼る先も分からない。採用にいたってはどのようにして求人・面接を行えば良いのかも分からないといった状況にあります。
分からないことばかりの中でも法定雇用率の達成、職場で戦力になる障がい者の採用、受け入れに非協力的な部署への説得などの成果を求められた結果、必要な人材とのマッチングも進まず孤立しがちな状態となり、結果として誰もやりたがらない役割となっています。

実務担当者にとって「やりがいを感じられない」「成果につながらない」活動では、障がい者が職場で活躍し、周囲からも求められるような障がい者雇用の実現は難しいだろうと考えます。

協議会には企業の障がい者雇用の最前線で活躍する実務担当者の方々が集まっています。各企業の実務担当者が、実際に取り組んだ採用活動や業務切り出し方法などを伝える以外にも組織内で理解を得るために苦労した経験、新たな事業の立ち上げに必要となった知識を会の中で共有することで、これまでにはなかった実務担当者が実務担当者のために活動する会となっています。

「実務担当者の地位を確立」させる意味

これまで、企業内に蓄積されにくかった障がい者雇用に関連した情報や知識・経験について、協議会に参加することで現役の実務担当者同士が自分たちの知識と経験を共有し、自社の取り組みとして活用させることができる会がこの協議会になります。

現在、具体的な活動としては毎月定例会を開催しています。
定例会では参加する実務担当者から直近の障がい者雇用に関する取り組み状況を中心に、課題や相談したい議題について各自がこれまでの経験をもとに自社の事例やアドバイスを提供します。また、定例会ごとに掲げるテーマに基づいて様々な意見交換を行います。

参考までに過去のテーマとして
「入社後、障がいがあったことが分かった従業員からの相談」
「障がいのある従業員からイジメがあったと相談」
「モチベーションが下がってしまった障がい者への対応」
がありました。

答えを導き出すだけではなく、テーマに挙げたような事象が発生したときに自社であればどのような対応策が考えられるのか、活用できるリソース情報などを知る機会となっています。

最近ではコロナ禍でもありますが、徐々に制限される場面も少なくなってきたこともあり、感染対策を実施した上でリアルとリモートを併用しながら定例会を開催しています。



今後ですが、障がい者の実務担当者の育成にも目を向けていきたいと考えています。
ご存知の通り、これからの障がい者雇用は専門性が求められる時代になってきます。令和4年度の障がい者雇用状況の集計結果では、精神障がい者の実雇用数が10万人と突破。前年との比較では身体障がい者(前年比0.4%減)・知的障がい者(前年比4.1%増)よりも高い11%の伸び率となっており、今後ますます精神障がい者・発達障がい者の雇用が進んでいきます。
また、法定雇用率の引き上げなどによる影響で、企業の障がい者求人数がより一層増えることで、企業で働く障がい者の数も増えていきますから、今後は障がいの特性傾向が強い人材も職場で活躍できる環境づくりが求められます。

そのためには様々な障がい特性のある人材への配慮を含め、個々の人材と向きあう必要が生まれるということは、専門的な知識・経験が少ない実務担当者が業務を担うには大きな負担となりかねません。「企業に人材を合わせる時代から企業が人材に合わせる柔軟さが求められる社会」です。
このような社会では障がい者に限った話ではないことは言わずもがなです。

そういったことから協議会では、企業で障がい者の実務担当者として働きたいと考える人材を育成していきます。参加企業の実務担当者との交流をはじめ、企業内での実習や求人・採用活動への参加など、実務を通して知識と経験を積むことで、企業での実務担当者として戦力化できる人材を育てていきます。

他にも協議会の活動を通じて「質の高い障がい者雇用の実現」に向けた具体的な取り組みを発信していきたいと考えています。



名 称:一般社団法人日本障害者雇用担当者協議会
U R L:https://nihonsktk.wixsite.com/my-site
参加企業
【幹事企業】株式会社日本障害者雇用総合研究所
The Links株式会社
阪和興業株式会社
株式会社革靴をはいた猫
【加盟企業】株式会社JR西日本あいウィル
株式会社フェリシモ
大和リース株式会社
株式会社障がい者つくし更生会
株式会社エルアイ武田
特定非営利活動法人ディーセントワーク・ラボ
株式会社日米クック
OSPハートフル株式会社
株式会社MBTジョブレオーネ
積水化学工業株式会社

 《2023/2月現在》
 ※ 順 不 同
 他、参加希望の企業多数

ABOUTこの記事をかいた人

[障害者雇用コンサルタント]
雇用義務のある企業向けに障害者雇用サポートを提供し、障害者の雇用定着に必要な環境整備・人事向け採用コーディネート・助成金相談、また障害者人材を活かした事業に関するアドバイスを実施。障害者雇用メリットの最大化を提案。その他、船井総研とコラボした勉強会・見学会の開催や助成金講座の講師やコラム執筆など、障害者雇用の普及に精力的に取り組んでいる。

▼アドバイス実施先(一部抜粋)
・opzt株式会社・川崎重工業株式会社・株式会社神戸製鋼所・沢井製薬株式会社・株式会社セイデン・日本開発株式会社・日本電産株式会社・株式会社ティーエルエス・パナソニック株式会社・大阪富士工業株式会社・株式会社船井総合研究所・株式会社リビングプラットフォーム