【Q&A】今後求められる障がい者雇用担当部署の役割りについて②

前回の続き

【Q&A】今後求められる障がい者雇用担当部署の役割りについて①

2020.12.08

障がい者雇用がある一定の水準を満たしたときに、担当する部署も「個」→「組織」へと成長させる必要があり、それには『役割の明確化』と『情報の共有化』が重要だというお話をしてきました。

それでは、もう少し具体的にお話をしていこうと思います。
まず、『役割の明確化』をみた時にそれぞれどのような役割りが該当するのでしょうか。

『役割の明確化』

  • 統括本部(人事

(a)求人・採用活動
(b)社内研修・実習の調整
(c)配属部署からの相談・フォロー対応
(d)就労支援機関等の外部リソースとの窓口
(e)取り組みに関する社内外への広報活動
(f)情報収集(法律、助成金・制度、雇用事例など)

  • 職場(配属先)

(g)障がい者知識の習得、経験の蓄積
(h)日常業務のサポート
(i)障がい者とのコミュニケーション(定期面談、相談対応)
(j)従業員へのフォロー・ヒアリング
(k)業務の切り出し・改善

特にこの中で重要になってくるのが、統括本部の場合は(c)(d)です。
(c)では、基本的に配属された障がい者の日々の対応は職場の管理者や一緒に勤務する従業員となります。日々の対応の中では、業務や職場環境、人間関係に関する相談なども発生します。そういった時に職場だけでは対応しきれない事象においては、社内で専門的な立場である統括本部の担当者が加わって相談やフォローに対応します。

現在、法定雇用率の達成はもちろん、社会的意識の高まりと雇用義務の観点から、今後企業が取り組む障がい者雇用は、専門的な知識をもとにした職場での配慮や周囲の理解・協力が不可欠といっても過言ではありません。そのためには障がい者雇用に関わる各分野の専門機関の活用というのも、リスクを軽減させることができるひとつの方法であり、想像以上にメリットがあります
例えば、(d)助成金に関することであれば「ハローワーク」、求人や雇用定着については「障がい者就労支援福祉サービス」、一般雇用した発達障がい者の診断を受けたという相談であれば「発達障がい者支援センター」といった具合に、企業の周囲には力強い専門家がたくさんありますのでそれらを活用しない手はないです。

また、職場であれば特に重要になってくるのが(i)(j)です。
障がいのある方が心身の健康を維持させながら仕事に就いてもらうためには(i)の役割は決して軽いものではありません。障がいの特性は別にして職場で勤務されている障がい者とはコミュニケーションを図り、常に耳を傾けている姿勢を取ってください。
普段、機嫌よくはたらいていると思っていた障がい者の方が、実は職場での不満や悩みを抱えていて、ある時から会社との関係がこじれてしまったというお話は少なくありません。この人は大丈夫だと思っていても、日頃からのコミュニケーションは欠かせません。

それと、(j)は障がい者ではなく、一緒にはたらいている従業員からのヒアリングやフォローに関することになります。職場にはいろいろな立場の方がはたらいていますので、障がいのある方に対するできないこと・不便なことへの配慮や協力は必要ですが、他の視点や意見も参考にしながら環境づくりが望ましいと考えます。また、障がいのある方から言い出しにくいことや気付かないことも周囲からであれば意見として聞けることもあります。

『情報の共有化』


次は『情報の共有化』についてですが、先ず過去にあった企業のエピソードを2つご紹介します。
このままでは納付金(罰金)の対象になってしまう会社の経営者が社会貢献と義務という意識のもと、近隣の就労移行支援事業所からの協力で初めて障がいのある人材を採用することになりました。人事担当者を中心に従業員向け研修や職場での実習など、何もかもが初めてではありましたが、周囲の理解を得るために十分な準備期間を設けていましたので、無事に1名の障がい者Aさんの雇用が決まりました。Aさんがはたらき始めてしばらくしてから、人事担当者のところへ下記のような内容の相談がありました。
「ある仕事に関して、担当のBさんとCさんのそれぞれが違った業務の進め方で指示を出してきて困っています。Bさんから教えてもらった方法で仕事をしていたらCさんから注意を受け、Cさんの進め方で仕事をしていたらBさんから叱られてしまい、入社したばかりの私ではどうすれば良いのか分かりません。」

Aさんは、それ以降会社を休みがちになってしまいましたが、指揮命令者と業務の流れを統一させるなど職場の対処が早かったため、徐々に体調の回復も見られるようになりましたが、こういったお話は決して少なくありません。担当のBさんもCさんもAさんのことを思って指導していたことが、当の本人にしてみたら二人の指示がそれぞれ邪魔をしてしまっていたように思えます。この場合の問題は「部署内の情報共有」が十分でなかったために起こった事例です。

もうひとつのエピソードは入社のタイミングで起こりやすい事例です。
軽度聴覚障がい者のDさんは企業面接の際に必ず自身の障がい特性の説明とお願いしたい配慮事項を伝えるようにしていました。例えば、「1対1であれば会話可能」「複数が参加する会議などは誰が話しているか分かりにくい」「電話の声は聞き取りづらいため業務から外してほしい」といった内容で、会社の理解を進めてもらった上で採用の判断をもらいたいという考えからくるものでした。

ある企業に就職が決まったDさんは、当然自身の障がいのことや配慮事項が部署内に共有されていると思っていました。ところが、「なぜDさんは電話に出ないのか」「会議で発言しないのはおかしい」といったクレームが社内で起こったため、Dさんは職場で居心地の悪い状態となってしまいました。
これは、面接時の情報が職場の従業員に共有されていなかったために発生した事例ですが、「部署間の情報共有」が十分でなかったことが原因です。

このように『役割の明確化』を進めることで、関係する部署や人が増えるために『情報の共有化』にほころびが出てしまうことが考えられます。
逆に『情報の共有化』を組織内でしっかりと浸透させることで『役割の明確化』の強みが一層活かされるというメリットがあります。

ABOUTこの記事をかいた人

上前 忠司 (日本障害者雇用総合研究所代表)

[障害者雇用コンサルタント]
雇用義務のある企業向けに障害者雇用サポートを提供し、障害者の雇用定着に必要な環境整備・人事向け採用コーディネート・助成金相談、また障害者人材を活かした事業に関するアドバイスを実施。障害者雇用メリットの最大化を提案。その他、船井総研とコラボした勉強会・見学会の開催や助成金講座の講師やコラム執筆など、障害者雇用の普及に精力的に取り組んでいる。

▼アドバイス実施先(一部抜粋)
・opzt株式会社・川崎重工業株式会社・株式会社神戸製鋼所・沢井製薬株式会社・株式会社セイデン・日本開発株式会社・日本電産株式会社・株式会社ティーエルエス・パナソニック株式会社・大阪富士工業株式会社・株式会社船井総合研究所・株式会社リビングプラットフォーム