職場環境を整える以外にも必要な雇用定着につながる3つのポイント

2018年は障がい者の雇用や福祉に関する法律の改正があり、これまでと大きく変わった特徴が見られます。
それは、今までよりも一層企業に雇用された障がい者の職場定着に軸足を置いた内容になったと感じています。更に助成金などの雇用を後押しする制度も増えてほしかったと思います。

今回の法律改正で新しく定められた福祉サービスのひとつが「就労定着支援」といわれるものになります。
これまでは「障がい者の雇用」に重点が置かれていました。その結果、近年では義務化されている企業の努力により毎年前年を上回る障がい者雇用数が実現されてきました。そして、次の段階として企業に就職した障がい者の離職率の抑制という課題解決に進んだと考えられます。理由は今回の法律改正の目玉であった「精神障がい者の雇用義務化」の施行によって障がい者法定雇用率が引き上げられました。それにより、企業の人事担当者が精神障がい者・発達障がい者をターゲットとした求人活動に舵を切った結果として、先ごろ厚生労働省より発表されました「平成30年障害者雇用状況の集計結果」では、精神障がい者の雇用数は全国で67,000人を超える数字となりました。(過去最高)

しかしながら、精神障がい者・発達障がい者の雇用後1年以内の離職率は他の障がい特性と比較しても高い数値となっていることも目を背けることのできない現実であることから、職場定着の実現には新たな取り組みの構築が企業に対して求められています。

新しいサービス「就労定着支援」について

【就労定着支援】
企業で働く障がい者の職場定着を目的とした福祉サービス。
就労定着支援事業所の許認可を取得している障がい者支援福祉機関と企業が契約し、福祉機関の専門スタッフによる障がい者ご本人や企業へのサポートを実施。最長3年間。

私は普段の仕事として企業で働いている障がいのある従業員の方たちと定期面談やカウンセリングなどのコミュニケーションを図ることが少なくありません。その中でも安定して働くことができている障がいのある従業員にはいくつかの特徴があります。
特徴を3つのポイントでお話いたします。

① 就労定着支援の活用


「就労定着支援」はその名の通り、雇用されている障がい者に職場で直接関わってもらうことで離職を少しでも減らすことを考えています。
もちろんのことながら、「就労定着支援」事業を取得している福祉機関は障がい者に関する専門機関(多くの事業所が就労移行支援事業と併設)でもありますから、企業が障がい者雇用で不足している知識や経験値面をフォローしてもらうことができますので、実際に活用している人事担当者からは助かっているという声をよく聞きます。(法律に関するアドバイスや助成金についても)仮に「就労定着支援」をしてもらう福祉機関から採用した障がい者であれば、本人の特徴をよく理解した支援を実施してもらえます。

繰り返しになりますが、これからの障がい者雇用の職場定着実現のためには外部にある専門機関からの協力は不可欠となってきます。

② プライベートの安定


近年、改正労働安全衛生法によるメンタルヘルス対策の考え方として、職場環境整備や安全の確保といったことが進んできました。
しかしながら、職場環境が安定していてもプライベートが不安定な場合、仕事に大きな影響が発生します。これは、障がい有無に関わらず、私たちであっても「家族間の問題」「私的なトラブル」「借金」など、プライベートで大きな問題を抱えてしまうことは珍しい話ではありません。仮にそのような問題を抱えてしまったとしたら、仕事にも支障をきたしてしまいます。

特に「家族間の問題」によりプライベートが不安定になっている障がい者は本当に多いと感じます。
本来であれば、障がいのある子どもたちの自立を応援するはずの親が邪魔な存在となることがあります。それは、親の過保護であったり子どもの障がいへの理解不足だったり。それが原因で退職してしまうという話は決して少なくありません。そういった家族や身内との問題に企業が介入するというのは非常に難しいシチュエーションです。そのようなときでも、「①」の定着支援を受けていることで、プライベートとなる家族との連絡や調整にも関わってもらうことができます
障がい者雇用の実績や経験値が増すことで企業も家族とコミュニケーションを取る機会が増えてきますが、それだけの実績がない企業にとっては大きなメリットです。

障がいのある従業員が安定的に働くためには職場環境にプラスしてプライベートの安定も重要な点となります。

③ 日々の心身状態の把握


障がいのある従業員の普段の働く様子を注意深く見ることは、仮に変化が起こった時に周囲が気付くという点で重要な働きかけになります。
しかし、もっと早期の段階で変化に気付くことができれば良いと思いませんか。
職場で障がいのある方たちに「気になることがあれば言ってくださいね。」とお願いをした場合、自発的に報告や相談のできる方々ばかりではありません。特に精神障がい者・発達障がい者の方たちの中には考えや感情をアウトプットするのが苦手な人も多く存在します。そのようなときには、今の状態や感情、気持ちなどを伝えやすくするチェックシートを用いて可視化することをお勧めします。

例えば、出勤時と退社時に「心の状態」「体の状態」を複数の項目として記したチェックシートを記入してもらいます。そのチェックシートをもとに毎朝夕に簡単な面談(各5分程度)を実施するだけで効果があります。これはメンタルヘルス対策にも通じる点ですが、問題が顕在化する前に予防・対処することができます。

以上が今回お伝えしたかったお話です。
法定雇用率が不足しているために毎年納付金(罰金)を支払っている企業にとって、目先にある目的は雇用の充足です。しかしながら、本来の雇用の目的は「障がい者の職場定着」にあります。是非そのことを忘れずに雇用の取り組みを考えてみると障がい者雇用が企業のメリットになり得ると思います。

ABOUTこの記事をかいた人

上前 忠司 (日本障害者雇用総合研究所代表)

[障害者雇用コンサルタント]
雇用義務のある企業向けに障害者雇用サポートを提供し、障害者の雇用定着に必要な環境整備・人事向け採用コーディネート・助成金相談、また障害者人材を活かした事業に関するアドバイスを実施。障害者雇用メリットの最大化を提案。その他、船井総研とコラボした勉強会・見学会の開催や助成金講座の講師やコラム執筆など、障害者雇用の普及に精力的に取り組んでいる。

▼アドバイス実施先(一部抜粋)
・opzt株式会社・川崎重工業株式会社・株式会社神戸製鋼所・沢井製薬株式会社・株式会社セイデン・日本開発株式会社・日本電産株式会社・株式会社ティーエルエス・パナソニック株式会社・大阪富士工業株式会社・株式会社船井総合研究所・株式会社リビングプラットフォーム