2018年度の後ろ姿が見えてくるこの時期になりますと、各企業の障害者雇用に関する動きが慌ただしくなってきます。
数ヶ月後に施行される精神障がい者の雇用義務化に伴い障がい者法定雇用率が現行の2.0%から2.2%へ引き上げられる対策として、雇用に積極的な企業は「年度内のうちに雇用が不足している〇名の障がい者採用を達成させるぞ!」「引き上げられる0.2%にとどまらず、プラス0.3~0.4%を目標に採用する。」といった声や「新たに精神障がい者や発達障がい者の雇用の枠組みを社内で構築していきたい。」などの動きも見られるようになっています。
一方で、これから本格的な障がい者の採用活動を始める企業も多くあります。2020年に開催されます「東京オリンピック・パラリンピック」の影響もあり、社会が障がい者に対して大きな関心事として捉えている雰囲気も感じています。(毎年放送される某チャリティー番組に関連した“感動ポルノ”という言葉が聞かれるようになったのもそのひとつではないでしょうか)
そのような状況の中、今回のコラムは久しぶりに企業からのご相談にお答えしたいと思います。
今回のご相談先のように、これから障がい者の採用活動を本格的に始めようと考えている企業が増えてきているのは間違いありません。前段でお話ししましたように、社会の関心事としての向きが大きくなっていることと、少し前までの障害者雇用とは違ったかたちが見えてくるようになりました。
それは、これまで障害者雇用の中心となっていた身体に障がいを持つ人材の採用から精神障がい者・発達障がい者へと移行してきていることが影響していると考えます。障がい者という括りではありますが、周囲の関わり方や配慮のかたちが違っているのは明らかです。企業の障害者雇用の目的は、“雇用”ではなく、“定着”が目指すところだと思います。
それでは、ご相談にあります障害者雇用を始める上で注意する点を含めた「障がい者の雇用定着」までのステップを下記のように6つのステージに分けてご説明したいと思います。
- 採用準備
- 従業員への研修
- 募集活動
- 実習・面接・採用
- 情報共有
- 雇用後のケア
① 採用準備
募集活動を始める前に実施いていただきたいことがあります。それは、自社の障害者雇用における情報収集をしていただくことです。先ず、「現在の状況」と「過去の実績」を調べてください。
「現在の状況」とは障がい者の雇用数やカウント数、達成率などの実数面と健常者の一般採用(新卒・中途)による従業員増や高齢の障がい者であれば定年退職時期など、雇用率に影響のある従業員の増減も把握しておくことが必要です。例えば、近い将来に高齢の障がい者が定年退職となる場合、ポイント減を見越した採用活動のスケジューリングが必要となります。できる事なら、退職される前に新しい人材の雇用をしておきたいのですが、採用競争の激しい今の時代、欲しいと思ったタイミングで都合よく採用できるかどうかは不透明です。中期的なポイントの状況を把握し、採用活動を進めておくことがいいでしょう。
「過去の実績」につきましては、これまでどのような募集や採用の実績があるのか。また、雇用後の業務は何をしていたのか。周囲は障害者雇用のことをどのように理解していたのかなど、今までの実績の中から「何が問題だったのか」「どこに課題があるのか」といった障害者雇用の取り組みを進めることへのハードルとなる部分をクリアしていくための明確化させる必要があるためです。
「障害者雇用に対する周囲の理解度が低いため」ということが大きな課題なのであれば、どのようにして従業員の方たちの理解を深めることができるのかといった具体的対策を打つために必要な情報となります。
非常に地道で時間の掛かる作業となるのですが、障害者雇用を自社に根付かせるためには、今の立ち位置をしっかりと把握しておくことが重要となります。
あと、準備段階で社外の専門機関を活用することもお勧めします。採用を進めるにあたり、自社の課題や取組みに必要な点を専門的な視点からアドバイスしていただけます。近くに就労移行支援事業所などの就労系の福祉事業所がありましたら、人材の採用に関しても自社に最適な雇用に導いていただけるので、探してみてはいかがでしょうか。
それと、スケジュールを立てることも忘れずに実施してください。詳細な立て方が理想ではありますが、「2ヶ月後までに社内で研修」「6ヶ月後までに1~2名の新規採用」など、大まかなモノでも構いません。他の業務に流されないように、意識づけの意味合いもありますので、計画通り進めるようにしてください。
今回はここまで。次回は②~④についてお話しします。
障がい者の採用が簡単ではないという情報はよく聞いており、尚のことどのように始めればいいのか分かりません。アドバイスがありましたら、よろしくお願いします。