障がい者雇用をサポートする助成金について

障がい者雇用は、「障害者雇用促進法」によって枠組みが定められています。障害者雇用促進法は、障がい者の雇用と在宅就労の促進について定められた法律で、障がいがある人の職業の安定を実現するために制定されたものです。

障害者雇用促進法は1960年に制定された「身体障害者雇用促進法」をベースにしており、障がいの有無に関わらず、全ての人がそれぞれの希望や能力に応じて、全ての地域で自立し尊重される生活を送ることができる共生社会の実現を目指す法律です。

そしてその内容は大きく分けて雇用側に対する措置と、障がい者本人に対する措置の二つが定められています。
雇用側に対する措置では事業主に雇用義務制度が設けられており、障がい者を雇用した場合には障害者作業施設設置当助成金や障害者介助等助成金などの助成金を支給するというものです。

障がい者を雇用しようと思ったものの、サポートなどでコストがかかることから足踏みしている企業の方も多いと思います。そこで、今回は、サポートをするために必要な助成金について紹介いたします。
まず、助成金の前提となる障がい者雇用納付金制度について説明いたします。その後で、助成金について、説明いたします。

障害者雇用納付金制度とは

障害者雇用納付金制度は、障がい者の雇用促進と安定を図るために設けられた制度です。この制度の前提として、「障害者の雇用の促進等に関する法律(障がい者雇用促進法)」が定める、「障害者雇用率制度(法定雇用率)」があります。

2021年6月現在では、民間企業の法定雇用率は2.2%となっており、企業は常時雇用している労働者数のうち、2.2%以上の障がい者を雇用することを義務付けられています。国や地方公共団体、特殊法人等は2.5%、都道府県等の教育委員会は2.4%となっています。

障害者雇用促進法で定められた法定雇用率が未達成の企業から納付金を徴収し、そのお金を主たる財源として、法定雇用率を達成している企業に調整金や報奨金、助成金を支給するしくみになっています。

今回は、この助成金について、どんなものがあるかを紹介いたします。

障害者雇用納付金制度に基づく助成金とは


障害者雇用促進法に基づき設けられた障害者雇用納付金制度として、障がい者の雇入れや雇用の継続を行うために必要となる施設・設備の整備や雇用管理の整備等の措置を行う事業主または事業主の団体に対して、当該措置を行うことにより生じる経済的負担の調整と障がい者の雇用の促進等を図ることを目的としています。

助成金の対象となる障がい者は、事業主等に雇用される身体障がい者、知的障がい者、精神障がい者、発達障がい者、難病患者、高次脳機能障がいのある者です。また、雇用後に身体もしくは精神障がい等を有することとなった者(中途障がい者も対象)となります。

助成金には以下の5つがあります。

1. 障害者作業施設設置等助成金・障害者福祉施設設置等助成金

作業施設、作業施設等の整備を行う事業主の方への助成金・福利厚生施設の整備を行う事業主等の方への助成金です。

  • 障害者作業施設設置等助成金

障がい者を常用労働者として雇い入れるか継続して雇用する事業主で、その障がい者が障がいを克服し作業を容易に行えるよう配慮された施設または改造等がなされた設備の設置または整備を行う(賃借による設置を含む)場合に、その費用の一部を助成するものです。

  • 障害者福祉施設設置等助成金

障がい者を継続して雇用している事業主または当該事業主の加入している事業主団体が、障がい者である労働者の福祉の増進を図るため、保健施設、給食施設、教養文化施設等の福利厚生施設の設置または整備する場合に、その費用の一部を助成するものです。

2. 障害者介助等助成金

障がい者を労働者として雇い入れるか継続して雇用している事業主が、障がいの種類や程度に応じた適切な雇用管理のために必要な介助等の措置を実施する場合に、その費用の一部を助成するものです。ICT(情報通信技術)を活用した事例でも支給対象となります。詳細は以下の通りです。

  • 職場介助者の配置 職場介助者の委嘱
  • 職場介助者の配置の継続 職場介助者の委嘱の継続
  • 手話通訳・要約筆記等担当者の委嘱 障がい者相談窓口担当者の配置
  • 重度訪問介護サービス利用者等職場介助 職場支援員の配置又は委嘱
  • 職場復帰支援

3. 重度障害者等通勤対策助成金

重度身体障がい者、知的障がい者、精神障がい者または通勤が特に困難と認められる身体障がい者を雇い入れるか継続して雇用している事業主、またはこれらの重度障がい者等を雇用している事業主が加入している事業主団体が、これらの障がい者の通勤を容易にするための措置を行う場合に、その費用の一部を助成するものです。詳細は以下の通りです。

  • 重度障がい者等用住宅の賃借 指導員の配置
  • 住宅手当の支払 通勤用バスの購入
  • 通勤用バス運転従事者の委嘱 通勤援助者の委嘱
  • 駐車場の賃借 通勤用自動車の購入
  • 重度訪問介護サービス利用者等通勤援助

4. 重度障害者多数雇用事業所施設設置等助成金

重度身体障がい者、知的障がい者または精神障がい者を多数継続して雇用し、かつ、安定した雇用を継続することができると認められる事業主で、これらの障がい者のために事業施設等の設置または整備を行う場合に、その費用の一部を助成するものです。

5. 職場適応援助者助成金

  • 訪問型職場適応援助者による支援
  • 企業在籍型職場適応援助者による支援

詳細は、独立行政法人高齢・障がい・求職者雇用支援機構のWebサイトをご覧ください。
https://www.jeed.go.jp/disability/subsidy/index.html

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▼プロフィール:
1970年岐阜県生まれ。生まれつき聞こえない。大学生時代より、「知る権利の保障」などの社会問題に広く関わり、車いす団体のAJU自立の家などで様々なボランティア活動を経験し、障害の種別を乗り越えた「クロスディスアビリティ」視点を持つ。
従来の枠組みに囚われない新しい視点で、2010年に様々な心身の特性や考え方を持つすべての人々が相互に理解を深めようとコミュニケーションをとり支え合う「コミュニケーションバリアフリー」を推し進めることで、誰もが暮らしやすい豊かなコミュニケーション社会の実現を目指す、特定非営利活動法人インフォメーションギャップバスターを設立。同団体の理事長として現在に至る。
2020年より認定NPO法人DPI日本会議特別常任委員も務める。