『テレワーク』という働き方をご存知でしょうか。最近よく耳にされる言葉だと思います。「在宅勤務」とイメージをされる方が多いかもしれませんが、会社から離れた場所で勤務するということを指しますので、カフェなどでPCを使って仕事をしているといったものも含まれるようです。
『テレワーク』とは、ICT(Information and Communication Technology)を活用した場所や時間にとらわれず柔軟な働き方の実現を言います。
ここ数年の間に、技術の発展の影響で私たちの生活環境は大きく進歩しました。仕事の場面を見ても、スマホを使った通信やPC処理能力の向上など、会社に居なくても成果を出すことができる状況となりました。そして、これら技術の発展や勤務の見直しは、障害者雇用の場面でも大きな影響を生み出すひとつとなっています。
今回は、『テレワーク』という働き方がこれからの障害者雇用に適した理由をお話ししたいと思います。
① 企業の現状に合わせた雇用を実現できる
本来、障がい者の勤務は他の従業員と同様に自社に通勤し、働いてもらうことが望ましいのですが、“受入れの環境”が整っていない状態で障がいを持つ方が入社した場合、望ましくない結果となってしまう可能性があります。この“受入れの環境”が指しているのは、「従業員の理解」や「設備のバリアフリー」などです。採用の担当者の方々が額に汗して採用した障がい者と働くことになるのは、実務に関わる従業員の皆さんです。
採用後に配属先の従業員の方たちに障がい者の世話などを丸投げしてしまった結果、周囲からの協力が得られずに職場定着できなかったというお話しは少なくありません。理解と協力を得るためには一緒に働く従業員へのサポートも重要なポイントです。私自身は採用活動よりも今いる従業員へのサポートの方が大切なのではないかと考えています。
それらを含めた“受入れの環境”作りにはしっかりと時間を掛けないといけません。また、設備面などのバリアフリー導入には費用も掛かってきますから、簡単に進めるということもできにくい企業もあるでしょう。
そういった点を考えると『テレワーク』にて会社から離れた場所で勤務してもらうことで、これらの課題を抱えていても障害者雇用を実現することが可能となります。
② 障がい者の特性にも適した勤務形態
企業の都合だけではなく、障がい者の都合での『テレワーク』を導入するメリットもあります。
例えば、朝の通勤ラッシュ。下肢に障がいのある方にとっては、階段の昇り降りや電車を待つ人でいっぱいのプラットホームなど、非常に危険な場面に遭遇します。また、精神障がい者の中には人込みがダメでパニック状態になる人もいます。
障がいの特性や特徴によっては、人と接することが苦手だったり、周囲の話し声や香水などの匂いに対して敏感に反応してしまい業務に支障をきたすといった方もいらっしゃいます。
このような場合でも、障がい者に負担となるストレスを軽減させながら仕事に就いてもらうこともできるようになります
③ 競争過多な地域にある企業の救いの手
障がい者の採用が活発化して以来、特に東京都や大阪府、愛知県などの企業が集中している地域では、障がい者の採用競争が非常に激しくなっています。他の地域と違って、人口比率に対して企業の数が適していない状況なのだと考えます。
この場合、企業の比較的少ない地域に目を移してみると、競争過多な地域ではすぐに採用されていてもおかしくないような障がい者人材がいたりします。障がいのある方の傾向として、地元を離れなかった人は親御さんと一緒に暮らしているケースが多いので、就職に対してそこまで強く意識していないように見受けられます。決して、働きたくないということではなくて、自分に合った選択肢が少ないからという意味です。
『テレワーク』による遠隔地での雇用を実現することで、こういった人材を眠らせておくのではなく、自社の戦力として障害者雇用に結びつけることができるのです。
実際に、少しずつではありますが、遠隔地での障害者雇用を実現させるための「サテライトオフィス」を提供するビジネスも出てきており、企業からの要望の高まりを感じています。
④ 障害者雇用以外の労働者にも(働き方改革)
一時期に比べて、年間の自殺者は減少傾向にあります。一方で、仕事を通じた過労やストレスによる自殺などの労災認定は年々増加傾向にあります。また、労働力不足といった問題も企業には大きな課題として取り上げられています。
そのような中、従業員の働き方や雇用の新しい方向として「産休・育休制度」や「メンタル不調による休職者のリワーク制度」などが導入されるようになりました。但し、それらを実践するためのルール化作りや現実性、企業規模(大企業以外)などを見てみると、もう少し時間が必要なようにも感じています。
実は、障害者雇用に適した『テレワーク』という働き方は、他の労働者にも大いに活用してもらえる側面があります。例えば、「育休・産休」や「高齢者介護」などでプライベートの時間確保が必要な従業員にとって『テレワーク』は、仕事の合間を縫ってプライベートに時間を充てることができます。企業側にとっても必要な人材が新しく入れ替わるリスクやコストと比較しても、十分に利益となる雇用形態となります。
現在、『テレワーク』に使うツール類も非常に素晴らしく、使いやすいものへと進化しました。同じく、働き方というのも従来からの形ではなく、新しいものに進化させていく時代ではないでしょうか。