お世話になります。障がい者雇用枠で勤務しています。
職場での『合理的配慮』についてご相談があります。
就労移行支援事業所からのサポートを受けながら勤務して6ヶ月が過ぎました。今のところ順調に働くことができています。
職場の雰囲気や仕事にも少しずつ慣れてきましたが、業務に取り組む上で障がい特性に関連した配慮をお願いしたいと感じることが出てきました。
会社に合理的配慮をお願いする場合、どのようにお話をすれば理解していただけそうでしょうか。また、お願いしたことが原因で会社から拒否されてしまい働くことができなくならないか不安な気持ちもあります。
よろしくお願いします。
《システム開発会社勤務、32歳、発達障がい》
【A】
ご相談ありがとうございます。
合理的配慮につきましては企業の人事担当者からも相談をいただくことも多くあり、表現が曖昧なところもあるためにいまひとつ理解されにくいのではないかと思っています。
内閣府が発行している『合理的配慮』に関するリーフレットから一部抜粋すると、
「障がいのある人から、社会の中にあるバリアを取り除くために何らかの対応を必要としているとの意思が伝えられたときに、負担が重すぎない範囲で対応することを求めます。」
とあります。
職場であれば、障がいの特性により与えられた業務の遂行に著しく影響を及ぼしたり不利益となる環境下にある場合、事業主はその原因を取り除くための配慮を実施すること。となります。
考えられる例としては、
- 「聴覚障がい者」の場合
緊急避難時、音によるサイレンだけではなくランプなどの視覚による情報伝達手段を設置する。
- 「視覚障がい者」の場合
PCに表示される情報を音声ガイドソフト導入や拡大鏡の設置により、正確に取得できるような環境を設ける。
- 「精神障がい者」の場合
急な体調不良でも業務に支障がないように複数名がお互いの業務内容を理解しカバーできる体制にしておく。
などが挙げられます。
今回のご相談者は発達障がい特性がある方で、就労移行支援事業所の通所を経て障がい者雇用枠として企業に就職されたとあります。障がい特性の詳細は分かりませんが、発達障がいに由来する配慮となりますので職場の障がいに対する理解度も気になるところですが、ご相談の文面を見る限り現在のところ問題なく勤務ができる環境だろうと推察します。
発達障がいの場合、メディアや書籍などで取り上げられる機会も増えてきたために、徐々にではありますが社会での理解も進み、企業で勤務する人材も増えてきました。一方で「障がいの特性」を一括りにして捉える部分(思い込み、バイアス)も多く残っています。
例えば「聴覚障がい者とのコミュニケーションには手話が必要」と考える方も少なくないと思いますが、成人してから聴覚障がい者になった人の多くは手話ができなかったりなど、その人ごとに必要としている理解や配慮には違いがあります。そのため、配慮を希望する際には自分のことを明確に伝えることが非常に大切になってきます。
そこで、配慮してほしいことを伝えるにあたり3つポイントに注意しながら考えられるように、下記に説明します。
ポイント①「困っていることを伝える」
・仕事をするにあたり自分の障がい特性が原因で困ること・不便なことを伝える。
・伝え方としては、
「時間管理が苦手で業務の締切を過ぎてしまう」
「音に敏感なため仕事に集中できないことがある」
「報告や相談が苦手」など。
ポイント②「自分で注意・工夫していることを伝える」
・困ること・不便なことに対して自分で対処している点を具体的に伝える。
・伝え方としては、
「事前に締切日時を確認し、指定されていない場合必ず確認をする」
「業務中はイヤーマフ(音を遮断するヘッドフォンのようなツール)を装着する」
「報告や相談する内容をメモにしておく」など。
ポイント③「困りごとを解消するための理解と配慮してほしいことを伝える」
・困ること・不便なことを解消するために実施しているポイント②で埋められない点を周囲からの理解と配慮によって補ってもらいたいことを伝える。
・伝え方としては、
「業務の依頼の際には締切日時を明確に伝えてほしい」
「仕事中にイヤーマフを装着している際、音楽を聴いているわけではない。電話に出ることができない」
「相談や報告する文章をまとめるのに時間か掛かることを理解してほしい」など。
ここで考えてほしいのはポイント②になります。
職場で感じる困ること・不便なことを解消するために周囲にお願いするばかりではなく、自分でできるところは自分でも注意・工夫を取り入れることを意識する点です。世の中に自分でなんでも完璧にこなすことができる人はいないのと同じで、人にはできることとできないこと、得意なことと不得意なことが必ずあります。障がいの有無に関係なく、自分でできることは自分で取り組み、どうしてもできないところを人に頼って生きていると考えると、配慮についても同じことが言えます。
最後に、ポイント③で周囲にお願いする配慮については、決して自分ひとりで考えるのではなく、職場のリーダーや先輩などを頼って一緒に考える方が、より職場で取り入れやすい配慮方法が見つかるはずです。