今回は【採用活動編】の続きということで求人募集や採用面接をする上で必要となるポイントをご紹介したいと思います。
3.求人募集のルート確保は複数
障がい者の採用で求人の募集広告を出す場合、一番多いのはハローワークではないでしょうか。費用も掛かりませんし、求職中の障がい者が手軽に相談できる機関となりますので、求職者情報も定期的にもらえる人事担当者にとっては心強い窓口です。
但し、求人募集先が1箇所ではなかなか多くの人材を見ることができなかったりします。
私の考えとしては、人材は出来るだけたくさんの候補者から選ぶことをお勧めしています。
よく言われるように、障がいの特性は“人の性格”や“癖”と同じで、障がい者手帳では同じ特性でも個々の特徴は違ってきます。特徴が違うということは配慮やサポートの内容も変わってきます。下肢に障がいを持っているから階段の昇り降りができないかというと決してそうではありません。聴覚に重度の障がいを持っているからといって健常者とコミュニケーションが取れないのかというと決してそう人材ばかりではありません。正直なところお会いしてみるまで、その方の障がいの程度や配慮の有無、スキルなどの部分は分からないことが多いというのが実情です。
では、候補となり得る人材すべてとお会いしなければいけないとなると大変な時間と労力が掛かってしまいます。
企業の人事担当者にそのような時間があるとも思えません。では、どうするべきか。答えは求人募集を出せる先を複数にすることです。現在は、障がい者の人材紹介に特化した「人材会社」や障がい者の就労訓練を提供する福祉サービスの「就労移行支援事業所」などが増えてきました。少し前に比べても、企業ニーズを汲むことが上手くなり、企業側の要望に合わせた人材を紹介していただけます。ということは、すべての人材に会わなくてもある一定の基準まで人選した障がい者を提案してもらえます。利用するメリットは小さくありません。また、採用や雇用に関する相談にも対応していますので、自社に適切なアドバイスをいただくこともできます。
両者の違いですが、「人材会社」については一般的な人材紹介と同じ形態です。提案者の中から面接をし、採用が決まった時点で紹介手数料を支払うという流れです。特徴としては、人材が障がい者となりますので障がいの特性や必要な配慮などを事前に確認した上でご紹介をしていただけるため、時間と労力が大幅に軽減できるところになります。
「就労移行支援事業所」についてはあまり馴染みがないのではないでしょうか。比較的新しい福祉サービスのひとつで、国からの許認可事業となります。目的は個々の障がい者に適した職業訓練はもちろん、日常生活に必要な知識なども教えてもらえるところになります。最近では事業所の数が年々増えてきており、特定の障がいに特化したサービスの提供をする事業所も出てきています。こちらは単なる人材紹介ではなく、業務の切り出しのお手伝いや障がい者の実習訓練などを経た上で採用となり、その後も定期的な職場サポートを実施していただけます。利用するメリットは大きく、特に障がい者の受け入れの経験があまりない人事担当者にとっては、非常に心強い味方となるはずです。また、国からの許認可事業となりますので基本的には無料での対応となります。
4. 面接に注意
私が障がい者の方々と面接をするときにも注意する点があります。
先ずは、障がいのある現在の生活リズムや日常生活についてです。
簡単なところでは事故や病気、メンタル不全により障がい者手帳を取得してからの期間を確認します。障がい者と認定されてからの期間が短いと生活リズムが整っていないことがあります。特にうつ病や統合失調症を抱えている場合、心のバランスを崩す原因や兆候に気付けなかったり、生活スタイルが定まっていないために体調を崩しやすかったりしますので、仕事や周囲に対して影響が出てしまいます。また、通院や服薬などもしっかりと主治医からの処方を守っているかという点も重要になります。勝手な判断で日常生活に影響が出てしまう方では仕事を任せられないということにも繋がります。
次に面接は複数回の実施をします。日によっては体調などにより雰囲気がガラリと変わってしまう方もいらっしゃいます。複数回の面接でも受ける印象がほとんど変わりなく、障がいの状態も安定しているかというところもしっかりと確認が必要です。
他には実際に想定している業務を試していただくことです。入力業務であればパソコンによる入力速度やミスタッチなど。検品や校正業務であれば間違い探しのようなチェック作業など。障がいを持っている方の中には今までの経験であまり厳しく指摘や注意を受けて来なかった人もいらっしゃいます。周囲が気を使ってできなかったのだと思いますが、別の場面で問題点として浮かび上がってきます。
企業から面接場面での相談として「障がいのことを聞いても大丈夫でしょうか。」「詳しく聞くのは失礼でしょうか。」といった質問をいただきます。
私は障がい者と面接を始める前に必ず確認することがあります。「答えたくなかったり、気分を害してしまうような質問をするかもしれませんが、あなたの採用を前提とした時に配慮するために必要なコトになりますのでご協力をお願いします。」と。これで嫌な顔をした障がい者にお会いしたことはありません。しっかりとこちらの意図をお伝えすれば大丈夫ではないでしょうか。