【Q】
2024年度の法定雇用率の引き上げに伴い、当社でも法定雇用率の達成に向けて本格的な障がい者雇用の取り組みを始めることになりました。
障がい者の採用活動の面接での対応のことでご相談があります。障がいのことや状態のことなどを聞いていいのか判断に困っています。そもそも障がい者の採用面接ではどのようなことをお聞きすれば良いのか分かっていません。
障がい者の採用面接で聞いておくこと、他に注意することなどを教えてください。
よろしくお願いします。
《広告会社、従業員数約400名、人事担当》
【A】
障がい者の採用プロセスにある「面接」では障がい者本人の職歴や人となりだけではなく障がいや体の状態に関することなど、一般の求人では聞くことがない事柄について確認が必要になってきます。当然のことながら、センシティブな内容にも触れることがありますので注意する必要があるため、採用する側の人事担当者にとってはどこまで聞いていいのか判断がつきにくいと感じてしまいます。
面接では、聞きにくいことを聞くことができ、伝えにくいことを伝えることができる場面だと考えます。面接で「障がい者のことをしっかりと確認する」「雇用に関する条件を明確に伝える」を曖昧にしてしまうと、せっかくの良縁であっても、些細なことから小さな燻へと発展し、やがてそれが大火となってしまっては障がい者雇用という取り組みが組織にとって大きな傷として刻まれることになります。
障がい者の面接で本人からお話を聞く場面では大きくふたつの視点から確認を行います。
ひとつ目は障がい特性や状態、置かれている環境について
まず最初に、面接において障がいのことを始め様々なことを聞かせていただきます。
障がい者本人に気持ちよくお話をしていただくために「面接では障がいのことやお身体の状態など、聞かれたくないと感じることもお聞きするかもしれませんが、採用を考えた時に職場で配慮できるかを判断するために聞かせていただきます」とお伝えしてください。そうすることで自身のことをしっかりと伝えようとする気持ちが生まれます。
障がい者の採用では、「障がいはどのような種別なのか」「障がいによる特徴」「健康状態」「職場に求める配慮事項」といった主に障がいと心身の状態について確認をするとともに、仕事の場面を想定した時に職場に求める配慮してほしいことを確認します。これらは、実際に採用された時に一緒に勤務することになる職場の従業員や上司が事前の準備として認識・理解を図るために必要な情報となります。
また、本人が普段から利用している医療機関や支援機関との関係性など、日常生活で置かれている環境についての確認も面接の場面で行います。
医療機関については定期的な通院・服薬の有無や主治医との関係性が良好かどうか。複数の通院先がある場合は、障がい以外の治療している持病がある可能性も考えられますので、採用後に「聞いていなかった」とならないためのヒアリングになります。次に支援機関とは就労移行支援事業所などの就労系障害福祉サービスを活用していたか。活用していた場合、就職後の定着支援まで受けられるのであれば採用する側としては安心して雇用できる判断材料となります。
《例》
ふたつ目は働く状態について
企業の求人募集にエントリーされる障がい者の中には採用の面から見て「もう少し働く準備を整えてから」と感じる方も少なからずいます。
面接では、自身の障がい特性により普段の生活を送る中で体調を保つために気をつけていることや工夫を取り入れている方というのは健康に対する意識の高い人材だと判断します。例えば、睡眠について、週末でも平日と同じ時間に起床と着床を行うことで生活リズムを崩さないように気をつけ、体調の波を安定させるように心掛けている人材は、就職してからも自分の体調に耳を傾け、万が一体調を崩しかけたとしても早期にアラートを認知し、対処することを目指します。
他にも余暇の過ごし方や没頭できる趣味や活動がある人材は公私のメリハリある生活を送っていると思いますので、仕事も精力的に取り組んでいただけると感じます。
障がいの有無に関係なく体調の波は起こります。そういったときに良い状態に近づけるためのセルフケアについても普段から取り入れている人材であれば、働くための準備が整っていると判断できます。
最後になりますが、面接の場面はお互いが「採用したい」「入社したい」という気持ちが強くなります。そのため、お互いが嫌われたくないので「遠慮しがち」な状態にもなりやすいです。
障がい者の採用では、障がい者本人が自分の障がいについてしっかりと受容できているかも重要になってきます。手帳は取得したものの「障がい者であること」を受け入れていない方も一定数存在します。その場合、本来であれば職場で求めるはずの合理的配慮について「特にありません」として会社側に伝えなかったとすると採用後に職場が混乱することも大いに考えられます。
こういったことを未然に防ぐためにも面接では上記に挙げた例を参考に、遠慮せずに「採用するためにしっかりと聞かせていただきますよ」という気持ちで実施してください。