【Q&A】雇用義務がない企業での障がい者雇用は必要でしょうか

今回は久しぶりに障がい者に関連するご相談にお答えする【Q&A】をご紹介したいと思います。

【Q】
いつもお世話になっております。
当社は障がい者の雇用義務のない規模の会社ですが、以前から障がいのある人材の雇用を考えています。一度、役員に相談してみたのですがあまりいい反応をしませんでした。
しかし、当社のような規模でも障がい者が働ける仕事があると思っているのですが、どこに相談をすればいいのか分かりません。また、従業員が障がい者と一緒に働いてもらえるのかも心配です。何から始めればいいのか教えてください。
よろしくお願いします。
《機械部品メーカー、従業員数32名、代表取締役》

【A】


今現在、法律により従業員数45.5人以上の企業には法定雇用率2.2%に従って障がい者を雇用する義務があります。仮に法定雇用率を下回っていた場合には納付金(罰金)の支払いが命じられます。(現在は従業員数101名以上の企業が支払い対象)それらの納付金は、障がい者雇用に関連する助成金などに活用されます。

2020年時点で障がい者の雇用義務のある企業は約100,000社。雇用義務のない企業(従業員数45.5人未満)は非常に大きな数字になります。障がい者雇用の取り組みでメディアなどに取り上げられたり、雇用実績が高いのは従業員数1,000名以上となる規模の大きな企業です。
昨今は、「社会貢献」「ダイバーシティ経営」といった観点もあり、コストや人員を掛けて取り組むのは大企業というイメージが強くありますが、従業員が1,000名に満たない企業でも積極的な姿勢で障がい者に取り組んでいる企業もたくさんあります。そのような企業は、法定雇用率の達成という目的から雇用をスタートしたところが多いと思いますが、障がい者雇用がその企業の特徴のひとつとして挙げられるほど雇用が成功した企業も増えてきています。

では、今回のご相談に関してですが、ぜひ障がい者の雇用に取り組んでもらいたいというのが私の答えです。これから障がい者雇用に取り組むというご相談をいただく時に、頭に浮かぶお話があります。今では、国内の障がい者雇用では超がつくほど有名な日本理化学工業株式会社の「障がい者雇用を始めたきっかけ」についてのエピソードです。※興味のある方はインターネットで検索してみてください。

障がい者雇用を上手く進めるためには、「社長からのトップダウンが重要だ。」と言われます。確かに、会社のトップが障がい者雇用の必要性を感じ、全社として取り組むことを会社の使命として発信してほしいと感じます。さらに付け加えるなら、従業員の方々の気持ちも確認しながら障がい者雇用に取り組む理由と理解を説くために時間を掛けてほしいと思います。
「障がい者を雇用する=善意」となり得る部分もありますが、従業員の考え方や気持ちを抑えつけて力技で取り組むことに幸せな未来は実現できないと考えます。むしろ、障がい者雇用が進むのを邪魔してしまうことにすらなりかねません。

おそらく障がい者雇用を進めるにあたっては、人事担当者を中心として取り組むことになると思いますので、先ずは人事担当者と自社の障がい者に対する意識や現状についてのヒアリングを行ってください。例えば、従業員のご家族に障がいのある方がいらっしゃったり、障がい者雇用に積極的な顧客があるなど、案外障がい者に関連したことが身近に感じられるかもしれません。それらをきっかけに情報を集め、自社でできそうなことをピックアップしてみてください。

併せて、貴社に障がい者の福祉事業所や特別支援学校の方が相談などで電話・来社されたことはないでしょうか。福祉事業所の支援スタッフや特別支援学校の先生方は、日々地域の企業に対して社会経験のひとつとして実習受け入れなどの相談をして回っています。障がい者の中にはアルバイトなどの社会経験が少ない人が多くいます。就労系の福祉機関では事業所ごとに特徴を持って、一般就労を目指すための職業訓練を行っています。その訓練の一環として、地域にある企業で実際の仕事に触れてみる企業実習を実施しているのですが、一社でも多くの受け入れに協力していただける企業を探しています。
または、地域に「就労移行支援事業所」や「就労継続支援B型事業所」といった福祉事業所が複数あるようでしたら、色々な事業所からのお話を聞いてみても良いと思います。

相談も内容によって使い分けている企業が多いです。

  • 求人:ハローワーク、地域の福祉事業所、人材会社
  • 助成金:ハローワーク、職業センター(高齢・障がい・求職者雇用支援機構)
  • 雇用:地域の福祉事業所、障がい者就業・生活支援センター

※当社のようなコンサルティング会社も増えています。

企業が障がいのある方たちを雇用する理由は様々です。
最初は障がい者に対してどちらかというとマイナスなイメージで接していた従業員も徐々にコミュニケーションが取れるようになり、仕事ができるようになってくると障がい者のことが気になって仕方がなくなるぐらい意識が変わってくるという話を耳にします。先ほどお話しました「日本理化学工業株式会社」の従業員もおそらくそのような気持ちになったのではないでしょうか。

現在、障がい者雇用実績は10年以上右肩上がりとなり、取り組んでいる企業が増えてきました。しかし、その中身を見てみると「障がい者雇用=デメリット」となっていないだろうかと感じる会社も少なくありません。実際に、「障がい者雇用=メリット」を実践している企業をたくさん見てきました。
これから取り組む企業にも「障がい者雇用=メリット」を目指してもらうことで、『会社全体がハッピーになる』を体感してほしいと思います。

ABOUTこの記事をかいた人

上前 忠司 (日本障害者雇用総合研究所代表)

[障害者雇用コンサルタント]
雇用義務のある企業向けに障害者雇用サポートを提供し、障害者の雇用定着に必要な環境整備・人事向け採用コーディネート・助成金相談、また障害者人材を活かした事業に関するアドバイスを実施。障害者雇用メリットの最大化を提案。その他、船井総研とコラボした勉強会・見学会の開催や助成金講座の講師やコラム執筆など、障害者雇用の普及に精力的に取り組んでいる。

▼アドバイス実施先(一部抜粋)
・opzt株式会社・川崎重工業株式会社・株式会社神戸製鋼所・沢井製薬株式会社・株式会社セイデン・日本開発株式会社・日本電産株式会社・株式会社ティーエルエス・パナソニック株式会社・大阪富士工業株式会社・株式会社船井総合研究所・株式会社リビングプラットフォーム