【Q&A】障がい者ということをクローズで働くかオープンで働くか

今回も障がい者雇用に関連するご相談にお答えする【Q&A】をご紹介したいと思います。普段は企業の人事担当者からのご相談が多いのですが、今回は求職活動中の当事者からのご相談です。

【Q】
いつもミルマガジンを拝見しています。
私は大学生の時に発達障がいの診断を受けました。現在、就職活動中なのですが、自分が障がい者だということを「クローズ」か「オープン」のどちらで企業にエントリーすれば良いのか迷っています。将来の自分にとってメリットになる方を選びたいと思っています。
参考になるアドバイスをお願いします。
《発達障がい者、20代、男性》

【A】


過去にも、就職活動中・転職活動中の障がい者の方から今回のようなご相談をたくさんいただいたことがありました。
求人募集をしている企業に自分の障がいのことを「クローズ」でエントリーするのか、「オープン」にしてエントリーするのか。正解がありませんので、どちらかを強く進めることはできませんが、これまでの経験でお話をすると「オープン」で就職活動をした方がメリットが大きいと思います。

理想的な世の中

障がいのある方々は、日常生活を送る上で不便や困りごとを感じていることが多くあり、少しでも安心・安全な暮らしを実現させるためには社会的な支援が必要な場面も多くなってきます。そのような考えから、国は一定の基準を満たした方に対して障がい者手帳を発行しています。
少し掘り下げてみると、日常生活の不便や困りごと、苦手なことというのは、障がい者手帳を取得していない人たちにとっても日々感じていることです。

「日常生活で感じる不便や困りごと例」

  • 左利きの人が駅の自動改札機にカードをかざす場面(ほとんどが右側)
  • 歩行が困難なとき、エレベーターが設置されていない施設を利用する場面
  • 災害や事故による緊急な場面での情報取得の格差     など

理想を言えば、障がいの有無に関わらず、日常生活や仕事の場面で起こる不便や困りごとがあるのであれば取り除くための工夫を講じたり、苦手なことをサポートしてくれる世の中が望ましいと考えます。

現実の世の中

しかしながら、自分を取り巻いている周囲が自分の感じている不便や困りごとに対して、常に「理解」を示し、「支援」を提供してくれるわけではありません。自分に置き換えてみると、近くに困っている人が居ても「何に不便を感じている」「どのようなことで困っている」のかが分からなければ、手を差し伸べることができないのと同じことになります。

「障がい者」という言葉は多くの方が知っています。
法律により雇用義務のある企業では、人事担当者の日頃の努力や取り組みにより、以前に比べて理解が進んできてます。でも、例えば「障がいの種類」「求人時の配慮事項」「ASDとADHDの特徴」など、詳細な内容になると「知らない」「分からない」と感じる方が多くなります。実際のところ、世の中は我々が思っている以上に「障がい者」についての認識は深くないというのが現状です。

どのように在りたいか

究極的な言い方をすると、おそらく周囲の理解や支援を必要としない人はこの世の中に存在しないと思っています。(そんな人に出会ったことがない)人が生きていくためには、誰かに頼り誰かから頼られます。
自分に障がいがあるというのは事実です。その障がいが理由で日常生活の場面で不便や困りごとに遭遇したことがあると思います。それは、仕事の場面でも同様に遭遇します。

障がいが理由で、
「指示された内容が理解できない」
「自分だけが感じることで体調に影響が出る」
「〇時間連続で席に座っていられない」
のような困りごとが発生した時に、障がい者という認識をされていない環境下であなたは自分の力だけでそれらをクリアしていけるでしょうか。一度や二度ではなく何度も同じ場面に遭遇することを想像してみてください。
もちろん、会社にクローズのまま就職し、上手く乗り越えていっている障がい者もいらっしゃいます。でも、その障がい者がクローズで上手く乗り越えているから、あなたもクローズで乗り越えられるというわけではありません。

以前にクローズで働いていた障がい者のお話を聞いたことがあります。精神疾患のあるその方は、見た目では障がい者と分からないためクローズで就職をされました。
その「見た目で分からない」ために、障がいによる苦しさや困りごとが周囲に分かってもらえないことがストレスとなっていました。また、自分が障がい者であることが周囲にバレないかという不安も抱えていたため、結局は長続きせずに退職をしてしまいました。その後の転職先では、障がいのことをオープンにして就職されたため、「まだまだ周囲の理解が不十分」と感じることもあるようですが、職場のサポートを受けながら、気持ちよく働いています。
これは、あくまでもひとつの事例にはなりますが、自分の障がいと「共に歩む」という道を選ぶことで、周囲に理解された環境のもと仕事に就いてみるのが自分に最良の選択肢だと考えます。

最近よく目にするようになった「ヘルプマーク」をご存知でしょうか。見た目には分からない障がいがあることを周囲に認知してもらうために示すマークです。
普段、道を歩いている時にこのマークを目にすると、自分の視界から見えなくなるまで目で追っていることがあります。このようにして周囲から気にしてもらえることって大切なことだと思います。

ABOUTこの記事をかいた人

上前 忠司 (日本障害者雇用総合研究所代表)

[障害者雇用コンサルタント]
雇用義務のある企業向けに障害者雇用サポートを提供し、障害者の雇用定着に必要な環境整備・人事向け採用コーディネート・助成金相談、また障害者人材を活かした事業に関するアドバイスを実施。障害者雇用メリットの最大化を提案。その他、船井総研とコラボした勉強会・見学会の開催や助成金講座の講師やコラム執筆など、障害者雇用の普及に精力的に取り組んでいる。

▼アドバイス実施先(一部抜粋)
・opzt株式会社・川崎重工業株式会社・株式会社神戸製鋼所・沢井製薬株式会社・株式会社セイデン・日本開発株式会社・日本電産株式会社・株式会社ティーエルエス・パナソニック株式会社・大阪富士工業株式会社・株式会社船井総合研究所・株式会社リビングプラットフォーム