書籍「障がい者雇用は経営課題だった!テレワーク雇用導入ではたらく人材が変わる・はたらき方が変わる」

新型コロナウイルス感染予防対策として全国で実施された緊急事態宣言が解除された直後、感染者数も減少し制限された生活も緩和されてきました。日常的に「マスク着用」「ソーシャルディスタンス」を新しい生活スタイルとして実施しながらも、その一方で「もしかしたら、新型コロナウイルスはこのまま治まってくれるのではないだろうか。」という気持ちの緩みがあったと思います。その結果、日々の感染者数は第一波である春頃の数値を上回ることになりました。

また企業では、新型コロナウイルスをきっかけとした感染予防対策の一環としてテレワークの導入が多く見られましたが、緊急事態宣言が解除されてしばらくしてからは、従業員の出社率を増やしたりテレワーク自体を一時的な運用としていたところもあると聞いています。しかし、昨今の感染者数増加を踏まえて、企業は改めて感染予防についての対応策を求められつつあります。
現状、二度目の緊急事態宣言は発令されていませんが、企業も個人もそれぞれの考えや行動が今後の感染拡大の予防につながってきます。企業にとっては、新型コロナウイルスと共存する世の中においても、利益の追求と従業員の健康維持を両立させるために新しい働き方への変化を求められるターニングポイントなのかもしれません。

今回ご紹介したいのは『障がい者雇用は経営課題だった!テレワーク雇用導入ではたらく人材が変わる・はたらき方が変わる』という書籍です。
こちらの書籍は「パーソルチャレンジKnowledge Development Project(パーソルチャレンジ株式会社)」と「株式会社テレワークマネジメント 障がい者雇用事業部」の共著となり、企業での「障がい者雇用」「テレワーク」の導入実績を多数持つ両社が、本格的な取り組みを始める時に直面する課題や導入によって得られる成果について、実際の企業事例を活用しながら丁寧に解説がされています。
今まさに、これらのテーマについて取り組んでいるという企業の経営者や実務担当・人事担当の方々には是非手に取っていただきたいと思います。

【特にお勧めしたい企業】

  • これから本格的な「テレワーク」の導入を検討する企業
  • 「テレワーク」導入の計画立案や進め方を知りたい企業
  • 「テレワーク」による「障がい者雇用」に興味がある企業

また本著では、テレワークによる障がい者雇用に焦点を当てた内容ではありますが、少し視野を広げてみると、障がい者雇用に限定せずにテレワークがこれからの企業経営にとって有効なはたらき方であるという点を提示した一冊であるとも感じました。

この『障がい者雇用は経営課題だった!テレワーク雇用導入ではたらく人材が変わる・はたらき方が変わる』をご紹介するにあたり、企業が実践し自社のメリットしていただくための特徴を2点に絞ってお話したいと思います。

「障がい者雇用」「テレワーク」を経営課題として捉えているか

「社会的責任」「ダイバーシティ・SDGs」への関心や取り組みから、企業による「障がい者雇用」は毎年前年比を上回る数値が達成されています。しかし、法定雇用率を満たしている企業割合は半数以下となり、取り組んでいる企業とそうでない企業との格差が大きくなってきていることが原因のひとつだと考えられます。また、新型コロナウイルス感染予防対策の一環として「テレワーク」というはたらき方が注目され、未整備のまま導入を始めた企業も少なくなく、色々な課題が顕在化されたため、今後も継続して「テレワーク」を実施するべきか悩んでいる担当者もいらっしゃると思います。

この「障がい者雇用」と「テレワーク」という取り組みについて、経営戦略として捉えている企業はどの程度あるのでしょうか。私の肌感覚ではありますが、それぞれの本質を理解して取り組みを実施している企業というのはかなり少数であり、大部分が雇用義務であったり必要に迫られた状況から取り組んでいるという企業が多いと感じています。

本著のはじめにのところで「テレワークを活用して障がい者雇用を進めるためには、経営者が、障がい者雇用に対し経営戦略として「経営判断」を下すことが求められるのです。」とあります。
企業というのは、組織の大きさに関わらずトップである経営者の姿勢や判断がベースとなってその会社の戦略が立てられます。おそらく、ほとんどの会社では「障がい者雇用」も「テレワーク」の取り組みも当然経営者の耳には入っていますが、「経営戦略」という捉え方にはいたらず、(少し乱暴な表現にはなりますが)例えるなら「複合機の買い替え」や「人材会社をA社からB社に変更」といった実務担当者層で完結される程度の取り組みとなっているように感じられます。

本著では、経営層が取り組みついての単なる把握だけではなく、「障がい者雇用」「テレワーク」に関するビジョンや方針を明確化させ、従業員への共有をすることが重要であると解説しています。
更に言うなら、「障がい者雇用」や「テレワーク」を取り組むにあたり、それらを経営課題とすることを経営者自身が判断し、社内の下地作りと理解浸透を経営者も一緒になって始めることで成果が生まれるということです。これまでの企業経営の観点からすると「障がい者雇用」や「テレワーク」は優先順位として後回しにされやすく、組織全体が理解・取り組むとはなりにくいテーマでした。

しかし時代は進み、企業の社会責任のひとつである「障がい者雇用」と新型コロナウイルスから従業員の健康と利益を守る「テレワーク」は、企業の「成長」「価値」「生存能力」を見極める判断材料になり得ると考えます。

実現のカギは「テレワークへの理解」と「障がい者雇用目的の明確化」

最近、耳にする機会が多くなった「テレワーク」について、私たちはどの程度理解ができているのでしょうか。

「テレワーク」とは、「在宅勤務」であると理解していた方も少なくないと思いますが、

  • 自宅ではたらく「在宅勤務」
  • 移動中や移動先ではたらく「モバイル勤務」
  • 会社が契約したサテライトオフィス等ではたらく「サテライトオフィス勤務」

のすべてが「テレワーク」に該当します。
これまで当たり前だった「はたらき方」というものが、新型コロナウイルスにより違った選択肢もあり得るということに気付くきっかけとなりました。しかしながら、「テレワーク」に対するイメージや思い込みは現実とは掛け離れてしまい、結果として導入を遅らせる原因のひとつとなっています。
本著では、導入を邪魔する我々の思い込みを事例と共に取り上げ、分かりやすく説明しています。

《本文より》
思い込み① 経営者が考える「当たり前のはたらき方」はもう古い?
思い込み② 「中小企業にテレワークは無理」は本当か
思い込み③ 「テレワークを導入しようにも仕事がない」とは限らない
思い込み④ 「ダイバーシティ&インクルージョン」を履き違えていないか
思い込み⑤ 「テレワークで雇用する障がい者=身体障がい者」という誤った認識

例えば、「思い込み⑤ 「「テレワークで雇用する障がい者=身体障がい者」という誤った認識」ですが、確かに車イス利用の下肢障がい者や重度の身体障がい者の方たちにとって通勤は大変な負担となるため、「テレワーク」による雇用が最適と考えられることがあります。
しかし、「テレワーク」による勤務は身体障がい者に限らず、「通勤時に感じる負担」「職場での感覚過敏」などから解放されたい他の障がい特性の方たちにもマッチングしやすいはたらき方であり、「テレワーク」で勤務する最も多い障がい特性は「精神障がい者」だというのが事実です。

「障がい者雇用」を法定雇用率の達成以外の目的で取り組んでいる企業は少ないと思います。しかし、「テレワーク」と掛け合わせることで企業が抱える経営課題(「労働力不足の解消」「生産性の向上」「コスト削減」など)の解決策のひとつとして取り組むことができます。
例えば、現在は慢性的な人手不足の状況下で壁にぶつかっている企業も多い中、早い段階からその状況を見極めて策を打っている会社もあります。それが「障がい者人材」であったり「働き方改革」であったりします。これまでと同様の求人内容で求める人材からのエントリーがない困っているのであれば、障がい者人材にターゲットを代えてみるのもひとつです。
仮に募集内容の変更や業務範囲の見直しをすることで、必要だった人材を採用することができるようになった企業もあります。更に、「テレワーク」の導入により採用地域を拡大させたためにたくさんの候補者から最適な人材を雇用することもできます。
もちろん、それぞれの企業によって抱える課題や目的は様々ですから、本著では大小の企業規模、業種、雇用目的が違う企業事例を挙げていますので、自社と近い事例と照らし合わせながら参考にすることができます。

私は新型コロナウイルスが拡大し始めた当初、この先企業の障がい者雇用はどうなってしまうのだろうかと不安な気持ちを抱えていました。
夏を迎えた現在、想定したように企業の採用活動は鈍化している部分もありますが、決して障がい者雇用自体を止めてしまうような動きは感じられないという感じです。もう少し正確に表現するなら、「アフターコロナとなった世の中で、新たな障がい者雇用の形を考え進めていきたい。」という意識の企業や担当者が思いのほかいらっしゃるということです。

「テレワーク」というのは「障がい者雇用」を実現させるための選択肢のひとつですが、経営者を中心として計画を立て、組織内に周知・理解させ、実行させることで大きな利益を享受することができます。
是非、皆さんの組織で本腰を入れて取り組むのであれば、真っ先にテキストとして活用してほしいと思える書籍です。


パーソルチャレンジ株式会社
所 在:東京都港区芝5-33-1 森永プラザビル本館18F・19F
U R L:https://challenge.persol-group.co.jp/

株式会社テレワークマネジメント
所 在:東京都千代田区二番町7-15 ステラ二番町102号室【東京オフィス】
U R L:https://www.telework-management.co.jp/

ABOUTこの記事をかいた人

上前 忠司 (日本障害者雇用総合研究所代表)

[障害者雇用コンサルタント]
雇用義務のある企業向けに障害者雇用サポートを提供し、障害者の雇用定着に必要な環境整備・人事向け採用コーディネート・助成金相談、また障害者人材を活かした事業に関するアドバイスを実施。障害者雇用メリットの最大化を提案。その他、船井総研とコラボした勉強会・見学会の開催や助成金講座の講師やコラム執筆など、障害者雇用の普及に精力的に取り組んでいる。

▼アドバイス実施先(一部抜粋)
・opzt株式会社・川崎重工業株式会社・株式会社神戸製鋼所・沢井製薬株式会社・株式会社セイデン・日本開発株式会社・日本電産株式会社・株式会社ティーエルエス・パナソニック株式会社・大阪富士工業株式会社・株式会社船井総合研究所・株式会社リビングプラットフォーム