ご存知ですか?優良な障がい者雇用企業を認定する「もにす認定制度」

令和2年7月31日に「労働政策審議会障害者雇用分科会」が厚生労働省にて開催されました。公表された資料には、「障がい者法定雇用率の引き上げ」に関する記載があり、現時点では令和3年1月1日より予定通り0.1%の引き上げが実施されるようです。
当初、新型コロナウイルスによる日本経済への多大な被害により、法定雇用率の引き上げにも影響があるのではないかと考えていましたが、一先ずは2.2%から2.3%に変更となります。

しかしながら、新型コロナウイルスによる感染拡大の収束(終息)時期が見えない現状が雇用意欲を邪魔してしまい、従業員の解雇や新規求人募集の見送り、事業の縮小などが今後も続く可能性が高く、これから先の障がい者新規採用の動きも鈍化することが考えられます。

そのような状況にある一方、業種・業態によっては継続して障がい者の求人や雇用維持に取り組む企業もあり、新たな採用に向けたお話も耳に入ってきます。これまでの障がい者雇用は、法律によって定められた雇用義務のある企業を中心に法定雇用率の達成をひとつの目標として進んできました。今後は、次のステージを見据えた障がい者雇用(例:付随業務以外、キャリア形成、人生設計 など)を実現させる取り組みが、障がい者の雇用定着や企業の成長につながってくると考えます。
所謂、障がい者の雇用で「量」から「質」へ転換していくことが考えられます。

令和2年4月に改正障がい者雇用促進法が施行され、6月のミルマガジンでも取り上げました。

2020年4月施行の改正障害者雇用促進法による企業メリットについて

2020.06.30

その際に今回ご紹介する『もにす認定制度』についても簡単にお話をしたのですが、障がい者の雇用を助成金の活用による企業の負担軽減をねらった制度とは違い、組織の組み立てや運営、従業員の意識・行動につながってくる内容だと考えるため、これから障がい者雇用の取り組みを検討している企業の経営者や人事担当者の皆さんにとって非常に参考になる制度となっていますので、ここで改めてご説明したいと思っています。

『もにす認定制度』について

この『もにす認定制度』については、「従業員300人以下」の中小企業が対象となっているのですが、私は企業規模に関係なく現在自社で取り組んでいる障がい者雇用との照合や新たに取り組みを始める企業の指針となる制度内容になっていると思います。また、障がい者雇用義務のない企業(従業員数45.5人未満)でも評価基準をクリアすれば認定を受けることができます


現在の障がい者雇用の背景として、企業における障がい者の雇用実績はここ10年以上前年を上回る数値となっていますが、詳細に見てみると中小企業の障がい者雇用は大企業に比べて実雇用率が低く、また障がい者の雇用義務が課されているにもかかわらず全く雇用していない企業(いわゆる「障がい者雇用ゼロ企業」)が多い等、「障がい者雇用の取組が停滞している状況」となっています。

現状、中小企業で障がい者雇用に対する意識が大企業よりも小さいと感じますし、実質的な罰則といえば不足数に応じて支払う罰金(納付金制度)がありますが、不足数が年間を通じてひとりだった場合は納める金額が60万円となるため、企業によっては納付を選択するところも少なくありません。採用や雇用による助成金もあるのですが、そういった企業にとってはあまりメリットとして感じていないのかもしれません。

そこで、中小企業を対象に障がい者雇用状況の改善を図るため、『もにす認定制度』のより障がい者雇用が促進されるような「社会的な関心を喚起」「経営者の理解促進」とともに、先進的な取り組みを実践している企業を『優良企業』として認定することでメリットを享受できる制度を設けたものになります。

【4つのメリット】

①障がい者雇用優良中小事業主認定マーク
「自社製品」「サービス」「HP」「広告」等に認定マーク表示することができる
②日本政策金融公庫による低利融資
日本政策金融公庫の「働き方改革推進支援資金」における低利融資の対象となる
③厚生労働・都道府県労働局・ハローワークによる周知広報等
障がい者雇用優良中小事業主の情報は、厚生労働省及び都道府県労働局のHPに掲載される他、ハローワークの求人票に障がい者雇用優良中小事業主認定マークが表示される
④公共調達等における加点評価
地方公共団体の公共調達及び国及び地方公共団体の補助事業において加点評価を受けることができる場合あり

そして、この『もにす認定制度』の大きな特徴が評価基準にあります。

『もにす認定制度』の評価基準

まず評価基準は「Ⅰ 取組(アウトプット)」「Ⅱ 成果(アウトカム)」「Ⅲ 情報開示(ディスクロージャー)」の3つの大項目に分かれており、合計 20点以上を獲得することが必要で、各大項目の合格最低点は、「Ⅰ 取組(アウトプット)」は5点、「Ⅱ 成果(アウトカム)」は6点、「Ⅲ 情報開示(ディスクロージャー)」は2点となっています。
3つの大項目がそれぞれ中項目並びに小項目へと詳細な形で落とし込みをしている点が、障がい者雇用の取り組みを丁寧に評価する内容になっていることが分かります。

例えば、「Ⅰ 取組(アウトプット)」の体制づくりの項目に人材面に関する評価基準というものがあります。企業文化として根付く障がい者雇用の実現には人事担当者はもちろんのこと、職場で一緒になる機会の多い従業員や管理者も重要な役割となってきます。この項目では「障がい者雇用の推進に係る組織体制を実質化すべく、社員等が専門的・基礎的な知識・技能等を習得することが重要です。
こうした観点から、以下の評価要素への該当性を判断します。」と説明されており、従業員が障がい特性に関する専門的な知識や技能を身に着けることで、一緒に働く障がい者の強みを活かし成果に結びつけられるような職場づくりを実践している企業が評価されるようになっています。知識や技能の習得には、外部の研修やセミナーに積極的な参加を実施しているかという点が評価となります。
他には、テレワークや時差出勤などの働き方に関する項目や従業員の満足度・ワークエンゲージメントについての項目も設けられています。

『もにす認定制度』の認定マークを受けられる会社というのは、常態的に障がい者雇用に取り組んでいる組織ということを証明する内容であり、それだけ精度の高い基準をクリアするわけですから、大いに評価されるべき企業だと考えます。
そして、繰り返しになりますが、従業員数が301名以上お企業はこの認定を受けることはできませんが、「今取り組んでいる障がい者雇用」や「これから取り組む障がい者雇用」を単なる数値目標とするだけではなく、障がい者を含めた企業全体が豊かな未来を形作るための指針となる基準になっていますので、是非とも参考にしていただきたいと思います。

ABOUTこの記事をかいた人

上前 忠司 (日本障害者雇用総合研究所代表)

[障害者雇用コンサルタント]
雇用義務のある企業向けに障害者雇用サポートを提供し、障害者の雇用定着に必要な環境整備・人事向け採用コーディネート・助成金相談、また障害者人材を活かした事業に関するアドバイスを実施。障害者雇用メリットの最大化を提案。その他、船井総研とコラボした勉強会・見学会の開催や助成金講座の講師やコラム執筆など、障害者雇用の普及に精力的に取り組んでいる。

▼アドバイス実施先(一部抜粋)
・opzt株式会社・川崎重工業株式会社・株式会社神戸製鋼所・沢井製薬株式会社・株式会社セイデン・日本開発株式会社・日本電産株式会社・株式会社ティーエルエス・パナソニック株式会社・大阪富士工業株式会社・株式会社船井総合研究所・株式会社リビングプラットフォーム