希望にあふれ心華やぐ季節、新生活を迎えたり、職場で新たなプロジェクトが始動したりと、春という季節はやはり何かワクワクしますね。
そんな新たなスタートを切ったあなたにも、いつもと変わらない日々を過ごしているあなたにも、働くすべてのひとに、この春からたったひとつだけ!心に留めてもらいたいことがあります。
それは、「対話」をクセにすること
たいていの会社の会議は、報告に議論がくっついてくる程度で、誰かひとり強い人の主張が通るか、もしくは大きな声に押されてしまう。「なんか違うな…」とか「よくわからなかったなぁ」というようなちょっとした違和感は、小さな声としてかき消されてしまう。
かくいう私も、つい効率的に進める手段として、周りの意見や、見えているはずの「?な顔」にフタをして、ぐいぐいと前に進めてしまうクセがあった。
高校で米留学し、大学でディベートクラスが好きだったのは、そもそも周りと同調することが苦手だった私にとって、些細なことでも自己主張する文化は馴染みやすかったのと、相手の論旨の弱点を見極め、自分の意見を通す手法が生き抜いていく術のようにも感じられたからだ。
まだモノが売れる時代に商品開発をしていた私は、自分の主張を貫き通し強いリーダーシップを発揮させることで、スピードを加速させ成功をおさめられているのだ、と思い込んでいた。実際にそれなりに会社には貢献できたという自負もある。
なぜ今さら「対話」が大事なのか?
それは、未来が見えないから、である。
対話には見えない未来を見抜く力がある、
そう、私は思っている。
会社でモノが思うように売れず苦しくなってきたとき、自然と始めたのはスタッフとの対話だった。日々のことや、会社に対する意見、その他思っていることなんでも。相手の話すことをていねいに聴き、受容し、さらに理解を深めるための質問を繰り返した。そうして、新たな疑問を突き詰めていくことで、不思議と新しいアイディアが生まれ、新プロジェクトが始動するなんてことにもなった。
対話に慣れてくれば、そこからはなんとなく良いサイクルがうまれてくる。普段意見しないスタッフからのアイディアが聞かれるようになり、周りにも対話が伝播していった。予定調和な会議は減り、少しずつ「社長の会社」ではなく「自分ごと化」している社員のやる気を肌で感じるようになっていった。一人だと素早くたどりつく道のりも、みんなと進むことでより遠くに、思いもつかなかったところに向かうことができると実感した。
心を平らにして、
相手の真実を知ろうとしてみる
この行為が「対話」であると私は定義している。
でもなぜなのか精神や発達の障がいのある人とは、多くの人が構えてしまいがちだ。
精神病について少しでも知識がある人は、とかくその病名だけでその人を判断しがちだし、知識がない人は、とりあえず自分の常識のフレームにはめ込んで解釈をしようとしてしまいがちだ。つまり“その人”を知る以前に、日頃の憶測や常識でその人をベールに覆ってしまうのである。
障がい者の就労移行支援の仕事で出会った企業の方たちの多くも、この憶測と常識の間を行ったり来たりしてしまう傾向が少なからずあり、障がいのある人を“個人”として受け入れてもらうことの難しさを痛感した。
対話をするときはできるだけ心を平らにして耳を傾けてみて欲しい。その人の意見を怪訝に思う前に、まずは会社の常識や自分の常識を疑ってみてもいいと思う。大切なのは、その差異に気づいたら、その差をまるごと全部面白がってみること。その差をひも解くプロセスは、相手深く理解することであり、新たな常識を生み出すことにもつながっていく。
それは多様性を活かしていくことにつながっていく
対話の大切さは異なる意見のどちらかを選ぶのではなく、その中空をいく、もしくはそれ以上のステージを創造することなのである。いろいろなモノゴトに賛成・反対の意見があり、今もそれをぶつけあうことで解決しようという風潮があるが、“正しい答え”などない世の中でぶつかりあったって「ちっともたのしくない!」というのが正直な答えである。
その時間があるのなら、どんな未来を創造したいのかゴールを語りあい、それを理解するための対話をすることから始めること。なぜならモノゴトの賛成・反対は、大きなゴールから語りあうことで、きっと消えていってしまう差なのである。
働く今日も、明日も、たのしく過ごしたいあなたは、ぜひ職場で「対話」をクセにしてみませんか。
あまりピンと来ていない人も、まずは今、この会話が、「対話」をしているのか「論破」をしているのか、それを認識するところからはじめてみるのもいいかもしれません。
※次回は、対話のコツについてお話する予定です。