取材レポート:『株式会社サイレントボイス』

以前にミルマガジンのコラムでも書きましたが、私の両親は聴覚障がい者です。
聴覚に障がいを持つ親の聴者である子供のことを「コーダ(Coda;Children of Deaf Adults)」と呼ぶことをご存知でしょうか。そうなんです。私はこの世に生まれた時から「コーダ」になっていました。

自分自身では意識して感じることなどありませんでしたが、「コーダ」は会話による音声言語と視覚による手話言語の両方の文化に触れる一種のバイリンガルのような存在で、他の障がい特性のある親の子供とは違う成長や経験をしているということです。

自分のことを特別だというわけではありません。しかし、例えば手話のできる聴覚に障がいのある人たちを見ていると、彼らの『コミュニケーション文化』というのは独自の発達があるなぁと感じることは多いです。そのため、子供である「コーダ」たちも聴者ではありますが、他の聴者と比較すると独自の『コミュニケーション文化』を持ちながら成長したのではないかと考えます。

(体験談)聴覚障がい者の両親を持った家族が感じたこと

2017.08.25

株式会社サイレントボイス

今回、ご紹介する企業は大阪に拠点を置く『株式会社サイレントボイス』さんです。
こちらの代表取締役である尾中さんは私と同じ「コーダ」です。尾中さんはご自身の体験を通してコミュニケーションの大切さを感じ、企業に向けた「無言語コミュニケーション研修プログラム DENSHIN」の提供をはじめ、聴覚障がい児・難聴児のための総合学習塾「デフアカデミー」を運営する『NPO法人サイレントボイス』の代表も兼任。

関西を代表する若き経営者に心が躍るようなお話を聞かせていただきました。

【株式会社サイレントボイス】
http://silentvoice.co.jp/

起業をしたきっかけ

大学を卒業して就職したのが広告代理店だったのですが、あるとき「自分は社会の物差しばかりを気にして生きている」と感じながら生活していると考えるようになっていました。ある日、お店の列に並んでいた聴覚障がい者のひとに手話で通訳をした際にとても感謝されたことがきっかけで、本当に自分がやりたいことが見つかったような感覚がありました。

聞こえない人というのは、決して弱者ではないと考えます。
「耳が聞こえない人は〇〇ができない」ということって本当にそうなのか?違う方法があればできるのではないか?現代では、そういった視点を持った人から聴覚障がい者の中に優秀で能力の高い人材がたくさん出てきてます。自分たちの力で「できないという思い込み」を変えていきたいという思いからです。

サイレントボイスの役割

我々は大きく3つの事業モデルを展開しています。それは、

  • 無言語コミュニケーション研修プログラム「DENSHIN」

聴覚障がい者の弱みとして認識されている「聞こえない」を強みとして捉え、声や言葉以外の部分から意味を受け取る能力を高めることで会社の組織力向上に役立つコミュニケーションを身に着けてもらうための研修プログラム。

  • インクルーシブマネジメントコンサルティング

聴覚障がい者従業員のいる職場はもちろん、一人ひとりの違いに着目し、健常者ばかりの企業も対象とした組織づくりのコンサルティング事業で、職場環境作り・雇用制度の見直し・従業員へのメンタリングなどをサービスとして提供。

  • 放課後等デイサービス「デフアカデミー」

聴覚障がい・難聴児(聴覚障がい者・難聴者も)は、インプットされる情報量が限定されたり一般社会では孤立することも多くなりがち。「デフアカデミー」では聞こえない・聞こえにくい小学生・中学生の子供たちが集まり、自らの考える力や自分らしさを発見できる場所

また、私たちの使命は聴覚に障がいのある人たちの活躍できるところを増やすことです。
世の中にはたくさんのアンコンシャスバイアスがあり、皆さんも無意識に決めつけた考え方で物事を見てしまっています。例えば、企業は「聞こえる人」を想定した組織や環境の中でできています。それらを、変えることで企業が得られるメリットがあることを私たちが提示してかなければならないと考えています。

教育面でも、様々な障がいのある子どもたちが平等な学習機会が得られる社会づくりを進めていかなければなりません。
現在、昔と比較してろう学校(聴覚に障がいのある子どもたちが通う支援学校)に通う生徒の数が減少しています。これは、そもそもの子供の減少に加えて、医療や情報保障機器などのハードの影響が大きいと言われています。それにより、聴覚に障がいのある児童たちが聴こえる児童と机を並べて学ぶというシーンも増えました。障害児との垣根がなくなりつつある一方で、不完全なコミュニケーションが多くなるという問題は増加しています。
決して、障がい者を守らないといけないと言っているわけではありません。ただ、聴覚に障がいのある人たちが生活していくために必要な知識や自分発見をする場所を作らないといけないと思っています。

これからの尾中さん

世界には約4億7千万人の聴覚障がい者が居ると言われています。自分は、適者生存の生物界の中で、それが良いとか悪いとかではなくて「耳が聞こえない人」は何故、個体として淘汰されなかったのだろうと考えたことがあります。
すると、人間の持つ「思いやり」や「違いからイノベーションが生まれる」といった、いろんな事例を知ることができました。 きっと、人間社会に様々な違いは必要なんだという自分の想いのもとに、決して「弱者」一辺倒ではない、今の時代の「耳が聞こえない人」の在り方、それは自分自身の言葉で言うと「聞こえない人の活躍の場を増やす」ことです。そのために、自分自身を研鑽する教育の場の機会均等を目指した選択肢づくり、たとえ違いがあったとしても頑張りが評価してもらえる職場づくりを通じて、いち法人の代表者や市民の立場で働きかけていきたいと考えています。

尾中さんとは何度もお時間を共有する機会があるのですが、お互い「コーダ」という以外にも共通項があるためか、いつも時間が経つのを忘れるぐらい話題に事欠きません。これからの活躍が楽しみです。

『サイレントボイス』では、社内研修プログラムやデフアカデミーに関する問い合わせを随時受け付けています。詳しくは下記まで。

『株式会社サイレントボイス』『NPO法人サイレントボイス』
住所:大阪市中央区安堂寺町1-3-12 大阪谷町ビル4F
URL:http://silentvoice.co.jp/
FB:https://www.facebook.com/silentvoice.info/
映像:http://silentvoice.co.jp/989/

ABOUTこの記事をかいた人

上前 忠司 (日本障害者雇用総合研究所代表)

[障害者雇用コンサルタント]
雇用義務のある企業向けに障害者雇用サポートを提供し、障害者の雇用定着に必要な環境整備・人事向け採用コーディネート・助成金相談、また障害者人材を活かした事業に関するアドバイスを実施。障害者雇用メリットの最大化を提案。その他、船井総研とコラボした勉強会・見学会の開催や助成金講座の講師やコラム執筆など、障害者雇用の普及に精力的に取り組んでいる。

▼アドバイス実施先(一部抜粋)
・opzt株式会社・川崎重工業株式会社・株式会社神戸製鋼所・沢井製薬株式会社・株式会社セイデン・日本開発株式会社・日本電産株式会社・株式会社ティーエルエス・パナソニック株式会社・大阪富士工業株式会社・株式会社船井総合研究所・株式会社リビングプラットフォーム