【Q&A】「初めて障がい者の求人活動をする企業が必要なこと」

今回は障がい者求人に関するご相談にお答えしたいと思います。新型コロナウイルスの感染拡大により、これまでの生活スタイルやはたらき方の変化が求められる時代となりました。これからの障がい者雇用も今までのはたらき方・雇用からの変化を視野に入れた取り組みへと変わることが求められると考えます。

【Q】
いつもミルマガジンを参考にしています。
私はこの4月から人事部に配属され、障がい者の採用担当になりました。
当社はこれまで障がい者の採用をしたことがなかったため、今回初めて求人をすることになりました。これから求人活動を始めるにあたり、何から取り掛かれば良いのか分かりません。どのようなことに注意すれば良いのか、活用できる助成金など、ポイントを教えてください。よろしくお願いします。
《広告・デザイン会社、従業員数約300名、人事担当者》

【A】

ご相談ありがとうございます。
こちらの企業は、これまで障がい者の採用をしてこなかったのですが、社内には障がい者手帳を取得されている方が数名おられ、現在法定雇用率に2ポイント不足の状態にあります。障がい者の方々は、入社後に病気や事故により手帳を取得され、会社には障がい者であることを申告してもらっています。というお話でした。もう少し補足しますと、この企業ではたらく障がい者の方たちはすべて50代以上で数年先には定年退職を迎えられるため、継続した採用活動が求められる状況にあります。

現在のように、障がい者雇用が企業にとって大きな関心事のひとつとして取り上げられる以前であれば、「先ずはハローワークに相談に行く」という選択肢しかなかった企業がほとんどだったと思います。
もちろん、障がい者の求人活動を始めるにあたりハローワークへの相談は必須ですが、企業に大きな成果・メリットとなる取り組みは他にもあります。
今回は簡略化させたご説明になりますが、障がい者求人に必要なポイントをお話しようと思います。

準備から始めよう!


よく仕事の場面では「準備が8割」といわれますが、障がい者の求人についても同じです。
障がい者雇用に取り組む理由は、「企業としての責任・義務」「納付金(いわゆる罰金)の対象だから」「企業成長(ダイバーシティ経営)」など、企業によって様々です。
障がい者雇用が難しいのは、「採用活動」よりも「職場定着」だと感じます。
とはいえ「職場に配属された障がいのある人たちが、安心安全に仕事に就くためにはどうすれば良いのか」ということを採用する前から想定して準備するというのは、非常にハードルが高くなってしまいます。
先ずは下記の①~⑥について準備を進めてください。

①情報収集
・障がい者雇用の「いま」に関する情報を集める
法律助成金、障がい者関連サイト(厚労省)、採用企業(特例子会社)など
②雇用条件・処遇案
・先ずは簡易な内容で作成(給与・賞与、正社員or契約社員、昇給、昇進など)
・後程作成する求人条件に反映させる
③配属先
・配属先と管理者からの同意
・後日、従業員向けの研修などで理解を進める
④仕事内容
・求人活動時に必要
・上記①②をもとに
⑤経営層と取り組みについての共有
・採用活動に関する理解と承認があれば進めやすい
・「なぜ雇用が必要なのか」を知ってもらう
⑥従業員理解
・一緒にはたらく従業員の理解と協力が不可欠
・無理やり進めるよりも、理解してもらうことを意識

この中でも⑤⑥は「理解」がキーワードになります。理解がない組織では、障がい者雇用は進まず、周囲から聞こえてくる意見は反対や邪魔をするものが多くなってしまうため、取り組みが前進しない状態になってしまいます。
採用を焦ってしまう気持ちを抑えて、じっくりと時間を掛けて進めてください。これらの準備を進めるうちに情報が蓄積されていきます

なぜハローワーク?

ハローワークは障がい者の求人に関するあらゆる情報が集約された、まさに「中央情報センター」的な役割です。例えば、求職活動中の障がい者情報はもちろん、障がい者採用時に活用できる助成金や制度、人事や職場の障がい者担当者を対象にしたセミナー・講習などの情報を得ることができます。
我々から見て、企業の人事担当者が持つ障がい者に関連した情報は限定されたものであり、見方によれば「情報弱者」だと感じることさえあります。前項でも書きましたが、蓄積された情報が貴社の障がい者雇用の実現に重要なツールとなってきます。

ご存知の通り、厚生労働省の下部組織である各都道府県設置の労働局は企業の障がい者雇用を管理・管轄している立場ですが、ひとりでも多くの障がい者が一般企業ではたらくこともミッションのひとつとしています。義務感・責任感があり、真剣に障がい者雇用に取り組もうとしている人事担当者の心強い味方ですから、企業のメリットになる情報リソースとして活用してください。

近くの頼れる専門家


全国には、国が認可した福祉事業所がたくさん設置されており、その中には障がい者の「自立・一般就労」を目的とした福祉サービスがあります。それらは『障がい者就労支援福祉サービス』といわれ、具体的には『就労移行支援事業』『就労継続支援A型事業』『就労継続支援B型事業』の3つのタイプに分かれています。いずれの福祉サービスも障がい者に関する専門的な知識をもとに個々の障がい者の特徴に合わせた支援を実施しています。

特に『就労移行支援事業』は、企業での雇用を目的とした障がい者の方たちへ、就職した際に必要な技能やビジネスマナーの習得、自立生活に必要な知識を身に着けるための訓練を実施しており、この福祉サービスを経て企業に採用される障がい者が年々増加しています。例えば、「精神障がい者に特化した支援」「プログラミングなどのエンジニア育成」「在宅による就職」など、様々な特色を持つ事業所が増えてきましたので、企業側としては自社の状況や希望にマッチした障がい者を紹介してくれる選択肢が増えたことも採用数増加の理由のひとつとして挙げられると感じています。

こういった障がい者就労支援福祉サービスは、ハローワークが提供してくれる範囲以上の求人支援をしていただけます。特に活用していただきたいのは「実習」といわれるインターン制度になります。採用前に障がい者本人と業務や職場との適性を確認することができるため、ミスマッチの発生率を軽減させるメリットがあります。
採用後のアフターフォローとしての定着支援も実施してもらえますから、ハローワークと同様に求人活動の際には近隣の福祉サービスを頼ってみてはどうでしょうか。

ABOUTこの記事をかいた人

上前 忠司 (日本障害者雇用総合研究所代表)

[障害者雇用コンサルタント]
雇用義務のある企業向けに障害者雇用サポートを提供し、障害者の雇用定着に必要な環境整備・人事向け採用コーディネート・助成金相談、また障害者人材を活かした事業に関するアドバイスを実施。障害者雇用メリットの最大化を提案。その他、船井総研とコラボした勉強会・見学会の開催や助成金講座の講師やコラム執筆など、障害者雇用の普及に精力的に取り組んでいる。

▼アドバイス実施先(一部抜粋)
・opzt株式会社・川崎重工業株式会社・株式会社神戸製鋼所・沢井製薬株式会社・株式会社セイデン・日本開発株式会社・日本電産株式会社・株式会社ティーエルエス・パナソニック株式会社・大阪富士工業株式会社・株式会社船井総合研究所・株式会社リビングプラットフォーム