書籍「会社を変える障害者雇用」

今、世の中は新型コロナにより、当たり前だった日常生活が多くの制限を受ける状況にあります。今ある事実と状況を理解して、今できることに目を向けるというのが大切だと気付かされます。
これからアフターコロナとなったときには、色々な場面で元の状態ではなく、新たなルールや仕組みが生まれることになると感じていますので、今のうちに調べておくことや準備しておくことに時間を使いたいと思います。

今回ミルマガジンでは、「今だから準備しておいてほしい」という観点から、人事担当者に参考にしていただきたい書籍「会社を変える障害者雇用」をご紹介したいと思います。
こちらの書籍は、以前にミルマガジンでご紹介しました「障がい者の就活ガイド」の筆者である紺野大輝氏の2作目にあたります。前著では、就職を目指す障がい者の視点から執筆されていましたが、本著では企業の人事担当者の視点から見た「取り組むべき障害者雇用」が書かれています。

おすすめ書籍「障がい者の就活ガイド」

2017.07.18

紺野氏の著書「会社を変える障害者雇用」を読み終えた後の率直な感想は、「我々、企業の障害者雇用を支援する立場の考えを代弁していただいてる素晴らしい書籍」だということです。
これには大きな理由があり、著者である紺野氏は自身も障がい者でありながら企業の人事担当者として活躍しているという両方の立場を知っているからです。そのような立場で書かれた本著は、まさに「障がい者」にも、そして「企業」にとっても有益となる障害者雇用の在り方を語っています。

「会社を変える障害者雇用」について、私自身が感じたこれからの障害者雇用を成功させるポイントを3つの視点からご紹介したいと思います。

①経営の視点から見る障害者雇用

社会に対する視野を少し広げてみると「多様性」「社会課題」といったワードがこれからの企業経営に密接な関わりを持つことになるとご存知の方も多いと思います。これまでの「売上・利益」から見た企業の評価軸が変わりつつあります。
従来からの「売上・利益」至上主義な経営方針だけで生き抜いていく時代は過ぎ、それらにプラスして「多様性を理解・活用する組織」「社会の抱える課題を解決する事業」を目指す企業が支持されるようになります。

時代錯誤な組織から見た「障害者雇用」は法律を守るための義務感や数合わせによる取り組みでしかないのかもしれません。その場合、障がい者の視点に立った雇用の実現からは掛け離れてしまうため、時間やコストを浪費するだけになることも少なくありません。

本著では、障害者雇用を経営のひとつとして位置づけすることで、会社にとって利益を生む雇用を実現させることが可能だと語っています。これは、紺野氏が今の組織で実践してきたことによる裏付けがあるからでしょう。本文では、他社の経営者が障がい者と出会い、雇用から生まれた実績についてもご紹介されています。

②組織が変わる(進化する)障害者雇用

どの様な場面でも人は変化に対して抵抗感を感じます。これまでの状態に居心地の良さを感じていればいるほど、必要に迫られていても変わることに対して抗おうとしてしまいます。
障害者雇用が定着していない組織への雇用を導入する場面でも同様の事が起こり得ます。未知なるものに対して防衛本能が働くのは生物全般に見られる自然な行動です。障がい者への理解が進んでいない組織では、たとえ経営トップからの号令であっても簡単に受け入れられることは少ないといえます。
障害者雇用が自分たちにとってメリットになるものだという理解が進めば、取り組みは前進させることが可能です。

今回の新型コロナにより、日常は大きく変わろうとしています。これまでの働くスタイルにも変化を求められることが多くなるでしょう。障がい者が働きやすい職場作りや勤務形態が、障がいのない従業員にもメリットとなる変化を目指してみてはどうでしょう。本著では障がい者の求人方法に限らず雇用形態・休暇制度についても参考になる説明がされています。

企業で働きながら自立を目指す障がい者にはキャリアアップや将来設計に力を入れる人材も増えています。これまでの「決まった仕事だけを担当してもらう」から、「自信の成長」につながる仕事を任せてもらえる組織というのは『魅力ある企業』として周囲の目に映るのではないでしょうか。

③多様性を実現させる障害者雇用

今更ながらですが、今まで当然と思えたことが通じない世の中だという理解を求められています。障害者雇用を積極的に取り組んでいる企業であれば、職場で活躍する障がい者の姿が増えてきました。これは、組織内で「役職に就く女性」「言葉や文化の違う外国人」が増えてきていることにも通じる部分があります。
仮に自分が健常者だった場合、そこから見える景色だけで物事を判断しているのであれば、他の立場の人たちのことを理解するには努力が必要です。
しかし、障がい者の目線に立って見える景色を見ようとしたとき、その組織は障がい者も含めた多様性に対して理解ある強い組織になることができます。

本文では職場での障がい者とのコミュニケーションを通じて、「違いの理解」が重要だとあります。自分たちにとっての常識は障がい者にとっても常識だとは限りません。「違いの理解」が組織にあることで障害者雇用が一歩前進できると感じました。
また、書籍では企業事例を使ったHOW TOでは分かりやすい解説がされており、自社で発生したトラブルと比較して今後に役立てることもできます。



本著は広く人事担当者の方に読んでいただきたい参考書籍のひとつだと思いますが、特に「これから本格的な障害者雇用を実施する企業」「障害者雇用の課題で困っている企業」「障害者雇用で新しい取り組みを実践したい企業」の経営者や人事担当者には手にしていただきたいです。
新型コロナによる「ピンチ」な状況を「チャンス」に変えるきっかけにする1冊です。

著 書:「会社を変える障害者雇用」
定価1800円+税 四六判

著 者:紺野大輝(こんの・たいき)
・1976年、北海道生まれ。「脳性麻痺による脳原両上肢機能障害(2級)」という障がいを持って生まれる。
・2000年、法政大学卒業後、都内老舗ホテルに入社、購買部で5年間勤務する。
当時、障がい者採用の存在を知らず一般採用で就職活動を行う。
・2006年、障がい者採用で転職、従業員1,800名の企業に入社。
最初に配属された部門で障がい者の採用・教育に携わり、その後、人事部に異動。
・2015年より障害者雇用の啓発活動を行う。
「全国・講師オーディション 2015-100年後に残したい話-」にて「奨励賞」を受賞。
・2016年、初の著書『障がい者の就活ガイド』(左右社)を出版。
今までにない就活本で反響も大きく、朝日新聞「天声人語」など各種メディアで取り上げられる。

紺野大輝公式ホームページ:https://konnotaiki.net/

発行者:株式会社新泉社 東京都文京区本郷2-5-12

ABOUTこの記事をかいた人

上前 忠司 (日本障害者雇用総合研究所代表)

[障害者雇用コンサルタント]
雇用義務のある企業向けに障害者雇用サポートを提供し、障害者の雇用定着に必要な環境整備・人事向け採用コーディネート・助成金相談、また障害者人材を活かした事業に関するアドバイスを実施。障害者雇用メリットの最大化を提案。その他、船井総研とコラボした勉強会・見学会の開催や助成金講座の講師やコラム執筆など、障害者雇用の普及に精力的に取り組んでいる。

▼アドバイス実施先(一部抜粋)
・opzt株式会社・川崎重工業株式会社・株式会社神戸製鋼所・沢井製薬株式会社・株式会社セイデン・日本開発株式会社・日本電産株式会社・株式会社ティーエルエス・パナソニック株式会社・大阪富士工業株式会社・株式会社船井総合研究所・株式会社リビングプラットフォーム