人材不足に困っている企業こそ、障がい者との関わりをきっかけに得られるメリットが大きい

私たちが教えられた「1日8時間・週40時間労働」という働き方。これは法律として労働基準法に定められているのですが、第二次世界大戦終戦後の1947年に決められたものだということをご存知でしょうか。今から73年前です。当時の生活スタイルや環境と今の時代を比較したときに変わっていないものはどれだけあるでしょうか。

企業内で日常的な業務として見られる単純作業はAIやRPAの導入により人の手から離れつつあります。その一方で従業員たちは、判断力や想像力が求められる定型化されにくい業務を担当することで精度の高い成果を生み出すといった業務の棲み分けが進んでくることでしょう。
とはいえ、世の中にある企業のほとんどにAIやRPAが導入・活用される時代はまだまだ先の話であり、この先も企業にとってマンパワー(=人の能力・労働力)は欠かせない重要資源のひとつです。それは、昨今の求人の多さが証明しています。ネット上の求人サイトには日々更新されていく求人募集が掲載されており、街にあるお店(特に外食産業やコンビニエンスストア)の入り口には求人票が掲げられているのを頻繁に目にします。少なくともこの数年は、『人材不足』の状態が続いています。

この時代、こちらが求める人材に出会えないと悩んでいる担当者は少なくありません。
結果、妥協から生まれる雇用では当然両者にとってメリットにはならず、人材の定着も実現しません。求人活動において「時間・労力・期待値」だけが膨らんでしまった負のスパイラルから抜け出せない状態は、「雇用」「働き方」「労働力」について抜本的な見直しを実行しなければ、様々な媒体を使い求人募集を掛けても、希望通りの採用には結びつかなくなっています。このことは、特に深刻な状況にある中小企業の皆さんは思い当たるところがあるのではないでしょうか。
普段からハローワークを活用されている人事担当者も、窓口担当者に相談をしても解決につながるような話にもならず、まるで出口の見つからない迷路をさまよい疲弊している状況だと思います。

相談先を変えてみる


そのような時、目先を変えて自社の近くにある障がい者の福祉事業所に声を掛けてみるのもひとつの手です。
その場合、福祉事業所の中でも障がい者の「就労系支援事業所」となり、もう少し具体的に言うと「就労継続支援A型事業所」「就労継続支援B型事業所」「就労移行支援事業所」という福祉サービスを提供しているところになります。
上記に挙げた「就労系支援事業所」は、「障がい者の一般企業への就職支援」というのをひとつの目的としながら、障がいのある方たちを対象に就労技術(例えばPC操作、ビジネスマナーなど)や自立・日常生活に必要な一般常識を身に着けるための授業を提供しているところになります。

こういった障がい者の「就労系支援事業所」は日常的に企業からの相談に対応しています。主には障がい者の雇用に関連した相談(法定雇用率の達成、助成金関連、職場定着など)になりますが、事業所によっては下記のような形態で仕事を請け負ってもらうことがあります。

  • 『業務請負』

切り出した作業を支援事業所に委託。支援事業所内にて企業が指定した作業内容・精度・納期に合わせて障がい者の方たちが作業をおこなう。

  • 『施設外就労』

企業内に設けた作業場所にて、支援者同伴のもと障がい者の方たちが決められた業務をおこなう。

  • 『実習』

就職間近な状態にある障がい者が実務経験のひとつとして、企業内で実際の業務に就く。(インターンシップ)

これらは、必ずしも雇用を前提としているわけではありませんが、一般企業への就職を目指した訓練の一環であることに変わりはありません。
注意していただきたいのは、これら就労支援事業所を「不足している労働力の補填」として活用するだけならば、本来の悩みである「人材不足」の解消にはいたっていないということです。障がいのある人たちに仕事をお願いすることで自社の様々な部門を見直すきっかけにしてもらいたいと考えます。
下記に参考例として記してみました。

  • 「業務の工程」

細分化することで作業をまとめてみる。

  • 「マニュアル化」

未経験者でも初日から全ての業務が実施できる。

  • 「ペーパーレス」

過去の紙資料をOCR化し、サーバーに保存。

  • 「ビジネスツールの導入」

チャットによる情報共有とリアルタイムコミュニケーション。
など。

実は、こちらに挙げた参考例は、もともとは障がい者の雇用義務もない中で、「一時的な労働力の確保」「社会貢献」として活用し始めた企業が、関わりを深めていくことで障がい者をいち戦力として認識し、雇用に前向きになっていく過程で実践した内容になります。

環境の変化を理解し受け入れる


世の中は便利になっていきます。これは、自分の意志とは別に周囲を囲む環境は常に前進していきます。変化を理解し受け入れることが重要です。
電話という通信ツールは、固定電話から携帯電話となり、携帯電話もガラケーからスマホへと進化しました。連絡の手段も電話による通話からLINEなどの形態へと変わりました。これは若者だけではなく幅広い年齢層に支持されています。
会社の中の仕事を見直すことで「無駄だった作業」「限られた人しかできない仕事」「作業時間」を改善しながら、成果は現状維持もしくはそれ以上に生み出すことができます。仮にいくつかの業務が簡略化やマニュアル化が促進することで誰でもその業務に就くことができるようになります。

また、「働く」というスタイルについても見直す時代だと考えます。世間では新型コロナの影響によって、従来の「働く」という形自体が見直しを迫られています。「テレワーク」「時差出勤」「フレックス」など、これまでどちらかというと導入に消極的であった企業がここぞとばかりに推進しています。不適切な表現ではありますが、雨降って地固まるの如く「働き方改革」が進んでいると感じます。
これらの導入は決して大企業だけが取り組む義務があるわけではなく、中小企業でも「テレワーク」を導入し、大企業に引けを取らない「働き方改革」を実施するべきではないでしょうか。大企業からすれば、取引相手でもある中小企業も足並みを揃えて「働き方改革」を実施してもらえたら同じ目線でビジネスを進められるのにと感じているはずです。(国の指針である「働き方改革」推進に関連した助成金制度も活用しやすい)

冒頭で「1日8時間・週40時間労働」についてお話をしました。経営者としては「8時間労働=成果x」を1人のノルマとしているのであれば、1日を費やして成果xを生み出せばいいので「6時間労働=成果x」でも問題がないということです。(この場合、1人の業務負荷や作業量を増やさずに実践することが前提)
私は、今後「1日6時間・週30時間労働」「週休3日」を導入する企業が増えてくると思います。
貴社の求人募集で希望する人に出会えない理由をもう一度考えてみてはどうでしょう。
古い習慣や従来のやり方・考え方が邪魔をしていませんか。

ABOUTこの記事をかいた人

上前 忠司 (日本障害者雇用総合研究所代表)

[障害者雇用コンサルタント]
雇用義務のある企業向けに障害者雇用サポートを提供し、障害者の雇用定着に必要な環境整備・人事向け採用コーディネート・助成金相談、また障害者人材を活かした事業に関するアドバイスを実施。障害者雇用メリットの最大化を提案。その他、船井総研とコラボした勉強会・見学会の開催や助成金講座の講師やコラム執筆など、障害者雇用の普及に精力的に取り組んでいる。

▼アドバイス実施先(一部抜粋)
・opzt株式会社・川崎重工業株式会社・株式会社神戸製鋼所・沢井製薬株式会社・株式会社セイデン・日本開発株式会社・日本電産株式会社・株式会社ティーエルエス・パナソニック株式会社・大阪富士工業株式会社・株式会社船井総合研究所・株式会社リビングプラットフォーム