「案外うまくいく」‐コロナショックを機に働き方を見直してみる

当初、新型コロナがこれほど大規模な影響を世界に与えるということを予測できた人はどの程度存在したのでしょうか。
未知なる脅威として現れたこの新種のウイルスは、今のところ終息の兆しを見せるまでに至っていません。世の中には自粛ムードが広がり、これまで当たり前だった日常生活に多くの制限が掛かることになりました。多くの制限を受ける日常というものを経験したことのない我々にとっては、今までの生活を大きく変えるきっかけになったことは間違いありません。

緊急事態宣言後の変化

国が法律に則って発令した緊急事態宣言により、各業種業態により対応は様々ではありますが、これまでの働き方にも大きな影響を与える結果となりました。私が障害者雇用の支援をしている企業も今回の緊急事態宣言を機に本格的なテレワーク勤務をスタートさせることになりました。おそらく、本来は今年の開催予定であった東京オリンピック・パラリンピックが実施される7月頃を目途にして徐々にテレワーク勤務や時差出勤を全社的に導入しようと計画していた企業も多かったのではないでしょうか。

ところが、新型コロナによる自粛要請をきっかけに、一気にテレワークによる在宅勤務の開始へと大きく舵を切った企業が多いと聞きます。以前から国と厚生労働省はテレワーク導入企業への助成金制度などを設け、働き方改革の一環として在宅勤務を推進してきました。想定外ではありましたが、従来からの働き方を大きく見直す出来事になりました。
少し大袈裟な表現になりますが、企業にとっては今までにも増して変化に対して柔軟に対応しようとする意識と実行力のある組織作りが重要だと改めて考えさせられました。

例えばある仕事の場面で。

少し前まで営業担当者は、役割として客先に足を運び、相手担当者と実際に顔を合わせてコミュニケーションを図ることが大事な仕事のひとつだと教わりました。
確かに相手担当者と顔を合わせて交わす会話や情報交換は大切なコミュニケーションであり、同じ空間でお互いが感じ取る空気で分かり合えるというのも理解できます。しかし、新型コロナにより仕事の進め方が変わらざるを得ない状況下で、戸惑いながらも試してみた通信ツールや電話・メールでのコミュニケーションでも、「案外うまくいく」ということを実感できたのではないでしょうか。

私自身も仕事では企業の人事担当者や当事者・支援者の方々とお会いして打合せや面談をすることが多いのですが、今は企業への訪問も控えるようにし、必要な打合せや面談はzoomなどのツールを使用しておこなっています。通信による面談や打合せは、今回の新型コロナが蔓延する以前から使用していましたので、ほとんど抵抗を感じることなく頻度を上げることができたのは非常に良かったことだと感じています。(ちなみにこのコラムも自宅にて執筆しています)

この新しいことを試して「案外うまくいく」という感覚ですが、特に職場や仕事の場面で感じることが多いように思います。この時代、ツール・通信環境・システムなどの進歩が目覚ましく、我々が想像する以上の成果を手にすることができるようになり、今までの「〇〇でないとダメ」という固定概念を「☆☆でも大丈夫だ」と気付かせてくれるものだと実感します。

固定概念を打ち砕く

これは、障がい者の雇用においても同じことがいえると思います。ここ数年の間に障害者雇用の環境は大きく変化しました。厚生労働省から公表される障害者雇用の数値は多くの項目で前年を上回る結果が続いています。その一方で、障がい者の雇用義務のある企業の法定雇用率の達成割合は半数を越えないというのは、各企業が抱える課題が山積されていることを意味しています。
障害者雇用が進まない企業から上がる声として、「障がい者に任せる仕事がない」「雇用したことがない」「障害者雇用が不安」などが聞かれます。確かに、これまで障がい者の求人や雇用を実施して来なかった企業にとっては、知らないことが多すぎて採用に踏み切れないというのもよく分かります。

新型コロナにより世界的に経済活動が冷え込み、終息してからもしばらくの間は平和な生活を取り戻すための時間が必要だと思います。しかし、経済や社会の立て直しがある一定水準まで進んだのちには、障がい者の雇用も進んでくことが予想されます。
おそらく、雇用が停滞していた分、助成金や緩和措置などを発令しながら雇用を促し、それに合わせて新たに厳しい罰則規定を設けることもあり得るのではないでしょうか。これまでは、法定雇用率が達成していない場合、払える額の納付金(罰金)でしたが、仮に月額100,000円/人になったとしたら、今よりも達成企業が増えることになるでしょう。人事担当者にとっては大変な役割になると思います。

私は日頃から、義務感や無理やりな障害者雇用の取り組みは、結果としてうまくいかないと思っています。今回の新型コロナによる対処として仕事の在り方・働き方が見直されることをきっかけとして障がいのある人材の戦力化という点も考えてみてはどうでしょうか。
「障害者雇用=企業のデメリット」という考え方は取り組みを邪魔しますが、「障害者雇用=企業のメリット」であれば会社と従業員を成長させることができます。
障害者雇用も「案外うまくいく」と思います。

ABOUTこの記事をかいた人

上前 忠司 (日本障害者雇用総合研究所代表)

[障害者雇用コンサルタント]
雇用義務のある企業向けに障害者雇用サポートを提供し、障害者の雇用定着に必要な環境整備・人事向け採用コーディネート・助成金相談、また障害者人材を活かした事業に関するアドバイスを実施。障害者雇用メリットの最大化を提案。その他、船井総研とコラボした勉強会・見学会の開催や助成金講座の講師やコラム執筆など、障害者雇用の普及に精力的に取り組んでいる。

▼アドバイス実施先(一部抜粋)
・opzt株式会社・川崎重工業株式会社・株式会社神戸製鋼所・沢井製薬株式会社・株式会社セイデン・日本開発株式会社・日本電産株式会社・株式会社ティーエルエス・パナソニック株式会社・大阪富士工業株式会社・株式会社船井総合研究所・株式会社リビングプラットフォーム