障がいを抱えた当事者から見たコミュニケーションの取り方

筆者は発達障がいを抱えていますが、発達障がいの方にはコミュニケーションが苦手な方も少なくありません。筆者も例に漏れず、コミュニケーションは苦手です。そんな筆者が普段、どのようにコミュニケーションをとっているのか。
その一端を解き明かしながら辿る今回のテーマは、「会話」です。

実は会話が苦手です

筆者はおしゃべりです。しかし、会話は苦手です。
「おしゃべり」は、他者と言葉を交わす必要はなく、一方的に話していても成り立ちます。それに対して、「会話」は相手と言葉を交わす必要があり、一方的に話していては成り立ちません。そして言葉を交わすためには相手の「意図を汲み取り」、自分の中で「話をまとめて」話す必要があります。筆者は多弁ではあるものの、「意図の汲み取り」や「話をまとめる事」に時間を要するため、会話が苦手なのです。つまり、話したくても話せない、そんな状況です。

五感を研ぎ澄ませて「会話」せよ


そんな筆者が人と会話する際に、必ず行う事があります。それは、五感を総動員した話し相手の情報収集です。会話する人の性格や表情、声の調子、話し方の癖など、相手の言動をつぶさに観察して、その会話に存在するパターンを読み取ります。
こうする事で相手の意図を汲み取りやすくし、会話の補助としているのです。

自分の話し方もパターン化

さらに、様々な話題に対する筆者の話し方もパターン化していきます。何度かその話題を話すと、話し方が固定化されていきますので、その種類を増やしていきます。
そうする事で、話を瞬時にまとめられなくとも、素早く言葉を返す事ができるのです。

会話するために必須な記録簿「会話パターン」

相手や自分の言動を読み解き、パターン化して会話する。この記録簿の様なものを、筆者は「会話パターン」と読んでいます。この会話パターンを構築する事で、筆者はようやく「会話」する事ができるのです。

一方で、会話パターンがなければ会話する事自体、大変難しくなります。会話パターンが成立していない場合、筆者が一方的に話してしまったり、急に黙り込んでしまったりと、会話として成り立ちません。そのため、筆者は新しい人と会う度にその都度、その人専用の会話パターンを作成して会話に臨んでいるのです。

会話パターンは実践の中で増えていく


現在、筆者は特段苦慮する事なく電話応対を行っていますが、現在の職場で電話が取れるようになるまで、3ヶ月もの時間を要しました。これは、その場の電話応対に応じた会話パターンを作成する必要があったためです。電話応対時に多弁になったり、寡黙になってはいけませんので、入念に情報収集に当たりました。

初めはベルの音程から鳴る回数、果ては電話を取った人の話し方やその話題など。こうして会話パターンを構築し、ようやく電話応対できるようになったのです。
しかし、一度会話パターンができるとそれを応用して他のパターンを作っていけば良いので、会話パターン構築後は電話応対しながら会話パターンを増やしています。このように、会話パターンがある程度できると、実際に会話しながらそのバリエーションを増やす事ができるのです。

「集団会話」は相槌を打ちながらゆっくりと

それでも会話パターンが形成し辛く、なかなか会話できないケースがあります。それは3人以上で話す場合です。
人数が増えれば増えるほど無数の状況が発生するため、会話パターンの形成に時間が掛かってしまいます。そのため、一対一で話していた時は流れる様に特に話していたにも関わらず、集団会話になると、急に黙り込んでまう事があります。会話に加わる人が固定化されれば、徐々にパターンを形成する事ができますが、なかなか上手くはいきません。そんな時は笑顔で相槌を打ったり、適時反応するなど、声に出さない会話で場を乗り越えています。集団会話の会話パターンを増やす事。これが筆者の当面の課題ですね。

まとめ

今回はコミュニケーションが苦手な筆者が、どのように会話しているかお話ししました。話したくても話せない、筆者が常に抱えるジレンマですが、時間をかけて少しずつ会話パターンを構築して、思い悩む機会を少なくできればと思っています。

また、コミュニケーションが苦手な方が周囲と意思疎通を図るためには、周囲の理解が不可欠です。
筆者も周囲の理解があってこそ、現在の職場で様々な会話できるようになってきました。意思疎通が図れないと当事者も周囲ももどかしく思いますが、その要因は様々。互いに無理強いする事なく、互いを理解し、それぞれの課題を整理・認識して取り組む事で、徐々にコミュニケーションが取れていくでしょう。

ではまたお会いしましょう。

ABOUTこの記事をかいた人

野添 浩一郎(阪和興業株式会社 大阪本社 人事部業務サポート)

1989年生まれ。2015年末、ADHD(注意欠陥多動性障がい)と ASD(自閉症スペクトラム)の診断を受ける。その後、LD(学習障害)の特性がある事も判明する。それまで自身を健常者と見做して生活してきたが、生活の様々な場面で支障を来しており、それ以降、自身の障がい・特性を認めた上で活かすようになった。永らく、自身の特性から低い自己肯定感に苛まれていたが、大学院時代に知り合った留学生たちと、留学先の米国で自己肯定感を高めることになる。2016年末より現職。