ベンチャー企業が実践する雇用から得られる障がい者雇用3つのヒント

新型コロナウイルスが世界中でまん延した2020年に以前から興味のあった農業(と言っても小さな農園程度ですが)を始めました。
実際に土を耕して、種や苗から野菜を育てるのは初めての経験でしたので、季節ごとの栽培計画やそれぞれの野菜の育て方などをインターネットで調べたりして、今でも分からないことが多いながらも、少しずつですが農業を楽しめるようになってきました。
時には、私よりも経験豊富な農園仲間から、栽培に役立つ工夫やポイントなどを教わりながら、新たな工夫を取り入れたり教わったことをヒントにして自分に合った方法を見つけるようにしています。

会社が新たに取り組みやシステムを導入する場合、既に活用している他社の事例や成果を参考にすることが多いと思います。
私もミルマガジンの取材や企業訪問を通して経営者・人事担当者から聞かせていただく「採用・求人」「職場での工夫」「コミュニケーション方法」に関連したお話しの中には多くのヒントが隠れています。

先日、あるベンチャー企業が実践している一般雇用のお話しを人事担当者から聞く機会がありました。
社歴が短いからこそ今の時代に即した雇用のかたちを取り入れていました。その中には障がい者雇用に当てはめることができる取り組みがありましたので、ご紹介したいと思います。

ここでひとつご提案ですが、下記にご紹介するポイントをもとに「当社ならどうすれば取り入れられるか」という視点で見てみてください。そのままを導入するのもひとつですし、自社に適したカスタマイズをするならどうするだろうという視点でも構いません。

『仕事の細分化 → 最適化を図る(ゼネラリストからスペシャリストへ)』

こちらの会社ではそれぞれの部署やチームの業務をなるべく細分化させて、各人員へ割り振っています。そうすることで得られるメリットとして、

  • マニュアル化させやすくなる
  • 突発的なことにも対応しやすくなる(体調不良、ご家族の理由など)
  • 業務を単純化させられる
  • 人員同士でサポートし合える体制になる

が考えられます。
実際に、担当する従業員が急な体調不良になった場合でも業務を細分化・単純化させていることでチーム内の他の人員に業務を割り振ることができるので業務に穴をあけることもありませんし、何より従業員が気にせず体調の回復に努めることができる組織になります。
また、障がい者の場合、できることとできないことのギャップが大きかったり対応できる業務範囲も限られることがあるため仕事上での適性を見極めることが難しくなることがあります。業務を細分化させることで個人の特性に合った業務とのマッチングが進めやすくなるのもメリットのひとつです。

『会社に人材を合わせる < 会社を人材に合わせる』


もちろん会社の就業規則など一定のルールを設けることを大前提としてですが、従前のような「従業員すべてが同じ就業時間」「出社型勤務」といったはたらき方をMUSTで求めてしまうと本来事業が求める成果を上げてくれる人材を逃すことにもつながってきます。
例えば、大企業を中心に浸透してきた産休育休制度ですが、復職した直後はパートタイムのような時短勤務を認めている会社が多いと思います。また、医療の進歩や高齢化のため家族の看護・介護を求められる従業員も増えてきました。
様々な環境に置かれた自分でも仕事との両立が可能な組織の場合、体調の浮き沈みが多い精神疾患のあるひとなど、多様な特性がある障がい者にとっては働きやすい環境になります。
「従業員が気にせずに休みを取得できる」「プライベートに配慮した勤務時間を選べる」組織を作ることが障がい者にとっても働きやすい職場につながります。

『求める変化は個人にも組織にも』


新型コロナをきっかけに進んだはたらき方改革のひとつはテレワーク勤務ではないでしょうか。これまで導入がなかった企業への認知も大幅に進んだ印象です。しかしながら、その範囲は大企業を中心に限られたものとなり、緊急事態宣言の解除に伴って従来の出社型に戻そうとする動きも見られます。よく聞く理由は「コミュニケーション不足」でした。

テレワーク勤務が最良のはたらき方だというわけではありませんが、従業員の立場で考えたなら、はたらき方の選択肢として選べるような組織にはひとが集まってくる確率は高いと思います。
こちらの会社でも新型コロナのまん延に伴い、完全なテレワーク勤務の導入を進め、従業員にもはたらき方・仕事の進め方についての“変化”を求めました。基本的には出社しなくても成果を上げられるスキームを構築し、柔軟なはたらき方を受け入れられる組織になりました。

その一方で従業員間での「コミュニケーション不足」による業務への影響も懸念材料として挙がっていました。そこで解消策として、週1回30分程度の個別面談を実施しています。特に目新しいものではありませんが、顔を合わせる機会が減った分を敢えて1on1で傾聴する時間を設けることで悩みや不安を大きくせず、早期に対処できる環境を作るようにしています。通勤に使っていた時間を削減できた分、個別に話を聞く時間に回す工夫を取り入れるようにしたわけです。

私がこれらのことで感じたのは“個の尊重”でした。人材は置かれている環境が様々であるため、そのことを認識しそれに応えられる組織が今後求められるように思います。

ABOUTこの記事をかいた人

[障害者雇用コンサルタント]
雇用義務のある企業向けに障害者雇用サポートを提供し、障害者の雇用定着に必要な環境整備・人事向け採用コーディネート・助成金相談、また障害者人材を活かした事業に関するアドバイスを実施。障害者雇用メリットの最大化を提案。その他、船井総研とコラボした勉強会・見学会の開催や助成金講座の講師やコラム執筆など、障害者雇用の普及に精力的に取り組んでいる。

▼アドバイス実施先(一部抜粋)
・opzt株式会社・川崎重工業株式会社・株式会社神戸製鋼所・沢井製薬株式会社・株式会社セイデン・日本開発株式会社・日本電産株式会社・株式会社ティーエルエス・パナソニック株式会社・大阪富士工業株式会社・株式会社船井総合研究所・株式会社リビングプラットフォーム