【Q】
現在様々な障がい特性の障がい者を10名雇用しています。みなさん、職場では同僚や上司からの理解と配慮を受けながら、精一杯業務に励んでもらっています。障がいがあっても仕事ではしっかりと成果を上げています。
雇用している障がい者の中には年齢も若く、社会経験も少ないことから色々な誘惑や社外の人間関係が原因となるトラブルに巻き込まれることもあります。結果として、体調を崩して欠勤したりなど勤務にも影響が出ることもしばしば起こります。こういったプライベートな範囲で問題が起きたときに雇用側である会社としてはどこまで関わるようにすれば良いのか判断に困っています。
会社が雇用している障がい者が安定して勤務してもえるような関わり方について、他社の事例などがあれば教えてください。よろしくお願いします。
《物流会社、従業員数約450名、人事担当》
【A】
前回の続き。
◯外部にある専門機関・支援機関を巻き込む
法定雇用率の引き上げや多様性社会の実現といった社会的課題に関する取り組みが進んだことで企業による障がい者の雇用は毎年増加しています。最も多く企業に雇用されているのは身体障がい者の約36万人ですが、知的障がい者が約15万人、精神障がい者も約15万人となっていて、特に精神障がい者は前年よりも10%前後の伸び率で雇用数が増えています。障がい特性に限定されず、様々な障がい者が社会で活躍できる機会の創出が広がってきているのだと感じています。
徐々に障がい者の社会参加が増えてくる一方で社会と関わる経験の浅い部分をサポートする障がい者就労支援福祉サービス(就労継続支援A型事業・就労継続支援B型事業・就労移行支援事業・就労定着支援事業)を提供する支援機関があります。
最近はこういった支援機関を通じて障がい者が企業に採用されるケースが増えてきていますが、支援機関に通いながら就労訓練・自身の障がいに関する自己理解を身につけた人材は企業にとって採用メリットが大きいことも理由のひとつだと感じます。他にも採用後、一定期間になりますが職場定着をサポートしてくれるサービスもあります。
前項でも書きましたが、勤務時間中であれば企業が主体的な立場として障がい者に関われます。一方でそれ以外のプライベートに関してはこういった支援機関がサポートに入ってくれることで仕事に集中してもらえるようになります。支援機関の担当者には関わっていただく最初のタイミングに職場として求める定着支援(例えば定期面談やカンファレンス等の実施)について明確にお願いをしましょう。
また、支援機関のような福祉サービスを活用していない障がい者を採用した場合も地域にある障がい者就労・生活支援センターや障がい者地域職業センターに相談を行い、ジョブコーチを派遣してもらえる制度の利用も検討してみましょう。
◯家族の参加が信用につながる
雇用する障がい者が安心安全に健康な状態ではたらいていただくためには親御さんなど、ご家族の理解とサポートがあることで実現に近づけることができると思います。一般的には従業員の家族と企業が関わるというのはあまり考えにくいのですが、これまでお伝えしているように障がい者の中にはプライベートの状況・環境によって仕事に大きく影響が出てしまいます。
ある特例子会社では、定期的にご家族と面談による情報交換の場を設けたり、一年の締め括りとして年末にご家族参加の忘年会を開催するなど、普段の職場の様子を知ってもらったり、会社の一員であることを認識してもらう場を設けることで、ご家族にも積極的に関わってもらうはたらきを行なっています。障がいのあるお子さんがどのような仕事を任せてもらっているのか、しっかりと仕事で活躍していることをご存知ないご家族もいます。中にはお子さんに関心を向けないご家族もあったりすることを聞くと悲しく残念な気持ちになります。
家族との関わりまでしないといけないのかなど、改めて雇用側として障がい者従業員との関わり度合いを考えさせられます。しかし、任せた仕事で成果を上げてもらうことを重要視するならば、ご家族の協力やサポートが不可欠であるならば、積極的に関心を向けてもらうような企業としての意識を見せることも必要なのかもしれません。
◯コンテンツはトラブル回避から後見人制度など多種多様

最後に、従業員には社会人として仕事以外のことに関しても色々な経験を通した成長を願っているのではないでしょうか。それは障がい者であっても同じ思いのはずです。障がいのある従業員に身につけてもらいたい知識は幅広く挙げることができると思います。
例えば、日常生活の質を向上させるようなテーマであれば、
- お金の扱い方(預貯金、計画性など)
- 生活する上で必要となる税金、法律、制度に関する情報
- 自身の健康について(食事、睡眠、服薬、運動、飲酒)
- 余暇の過ごし方(趣味、旅行、各種鑑賞)
- 保険
などが考えられます。
また、トラブルや犯罪を回避し安全な暮らしをしてもらうのであれば、
- 詐欺
- 薬物
といった身近に遭遇しがちなものを挙げられます。
他にも、人間関係に関連したものとして、
- SNS(使用方法、トラブル事例)
- 友人関係、恋愛関係、性
について、改めて習う機会が少ないからこそ知っておいてもらいたこともあります。
テーマによっては専門家にお越しいただき講義スタイルで実施。できれば家族にも一緒に参加してもらえれば理想的だと考えます。