【Q&A】テレワークで障がい者雇用を始めるときのメリットと注意点

【Q】
お世話になります。従業員数500名ほどの会社で人事担当をしています。
障がい者のテレワーク雇用のことでご相談があります。
当社でもようやくテレワーク勤務が浸透し、今後新型コロナが終息してもテレワーク勤務は継続することになりそうです。
障がい者雇用でのテレワーク勤務経験がない当社ですが、今後は法定雇用率の維持を考えるとテレワークで勤務してもらう方の採用も検討し始めています。
そこで、テレワーク勤務による障がい者採用でのメリットと雇用を継続する上で注意することがありましたら教えていただきたいと思います。
よろしくお願いします。
《商社、従業員数約500名、人事担当者》

【A】

ご相談ありがとうございます。
新型コロナウイルスがまん延し始めてから3年目を迎えました。日常の生活の中で新たなスタイル・スタンダードが受け入れられる場面も増えてきたように感じます。

はたらく場面でもテレワークなどのはたらき方が大企業やベンチャー企業を中心に浸透しており、この流れは障がい者雇用にも見られるようになってきました。
障がいの特性や当事者の気持ちを大前提としながら、テレワーク勤務は障がい者にとってメリットがあるはたらき方だと思っています。実際に私がコンサルティングで関わっている企業でもテレワーク勤務による求人には多くの障がい者からエントリーがあります

今回のご相談者のように、テレワーク勤務による障がい者雇用をスタートさせようと検討する企業が今後も増えてくることが考えられます。そこで、テレワークでの障がい者雇用を始める際のメリットと注意する点についてご紹介したいと思います。

《テレワークによる障がい者雇用のメリット》

  • 求人対象が全国に拡大

新型コロナウイルスがまん延する以前から障がい者採用活動が活発になり、求人数も増加傾向にありました。そのため、特に都心部にある企業にとっては競争率の高い中で如何にして自社に適正な人材を採用するかに時間・労力・コストを掛けてきましたが、見合った成果が残せないと感じる人事担当者も少なくないと思います。

テレワーク採用の場合、企業に通勤する必要がないため障がい者の居住地を限定せずに求人を出すことができますので、これまでのエントリー数を大きく上回る求職者が採用対象者となります。
前出の企業では、管轄の本社が大阪にありながら、テレワークで雇用される障がい者は北海道から四国まで様々なところにお住いの方々が共有の仕事に取り組まれています。

  • 適正な人材と出会う確率がアップ

人を採用する場合、エントリーする人数が多ければ多いほど適性な人材を採用することができます。テレワーク雇用では、全国の求職者が採用の対象者となりますので、必然的に適正な人材とマッチングできる確率も高くなってきます

例えば、車イスでの移動が必要な下肢障がい者や満員電車による心身への負荷が強い特性の障がい者の場合、都心部にお住まいであっても「通勤」が負担となるために出社型での就職ができない方も多くいますので、そういった方々も採用の対象者となりえます。

《雇用で注意する点》

  • 勤務時間外の環境

テレワーク勤務の場合、事業所から離れたところでお住まいの障がい者も対象となりますので障がい特性や状態によっては支援体制や状態の安定が雇用定着に大きく関わってきます。
私が採用活動時に注意する点としては、
・健康な状態を維持するためのセルフケアや工夫を取り入れている
・定着支援などの福祉サービスを活用している
・支援者や医療機関との関係が良好
といったところを面接などで確認するようにしています。

私生活の場面が整っていない場合、能力が高い方でも仕事の成果に影響が出てくることが考えられます。会社の立場ではタッチしづらい私生活の体制が整っている方は少なからず発生する体調の波や周囲からの影響にも耐える力が見られます。

  • コミュニケーションに工夫

ひとりで仕事をすることが圧倒的に多くなるテレワークでは孤立してしまうことへの懸念もあります。また、黙々と業務に打ち込みやすくなるため周囲とのコミュニケーションが遠のいてしまうと感じる障がい者も多くなります。
従来からの電話やリモートでの面談によるコミュケーションだと「わざわざ」感が強くなります。例えば、slackなどのチャットであれば一言二言程度のコメントや簡単な質問などが手軽に行える分、コミュニケーションのハードルも下がります。

私が関わっている企業でもチームごとにチャットによる連絡や情報共有でコミュニケーションを取ることで強い孤立を感じない工夫を取り入れています。
他にも常時音声の回線をつないでおくことで、お互いの存在を感じやすい環境を作り出している企業もあります。

  • 直接会う機会を設ける

テレワークで問題なく勤務ができているとはいえ、定期的な面段など、直接顔を会わせてコミュニケーションや状況を確認する機会も設けてほしいと思います。わざわざ時間を作って顔を見に来てくれたという嬉しさと有難さは従業員に伝わります。また、体調に関することやトラブルが発生した時に様子を見に来てもらえると「ひとりではない」と改めて感じることにもなります。

人と人とのつながりを感じられることで、テレワークというはたらき方が生きてくるのだと思います。

ABOUTこの記事をかいた人

[障害者雇用コンサルタント]
雇用義務のある企業向けに障害者雇用サポートを提供し、障害者の雇用定着に必要な環境整備・人事向け採用コーディネート・助成金相談、また障害者人材を活かした事業に関するアドバイスを実施。障害者雇用メリットの最大化を提案。その他、船井総研とコラボした勉強会・見学会の開催や助成金講座の講師やコラム執筆など、障害者雇用の普及に精力的に取り組んでいる。

▼アドバイス実施先(一部抜粋)
・opzt株式会社・川崎重工業株式会社・株式会社神戸製鋼所・沢井製薬株式会社・株式会社セイデン・日本開発株式会社・日本電産株式会社・株式会社ティーエルエス・パナソニック株式会社・大阪富士工業株式会社・株式会社船井総合研究所・株式会社リビングプラットフォーム