インタビュー:就労移行支援事業所ふらっぷ

今回、インタビューにご協力していただいたのは、愛知県春日井市の『就労移行支援事業所ふらっぷ』
の管理者である藤井様です。よろしくお願いします。

1.読者向けに施設の紹介をお願いします。

完全個別制の支援を提供しています。障がい種別、障がい特性はもちろん、障がいの有無の判断や手帳、年金、重度判定の取得は勿論、一人一人にカリキュラムを作るところからがスタートです。
一定のカリキュラムに当てはめて考えるのではなく、目標の確認、調整からその理由やどこまでの将来を考えていくのか等を調整し、その目標、目的に沿った形から必要な支援を行います。
開始、終了、休憩時間が個別に設定されている事は勿論、行う事や行った事に対する評価基準も個別設定となります。
それらの評価かからよりマッチした企業、業種、就労条件等を提案させていただき、その実現に向けて本人のペースで進めていきます。支援は改善、維持、向上、様々な視点からすすめていき、親亡き後を前提とした本人なりの自立に向けて支援させて頂いています。

2.施設で提供している支援の内容とその流れを教えてください。

就労移行支援機関として一般的に行っている事(自己分析、企業分析、面接対策や障がい特性、各種資料作成、企業、医療機関との連携、同行、スキルの維持、向上、評価等)、就労定着支援(定期面談、各種調整/企業、自宅、喫茶店等指定場所、事業所内等)、ということはすでに当たり前となり、事業所としては最低ラインと考えています。
ふらっぷの捉える就職とは、「自身の目指す自立の実現」「社会参加の一つ」等複数ありますが、経済的自立のための一つの手段を目的とする事が一番大きいです。

そのプロセスややり方としての特徴として、今あるカリキュラムから「選ぶ」ではなく、自身の希望する支援やその理由、目的などからカリキュラムを「創る」からはじまります。

各種評価や一定の訓練等、専門機関との連携し、カリキュラムもありますが、就職に向けてのプロセスは様々あります。定着支援の利用の有無や障がいのオープン、クローズ、障がい者手帳や障がい年金、各種制度の活用の有無を踏まえて進めていきます。
評価基準も個々の目的、状況により完全個別制で定めていきます。

一定の社会性があれば選択肢は広がりますそれに越したことはありませんが、それが全てではなく、ピンポイントでも自身の希望する事にマッチすれば選択肢が限られたところで支障はありません。
報連相、挨拶、生活リズム等最低限の社会性が必須、と定めている事業所も少なくありませんが、自身にあった働き方を目指すという前提であればそれが必須とも限りません。
自分自身の経済的自立のための目的、目標の整理を進めていき、希望する利用時間、頻度、内容、支援方針等全て個別に設定して支援を開始します。
ベースとして、利用前の面談後、体験実習を3日~1カ月程度を区切り(最大1年半)としてその間に支援計画(暫定期間)を作成し、支援が始まります。まずは試してみて下さい。

3.支援に関して、今後力を入れていきたいことはありますか?

選べる支援、広がる支援になるようにしていきたいです。サービスの支給の考え方や事業所数、サービスの質や自立支援協議会とその部会等、様々な視点に関して地域格差が話題になることがあります。
就労支援の観点からは、お金がないから働けないのに、交通費が発生するから通えない、交通機関等で時間の都合で通えない、生活リズムができていないから支給がおりない、事業種別で選んだ結果、満足するサービスが提供されない等のケースも見られます。

「就労」という支援をうけるため、生活リズムの安定が必須であったり、報連相、挨拶必須という事言われる場合があり、まずはB型で様子をみて、A型で経験を積んでから等助言されることも珍しくありません。特性上や現在の生活状況等から、どうしても難しい方も存在する中で、就労移行支援を利用する中で「就労したい」という条件以外に必要なのか?という考え方もあります。報連相や一定に生活リズムが出来ていれば可能性が広がる事は勿論、一定の社会性は評価できますが、現在は働き方も多様性といわれています。合理的配慮は勿論、それらが一般的な評価よりも劣る事やできないからといって就労の可能性が難しいとは言い切れません
本人主体、本人の主訴が中心という事が強く言われていますが、現実的にはまだまだと言わざるを得ない点もみられると感じています。

本当の意味で、障がいがあっても自分自身の希望とする支援が提供できるように、カリキュラムで固定してしまうような一定のやり方が浸透しつつありますが、それ以外にも選択が広がるように、個別支援の体制を整えていきたいです。

現在、通所系は就労移行支援、就労継続支援B型のみとなっていますが、支援の考え方から本当の意味で事業所を選んでいただく事等で、様々なニーズに応えていくため、A型、放課後等デイサービス、グループホーム等の事業展開を考えていきたいです。

4.現在の障がい者の就労・就職全般に感じる問題点・困っている事はありますか?

放課後デイサービス等の連携など就労移行支援事業をご利用する前にも様々な福祉サービスをご利用されている方が見えます。将来の進路の相談の際等、通常の事業所に雇用されることが困難なら「A型」や「B型」等の基本的な視点が目立っていると感じていますが、就労移行支援は「通常の事業所に雇用されることが可能と見込まれる者」が基本的な視点といえます。
本人を支援する機関等がどのように本人の希望から可能と見込めるかによりその人の人生が大きく左右されるという視点をどれだけの方がリアルに現実をとらえているのか、を疑問に感じる点があります。

支援機関は本人の希望とする支援をする機関であるべきと考えていますが、会議を進めていく中では支援機関が中心になっていると感じる事や、本人に対して「閉ざされた質問」が中心になってしまい、本来のニーズが限定されてしまっていると感じることがあります。
就職活動している方は勿論、就職して定着支援を受けている方等どのような方でも、改めて本人中心という観点を認識し、よりよい会議、よりよい支援が出来るように進めていきたいです。

5.障がい者の受け入れに悩んでいる企業へのエールをお願いします。

全てにおいて正直にお伝え頂きたい、という事が願いです。
出来る事、できない事は勿論、合理的配慮という事があっても本来の業務への支障や現在働いている従業員の皆様の負担になる事は支援機関としても絶対に避けていくべきです。しかし、支援機関としても日々感じられますが、関係が構築出来ていない中ですべてを正直に話してくださいという事も無理な事だと思います。
支援機関として必要な情報は全て提供していく事で、より良い就職、定着支援が可能になると思います。まずは、思った事、疑問に感じた事、どんな些細な事でも聞いていただきたいです。また、少しでも不安な点があればそのままにせず、都度のご確認をいただけたらと思います。

支援機関は、本人中心として捉えられている企業様も多々見えますが、定着支援は本人、企業、どちらかに偏るという事はなく、雇用管理に関する事は当然企業様のご判断となります。WINWINの形を構築する事が定着支援の目的となりますので、どちらかに偏ってしまっては構築できません。
それぞれのご事情や目的に合わせて支援させていただきますので、希望をそのままお伝えください。専門機関は沢山ありますが、支援機関毎に特徴も専門性も異なり、「支援機関はすべて同じ」という事はありません。一つの支援機関に聞いて合わないと感じたら他の支援機関に聞くなど、御社にあった支援機関を見つけて頂く事が障がい者雇用の一番の近道となります。

6.就職準備中・求職活動中の障がいも持った方へのエールをお願いします。

自分自身の希望はしっかりと持ってみえますか?
数年前と比べると支援機関の数が増え、支援の質も向上してきています。反面、支援の質の捉え方によるところはあるものの、「いい事業所」「良くない事業所」の差が大きくなってきているとも感じます。単純な比較では就職者定着者の数、率、等で一つの判断もできますが、自分に合う支援機関かどうかという事はそれだけで判断事は困難だと思います。。
支援機関を利用する事が必須ではありませんが、支援機関は就労移行支援だけでなく、様々な法人、団体があり、その支援の在り方も様々です。

自分自身で出来る事も大事ですが、多くの方を支援してきた実績や経験は専門機関と個人では大きな違いがあります。情報収集、相談のみという観点でも支援機関をご活用いただき、自分自身の希望を大事にしていただき自分にあった考え方、働き方を目指していただきたいです。
支援機関は一つしか使えないという事もなく、支援機関は各事業所により正反対の意見となる事も珍しくないくらいその支援方法や考え方も様々です。
是非、自身にあった支援や支援機関、活用方法を知り就職、安定した就労となって頂きたいです。

■施設情報
施設名:就労移行支援事業所ふらっぷ
代表者名:代表取締役 成瀬 友勝
設立日:2015年11月1日
業種:障がい福祉サービス
所在地:愛知県春日井市中央通1-52 セントラルビル2F
ホームページ:https://www.rebo-flap.jp/
事業内容:就労移行支援事業、就労定着支援事業、認定ジョブコーチ支援事業(国、県)就労相談支援センター(ボランティア活動/社会貢献活動事業)、不登校・引きこもり支援事業、フードバンク事業、通信制高校サポート校事業、地域活動支援センター事業等

ABOUTこの記事をかいた人

[障害者雇用コンサルタント]
雇用義務のある企業向けに障害者雇用サポートを提供し、障害者の雇用定着に必要な環境整備・人事向け採用コーディネート・助成金相談、また障害者人材を活かした事業に関するアドバイスを実施。障害者雇用メリットの最大化を提案。その他、船井総研とコラボした勉強会・見学会の開催や助成金講座の講師やコラム執筆など、障害者雇用の普及に精力的に取り組んでいる。

▼アドバイス実施先(一部抜粋)
・opzt株式会社・川崎重工業株式会社・株式会社神戸製鋼所・沢井製薬株式会社・株式会社セイデン・日本開発株式会社・日本電産株式会社・株式会社ティーエルエス・パナソニック株式会社・大阪富士工業株式会社・株式会社船井総合研究所・株式会社リビングプラットフォーム