以前に比べると企業や支援機関を対象とした障害者雇用に関するセミナーやシンポジウムの開催が増えてきているように思います。最近では参加する企業も増えており、それに伴って規模も大きくなっているところを見ますと関心度合いの高さを強く感じます。
これらの場に参加した時に企業の採用担当者や経営層の方たちとお会いする場面があり、たくさんの情報を聞かせていただきます。自社での雇用事例や抱えている課題について等、内容は様々なため私にとっては現場の生の情報なので勉強をさせてもらういい機会となっています。
また、熱心な採用担当者からは直面している問題についてのご相談も良くいただきます。
今回は、採用を検討している障がい者の支援体制が企業に対してどのような利点があるのかをご紹介したいと思います。
これまで、障害者雇用の大部分は身体に障がいを持つ方々となります。企業にとって身体障がい者の方たちを雇用する場合の配慮といえば、エレベーターやスロープ、障がい者用トイレの設置などのハード(物理的な配慮)を考えることがほとんどでした。
しかし、既に障がい者採用のターゲットは、身体障がい者から知的障がい者や精神障がい者、発達障がい者の方たちへと移行してきており、昨年平成28年度の厚労省の統計では、企業の障がい者求人で精神障がい者が身体障がい者をおさえて求人数でトップとなっています。(実際には数年前から精神障がい者の求人数が身体障がい者を上回っています)
知的障がい者や精神障がい者、発達障がい者の雇用定着を実現させるための理解や配慮を考えた場合、ソフト(本人や周囲の心理的な配慮)を重視した枠組み作りが重要となってきます。
ソフト面の配慮を導入するにあたり、専門的な立場の協力が必要だと感じています。障害者雇用に関する知識や経験が浅い企業にとって、本業以外の部分に一から力を注ぐようなことは考えにくいですから、当然専門性の高いところからのサポートを活用するべきだと考えています。
例えば、新たな採用のタイミングであれば、行政からの紹介で専門機関をご紹介いただくことも出来ますし、今ならインターネットで自社の希望する支援をしてくれるところを見つけられます。
ここでご相談企業のような採用後にトラブルが発生した際の対処として、障がい者本人に支援体制があることで支援者側への協力を依頼することができます。
たいていの場合、採用活動時の求人募集の際に、エントリーされた求職者の方に福祉機関等の支援体制の有無を確認していると思います。もし、支援体制が取られている方であれば、雇用当初はもちろんのこと、働き出してからも定期的な訪問や面談、職場とのコミュニケーションも図っておられると思いますので、その時に何かトラブルなど困った出来事があるのであればご相談された方がいいと思います。
福祉機関による障がい者本人への支援体制のメリットは他にもあります。
採用する企業にとって、なるべく体調を崩さずに出社してもらうことが障害者雇用を上手く根付かせていくための願いだと思います。職場では周囲からの配慮や協力が得られ順調に働けていても、職場以外となる私生活でトラブルが発生し、体調を崩してしまった結果、会社に来れなくなったり、最悪の場合退職してしまうケースというのもめずらしい話ではありません。
会社としてご家族や友人などのプライベートな部分にまで介入することは非常に難しい問題です。このような場合も福祉機関による支援体制が整っている方であれば、私生活面もサポート受けられていたり、親御さんとの連絡も取っていることが多いので、相談に対応していただけると思います。
これらのような福祉機関の中には、障がい者の職場定着以外の企業側へのサポートをしてくれるところもあります。
例えば、社内で障がい者のことをより理解してもらうための研修や勉強会の講師役を引き受けてくれるところもあります。このような相談にも対応することで障がい者理解に通じるということを分かっていらっしゃるのだと思います。
中には、支援体制のない状態でも企業でしっかりと働いている人材もいらっしゃいます。支援体制に関しては、企業と障がい者本人が困った状況にならないための予防手段であり、トラブルが発生した時に事態が大きくならないためのリスク回避と考えてください。
それに、支援機関側としても、採用していただいた企業からの困りごとに関する相談であれば親身に対応をしていただけます。非常に頼りになる存在だと思います。
今のところ特に問題点はなく、真面目に働いていただいています。今後、職場でトラブルが発生した時にどのように対処をすればよいでしょうか。卒業生ですが、支援学校に相談をしても対応してもらえるのでしょうか。よろしくお願いします。