障害者雇用の先にある『職場定着』が難しい時代だからこそ知っておきたいポイント

障がい者雇用は求人・採用活動を経て雇用に繋げていくことが重要なことなのですが、本来はその先にある『職場定着』を目指して取り組みを進めていただきたいと思っています。
現在、労働者不足により人材採用活動は売り手市場の状態にあります。それは、障がい者の人材も例外ではなく、企業間での求人競争は年々熱を帯びており、ひとりでも多くの障がい者人材を企業内にとどめておきたいというのが人事担当者の願いでもあります。

その一方で、採用し法定雇用率が達成したら安心してしまう企業や管理者も少なくありません。今の日本で障がい者雇用というのは法律義務化されています。
そのため、雇用の数値や納付金(罰金)の支払いから解放されれば義務は果たしたと感じてしまいますが、雇用の難しさを認識している人事担当者は将来も見越した持続性のある障がい者雇用の取り組みが必要だと考えています。(そのためには、専門機関や助成金の活用も忘れてはいけません)

今の障がい者雇用は『職場定着』が難しい時代となっています。理由は下記のようなことが挙げられます。

『職場定着』が難しい理由

  • 「求人の数が多い」

現在、障がい者雇用が義務されている企業は全国に約100,000社。その約半数の企業で法定雇用率が未達成の状態にあります。
今、世の中で企業の価値を評価するのは売り上げや利益を上げているだけの企業ではなく、環境やダイバーシティなど社会的課題に取り組んでいる企業だと言われています。そのため、大企業を中心に意識の高い企業ほど障がい者の積極採用を進めており、それに合わせて求人の数もこの数年でかなり増加傾向にあります。(積極的な障がい者採用は企業のメリットになると考える企業が増えてきている証拠でもあります)

以前と違い、障がい者の求人はハローワークだけではなく人材会社や障がい者人材に特化した求人サイトなど、ひとりの求職者がたくさんの求人情報を手にすることができる時代となりました。

  • 「情報の入手が容易」

障がい者にとってスマホというツールは日常生活において非常にメリットのある必需品のひとつとなりました。聴覚障がい者や視覚障がい者向けのアプリが開発されたり発達障がい者にとっても社会生活における困りごとをフォローしてくれる便利ツールとして活用できます。
当然、情報というものも多くの量を簡単に入手することができる時代です。求職者であれば、エントリーを検討している企業の評判や障がい者雇用の取り組みを見てから判断することができます。ということは、悪い噂や情報というのも求職者や支援する立場の人たちは簡単に手にすることができることになります。

既職者であれば、他の企業の情報を元に転職活動をする人が出てきます。実際に、ある企業で働きながら転職先を探している障がい者は想像している以上に多いと認識してください。人材会社にエントリーするぐらいは法律に触れる行為ではありません。今は障がい者人材も売り手市場ですから、自社の障がい者も「私を採用してくれる企業はたくさんある。」と思いながら働いているかもしれません。

  • 「職場への不満」

普段から職場の障がい者の声に耳を傾けているでしょうか。
雇用して間もない方はお互いを知る時間が必要ですのでしっかりと今のうちからコミュニケーションを図ってほしいと思うのですが、雇用して〇年以上という障がい者の声を聞いていなかったり孤立した状態のまま放置になってしまっている企業が多いことに驚きます。長く働いている従業員だからこそ会社のことを知った上で感じていることや意見を持っているはずです。また、企業側が安心してしまって放置状態にしている職場もよく見られます。

「何も言ってこないから大丈夫だろう」と思っていると色々な不満を抱えていた場合、消火が大変な大爆発が起こってしまうことでしょう。

企業が取るべき対応策

それでは、企業が取るべき対応策を考えた時にどのようなことができるでしょうか。

上記に挙げました「求人の数が多い」「情報の入手が容易」については、手を打つことがありません。両方とも自社が主体となって行動してもどうにかなるものではありません。それよりも「職場への不満」について対処することを考えてください。「職場への不満」に関しては自社が主体となって行動することで解決に向かうことができるからです。

この「職場への不満」として考えられる理由を細分化してみましょう。「待遇(給与・出世)」「自分の障がいへの理解」「人間関係」「仕事内容(単純作業)」「職場環境」など、たくさん挙げられます。しかしながら、「求人の数が多い」「情報の入手が容易」に比べれば、解決することが可能なものばかりです。

「職場への不満」に対処する方法として考えられる最も効果の大きいものは「コミュニケーション不足の解消」だと思っています。
例えば、障がい者だからと言って下記のようなことをしている職場ではありませんか?

  • 参加しないと思って飲み会の席に呼ばない。
  • 日常会話や挨拶を交わさない。
  • 休憩の時など、邪魔になると思い声を掛けない。
  • 良かれと思い単純な仕事ばかり頼んでいる。
  • 障がい者だからと言って特別扱いしないという理由で配慮や理解をしていない。

これを機会に一度立ち止まって、自社の障がい者従業員のことを考えてみてください。それは、人事担当者だけが取り組むのではなく、組織として考える時間を作ってみてください。

ABOUTこの記事をかいた人

上前 忠司 (日本障害者雇用総合研究所代表)

[障害者雇用コンサルタント]
雇用義務のある企業向けに障害者雇用サポートを提供し、障害者の雇用定着に必要な環境整備・人事向け採用コーディネート・助成金相談、また障害者人材を活かした事業に関するアドバイスを実施。障害者雇用メリットの最大化を提案。その他、船井総研とコラボした勉強会・見学会の開催や助成金講座の講師やコラム執筆など、障害者雇用の普及に精力的に取り組んでいる。

▼アドバイス実施先(一部抜粋)
・opzt株式会社・川崎重工業株式会社・株式会社神戸製鋼所・沢井製薬株式会社・株式会社セイデン・日本開発株式会社・日本電産株式会社・株式会社ティーエルエス・パナソニック株式会社・大阪富士工業株式会社・株式会社船井総合研究所・株式会社リビングプラットフォーム