うまくいかない障害者雇用〜5つの処方箋〜

障害者雇用は、いつもうまくいくとは限りません。
それは、障がいのない社員を採用し、育成していくときも同じかと思いますが…。

今回は、うまくいかない時に使える「5つの処方箋」と題して、書いてみたいと思います。

1、毎日の挨拶を大切にする

ありきたりなことですが、「挨拶」はコミュニケーションを取る上で最も身近なことであり、人間関係をよりよくしていくために一番簡単な方法です。
職場内の全員が、障がいのある人にもそうでない人にも毎日明るく挨拶することで、職場の雰囲気が悪くなることはありません。
挨拶を交わすことで、相手の体調、表情、声のトーンなどを軽く感じることもできますし、元気よく大きな声で挨拶する人がいれば、職場は次第に明るくなっていくものです。
障害者雇用をうまく進める前に、職場内の挨拶を活性化することは、そんなに悪い話ではないように思います。

2、個別面談は定期的に

やはり、障がいのある本人の話は、個別的に、定期的に、実施して聞き取ったほうがよいかと思います。
定期的にやると、だんだん話題がなくなりそうにも思いますが、

    「仕事で困ったことはないか?」

  • 「今やっている仕事で一番うまくいっていることはなにか?」
  • 「難しい仕事はなにか?」
  • 「体調はどうか?(睡眠や食事なども)」
  • 「目標を意識して取り組めているか?」
  • 「今、チャレンジしたいことはあるか?」
  • 「上司や職場に対して、聞いてほしいことや話しておきたいことは?」

などなど、
定期的にいつも同じ質問をすることでもよいかと思います。
面談は、「個別」というところが何よりも大事で、個別的に対応してもらっていることが本人にとっても安心感を得やすいですし、自分のことを考えてくれているという信頼感にもつながります
以前のコラム「部下との定期面談が人材育成の秘訣」でも定期面談について触れています。

部下との定期面談が人材育成の秘訣

2018.01.24
ご参考までに。

3、視覚的な指示(見える化)


最近増加傾向にある、精神障がい者や発達障がい者は「見えない障がい」があると言われています。
障がい(苦手なこと)が見えないわけですから、指示したことや職場内のルールなどがきちんと伝わっているかどうかが確認しづらく、障がいがどんなことに影響しているかをチェックすることすら難しいわけです。
「見える化」って、私たちの普段の生活や仕事の場面でも無意識のうちに活用していることは多く、

  • カレンダーに予定を表記する(googleなどで他者との共有に活用)
  • 外勤の際は、社内のホワイトボードを記載する
  • ミーティングでブレストするときは付箋を活用する
  • ロードマップやガントチャートの活用で見える化
  • 買い物リストを持ってスーパーへ行く
  • 電車やバスに乗るときに時刻表や接近情報を確認する
  • 様々な道路標識や交通信号に従って移動する

などなど、
見える化は世の中の至る所で機能していて、いちいち口頭で説明しなくても「パッと見て理解できる」ってことが見える化の最大のメリットです。
見える化によって、誰にでも分かりやすい職場になれば、指示のズレ、コミュニケーションのズレはかなり軽減され、働きやすくなると思います。
業務マニュアル、社内ルール、注意喚起、予定表、計画表、目標など、できることから「分かりやすい見える化」に取り組んでみてはいかがでしょうか。

4、業務日誌の活用

日々の仕事の状況は、できるだけリアルタイムで知っておくことが大切です。
精神障がいのある人なら、気持ちの浮き沈みなど小さな波を早めにキャッチしておくことで、大きく崩すことなく働くことが可能であり、日々の様子はお互い負担のない程度に把握しておいたほうがよいと思います。
私の職場にいる障がいのあるスタッフには、毎日の以下の業務日誌をメールで送ってきてもらっています。

  • 本日の体調
  • 業務内容と自己評価
  • よかった点
  • 反省点
  • その他

メールは、上記の5項目の内容にしていて、本人は退勤10分前に入力して送信しているようです。
毎日のメールを見ていると、大きく変化がなかったことを知るだけでも収穫ですし、余力が出てきたとか、体調が安定してきたということが把握できれば、新たな仕事にチャレンジすることを定期面談で提案することもでき、リアルタイムで軽く様子が知れているのは悪くないと、個人的には感じています。
業務日誌を通じたリアルタイムでの状況確認は、定期面談や職場内において活用しやすく、非対面で情報を得ているからこそ対面コミュニケーションが活性化され、業務日誌はよい効果をもたらすんだと思います。

5、プロに相談する


障害者雇用のプロは、私たちのような支援機関です。
障がいの特性、対応方法、家族や医療との連携、法制度のことなどにおいて様々な情報を持っているため、相談してみる価値はあるかと思います。
支援機関との繋がりが全くない場合は、最寄りのハローワークや労働局、市役所などに問い合わせることでもよいかと思います。
支援機関は、きっと上記以外の処方箋をたくさん持っていると思います。

5つの処方箋は、以上となります。

ざっくり書いていますが、障害者雇用がうまくいっていないのなら、ひとつでも実施されることをお勧めしたいですし、「やらずに後悔」よりも「やって後悔」のほうが次の採用と成功にもつながるように思います。

障害者雇用に限らず、採用・人材育成・雇用管理は、一筋縄ではいかないものです。
根気よく取り組んでいきたいものですね。

ABOUTこの記事をかいた人

▼プロフィール:
京都生まれ京都育ち。児童福祉の専門学校を卒業後、長野市にある社会福祉法人森と木で障害のある人の就労支援(企業就労の支援、飲食店での支援と運営管理等)に限らず、生活面(グループホーム、ガイドヘルプ等)の支援、学齢期のお子さんの支援などに従事。2013年に帰阪し、自閉症・発達障害の方を対象に企業就労に向けたトレーニングをする2つの事業所ジョブジョイントおおさか(就労移行支援事業・自立訓練事業を大阪市と高槻市で実施運営)にて勤務。2014年より所長(現職)。また、発達障害のある大学生に向けた就活支援プログラム(働くチカラPROJECT)の運営にも力を入れており、2016年より大阪にある大学2校のコンサルタントも務めている。

▼主な資格:
社会福祉士、保育士、訪問型職場適応援助者(ジョブコーチ)

▼主な略歴:
長野市地域自立支援協議会 就労支援部会 部会長(2011〜2013)淀川区地域自立支援協議会 就労支援部会 副部会長(2015〜)高槻市地域自立支援協議会 進路・就労ワーキング 委員(2016〜)日本職業リハビリテーション学会 近畿ブロック代表理事(2017〜)NPO法人ジョブコーチネットワーク、NPO法人自閉症eサービスが主催する研修・セミナー等での講師・トレーナー・コンサルタント等(2013〜)