前回は、これまでの「障がい者支援ビジネス」についての状況をお話ししました。
本日は、「障がい者支援ビジネス」のこれからについてお話しすることで、必要性に気づいていただきたいと思います。
これまでの障がい者支援では、選択肢となる進路に幅が持たせることが困難なために、結果として進む道が限られたものとなっていました。
現在では、就労系の支援先となる福祉事業であれば、就労継続支援A型事業所・B型事業所や就労移行支援事業所という形態があるのですが、従来は社会福祉法人などに限られた事業許可が、株式会社などの一般企業にも開設の門戸が開かれたおかげで、参入する事業所数が格段に伸びることになりました。
選択肢が多くなることで「自分のやりたいこと」や「得意なこと」を伸ばしてくれる事業所を探すことができるようになり、障がい者にとっても選択肢ある未来を持つことができるようになりました。
また、障がい者の雇用数に関して言えば、厚生労働省から発表される数字からも見て分かるように、年々増加傾向にあります。
特に、平成28年度発表の数字では、精神障がい者の雇用数は全体の割合から見ても10%程度ですが、雇用の伸び率は身体障がい者(前年比約2%)や知的障がい者(前年比約7%)に比べても高い水準(前年比約20%)となっています。
障害者雇用を進める企業に対する支援先からのアプローチの数が増えてきているからだと推測します。
従来からある考え方として、障がい者を対象としたビジネスにおいて「障がい者からお金をもらう」という行為は、敬遠されがちな印象を持ちます。「弱者からお金を取るなんて!」といったところなのでしょうか。(そもそも、障がい者は自分のことを弱者だなんて思っていないんですけど)
世の中を見た時に商品やサービスに対して対価となるお金が支払われないとどのようになるでしょうか。障がい者がコンビニでジュースを買ってもお金を払わなくても許される世の中で良いのでしょうか。それこそ、逆差別となって障がいを持つ方たちが生きづらくなってしまいます。
これまで、障がい者が受けられる支援サービスは選択肢が限られた範囲でしかありませんでした。それが、一般企業の参入により選択肢の幅が増え自分にとってより良い支援サービスを受けられるようになりました。
例えば、それら支援サービスの中には、今よりももっと自分の欲求を満たしてくれるものがありました。「就職に有利となる高度なスキルを身に付けることができるサービス」「自分の障がいについて詳しく知ることができるサービス」「今よりも日常生活が自由になるサービス」などなど。こういった支援サービスを選べる時代になってきたのです。但し、それらより良い支援サービスを受けるためには、別途費用が掛かることになります。費用は掛かるがより良いサービスを選ぶか、生活に支障のないこれまでの支援サービスを選ぶかは本人次第です。
考えてみてください。「別途お金は掛かるが、自分が必要とする支援サービスを選択することができる時代」と「今までのように特別なお金は掛からないが、自分にとって必要かどうか分からない支援サービスしか選択できない時代」のどちらの時代が幸せでしょうか。判断ができない知的障がい者の場合はどうするんだ。というご意見があっても、代わりに判断する親御さんや支援者の方を考えてみれば選択肢の幅ある時代の方が良い時代だと思いませんか。
過去を振り返ってみてください。消費者にとって選択のある時代と選択のない時代が、自分たちの生活にとってより良いものを与えてくれるのはどちらなのか。
例えば、国内での通信事業すべてを日本電信電話公社が取り仕切っていた時代がありました。その後、その会社は民営化となりNTTが生まれました。一般企業の通信事業への参入が自由化され、私たちは選択肢のある時代を受け入れて生きています。
消費者にとって望ましいサービスを選べる時代。「選択できる」というのは、他者が自分をコントロールするのではなく、自分でコントロールができることを意味します。自分にとってより良いサービスを受けられる時代だから、世の中を前進させることができると思います。
それならば、障がいを持つ方たちにとっても選択肢のある時代を生きてもらえばいいのではないでしょうか。
企業が本気になって障がい者支援のビジネスを進めていけば、もっといいサービスが生まれるはずです。
これからの「障がい者支援ビジネス」の形は、それぞれの専門分野や専門領域の方たちが存在しながら、連携を図ることで新しい支援を構築することが望ましいと考えています。
障がい者本人とご家族を中心として、教育の場面では、「一般の学校」「大学」「支援学校」「児童福祉サービス」など。就労の場面では、「企業」「就労系福祉事業所」「訓練校」「職業センター」など。生活の場面では、「通所施設」「入所施設」「グループホーム」など。行政や公共の場面であれば、「各地域の労働局」「医療施設」「役所の福祉課」など。
現状は、それぞれのグループでしっかりと連携を取れているのはごく一部であって、ほとんどは独自や小さなコミュニティでつながっています。
この部分をさらに強化したり、新しいつながりを生み出すビジネスが出てくれば、障がい者がより生きやすい世の中に向かっていくと感じます。