【Q&A】雇用後のミスマッチを防ぐためのポイントを解説【後編】

前回の続き。

【Q】

いつもお世話になっております。

当社も障がい者の雇用義務のある規模の会社です。法定雇用率はギリギリの雇用数でクリアしている状況です。最近は精神障がい者や発達障がい者の採用数も増え、テレワークでの雇用を始めるなど、障がい者の方々には十分な戦力として勤務してもらっています。
求人の際には以前から協力をしてもらっている2〜3ヶ所の就労移行支援事業所から当社の求人を希望する利用者の方の中から採用を進めるようにしています。
採用した障がい者の中には、雇用後数ヶ月から1年以内に退職する方がいます。理由は様々だったりするのですが、なるべく離職者を無くしていきたいと考えています。

今後、障がい者の採用を進める上で離職率を下げるために企業が配慮・注意しておくポイントがあれば教えてください。
よろしくお願いします。

《輸入メーカー、従業員数400名、人事課長》

【A】

◯任せたい業務ができない


採用を決め、部署に配属してから「任せたい業務ができない」といった相談をお聞きすることがあります。受け入れた部署にとっては困った状況です。業務のマッチングを最適化する方法のひとつとして、『企業実習』をご紹介します。障がい者雇用の先進企業や特例子会社はもちろん、最近になって本格的に障がい者の採用に取り組み始めた企業がこの『企業実習』を取り入れることでミスマッチが減り、障がい者の受け入れをスムーズに進めることができます。

もし「任せたい業務ができない」という状況が「任せようと思っていたのにできなかった」であれば『企業実習』によって問題の多くを解消することができます。『企業実習』では障がい者を雇用した時に任せたい業務を準備し、自社への就職を希望する障がい者が実際にその業務を試してみることで本人との適正を図ることができます。そうすることで雇用してからのミスマッチを軽減できるだけではなく、障がい者が求める配慮についても職場でどのように提供すればいいのかを雇用前に確認・実施することができます。

雇用前に障がい者本人のことが色々と把握できる機会の活用がミスマッチを大きく軽減させます。

◯主体性を求められない

企業がどのような人材を求めているのかを明確に示すことが重要です。
障がい者の求人・採用の場面では、法定雇用率を意識し過ぎるあまり、障がいの「等級」「特性」に強く焦点を当ててしまうことが多くなります。その結果、企業が従業員に求める役割や責任を理解・実行できる人材でなかったことが雇用後に見つかると評価や成長に大きく影響することが考えられます。

こういったことを事前に防ぐためには面接のような本人と直接コミュニケーションを図る場面で雇用条件や待遇に加えて、企業として「求める人物像」についてもしっかりと伝えるようにします。人によっては厳しい条件と捉えてしまうため、求人にエントリーする数に影響することもありますが、企業として人材に求める条件や資質は、組織を成長させるだけではなく与えられた役割を通じて人材自身も成長することが求められます。そのような組織は社会の変化にも対応することができる力を身につけ、魅力のある企業へと発展させることができると考えます。

◯体調が安定しない


誰もが健康な状態を維持しながら働きたいと考えます。もちろん、就職を目指す障がい者も健康で安心感を得た状態で働くことができる職場を望んでいます。
しかしながら、生活を送る中で様々なことが原因で心身が健康な状態でなくなることが起こってしまいます。障がい者の場合は掛かりつけの医療機関や普段からサポートしてもらう支援機関により、大きく体調を崩さないための予防策を講じます。また悪くなった時にも自身にとって適切な対処をアドバイスしてもらえる「支え」があるとその後の復調にも良い影響が生まれやすいです。
そのため、雇用前には本人をサポートする体制が整っている人材なのかを確認しておくことが職場の定着には重要なポイントとなってきます。

また、障がい者本人が自身の健康についてしっかりとした意識を向けているのかも非常に大きなポイントになります。当然のことですが、体調は崩す前の予防が大切です。普段の生活から心身の健康を維持するために必要な工夫を取り入れている人材であれば安心して採用できると考えます。
例えば、1週間を通して生活リズムを同じにしている、週末の外出は土日のどちらかにして残りは心身の休養に充てるなど、自身の体調についての特性を理解することで大きく崩さないために気をつけることを日常生活で取り入れています。

他にも健康な状態を維持するために周囲に対して理解と協力を分かりやすく自分から求められる人材にも安心を受けます。中には伝達が苦手な方もいる場合は、支援機関の担当者を通じて会社側へ連携することで体調を崩さないような配慮を受けることができます。

ABOUTこの記事をかいた人

[障害者雇用コンサルタント]
雇用義務のある企業向けに障害者雇用サポートを提供し、障害者の雇用定着に必要な環境整備・人事向け採用コーディネート・助成金相談、また障害者人材を活かした事業に関するアドバイスを実施。障害者雇用メリットの最大化を提案。その他、船井総研とコラボした勉強会・見学会の開催や助成金講座の講師やコラム執筆など、障害者雇用の普及に精力的に取り組んでいる。

▼アドバイス実施先(一部抜粋)
・opzt株式会社・川崎重工業株式会社・株式会社神戸製鋼所・沢井製薬株式会社・株式会社セイデン・日本開発株式会社・日本電産株式会社・株式会社ティーエルエス・パナソニック株式会社・大阪富士工業株式会社・株式会社船井総合研究所・株式会社リビングプラットフォーム