障がい者の雇用での『業務切り出し』のポイントは『思考をストップ』です ①

企業の人事担当者とお話をする機会の多いこの仕事では、「法律改正」「法定雇用率」「助成金」など、障がい者雇用に関するご相談の他にも、一般の従業員に関する労務関連のお話を聞くことも少なくありません。そうすると、この数年で会社での「働き方」が大きく変化したことを感じます。

一昔前までであれば、「月の残業が〇〇時間以上」「休日も出勤」「有給休暇未使用」なんてことが当たり前のように存在していたのが、今では各企業が努力して従来からの働き方を見直し、従業員の仕事以外の時間を有効活用してもらうことを目指しています。
当然、このような取り組みは大企業を中心として進められています。これは、就職を目指す新卒性たちからのエントリーがひとりでも多ければ、自社にとって優秀な人材確保につながるという考えもあるからなのでしょう。中小企業よりも求職者は集まりやすいと思いますが、大手企業の人事担当者ほど求人活動に努力を重ねているように見えます。

求職者から見た「魅力ある企業」とは何でしょう。
現代の就職とは「ガムシャラに働いて売り上げを伸ばし成績を上げて出世するぞ!」という時代から大きく舵を切ることになりました。それは、以前までの大手企業に見られたネームバリューで一定数の人を集めるという時代ではなくなってきました。この点は、一般の求人だけではなく障がい者の求人においても見られる現象だと思います。
ネームバリューで障がい者からのエントリーを得られなくなるとしたら、どういった点を見直すことが必要なのでしょうか。例えば、「納付金(罰金)を支払っている」「障がい者に対する理解不足」「離職者が多い」「雇用=義務」といった企業に今後もエントリーする人材が集まる時代ではなくなってきました。

また、「社内での障がい者の役割」という点から見た時、これから障がい者の雇用定着を実現させる上でとても重要になってきます。特に『業務切り出し』は障がい者の求人活動から雇用の定着にいたるまでの大きな影響を与えます

今回は重要でありながら障がい者雇用の際に人事担当者が頭を悩ませるひとつとして挙げられる『業務切り出し』に関するお話をしたいと思います。

企業の『業務切り出し』の悩み

障がい者の雇用を進める上で難しいのが『業務切り出し』です。
企業の声として、

  • 仕事の切り出し方が分からない
  • どのような仕事をしてもらえばいいのか分からない
  • 仕事を任せることに不安がある
  • 障がいの特性に合った仕事を見つけられない

といった内容をよく聞きます。

障がい者の雇用定着のためには「義務」感ではなく「理解」が大切だということは周知されていることだと思いますが、単に「下肢に障がいがあるから移動のある仕事はやめておこう」「知的障がい者だからPC業務は無理だろう」といった判断をするのではなく、個々の特徴や強み・弱みを把握してから役割を決めるようにしていくことが大事です。

あくまでも参考ということで各障がい特性ごとの働く場面で見た良い面(メリット)と悪い面(デメリット)を見てみましょう。

「身体障がい者」

「身体障がい者」・・・オールラウンドプレーヤー、どちらかというとデスクワーク優先

良い面 悪い面

・特性の理解が容易
・可能な業務=健常者
・仕事の選択肢が多い
・意思疎通が図りやすい
・配慮が分かりやすい

・配慮に設備コストが掛かる
・障がいに目が行きがち
・隠れた障がいを発見しにくい
・売手市場(競争率が高い)
・年齢層が高い

主な業務

・事務系業務:管理部門、書類作成、PC操作、デザイン など
・工場内業務:組み立て、検品(聴覚)

「精神障がい者」

「精神障がい者」・・・個々の状態によるが、全障がいの中で業務の幅が最も広い

良い面 悪い面

・真面目
・責任感が強い
・設備面での配慮は少ない
・人材が豊富
・年齢層が若い

・特性理解が難しい
・症状が不安定
・周囲のサポート(理解)が不可欠
・支援機関との連携が必要
・個人差が大きい

主な業務

・補助業務:システム、設計 など
・工場内業務:組み立て、検品
・清掃・ベッドメイキング・リネン業務

上記に挙げた特徴は参考にしていただきつつ目安程度にしてほしいと思っています。
それは、人の性格がそれぞれで違うのと同様に、障がいの特性は同じであっても状態やできることも人によって様々であると認識してもらうことで障がい者雇用を企業内で根付かせることができると考えるからです。

次回は、『業務切り出し』が難しいと感じさせる邪魔な思考を取り払う具体的な方法をお話ししたいと思います。

ABOUTこの記事をかいた人

上前 忠司 (日本障害者雇用総合研究所代表)

[障害者雇用コンサルタント]
雇用義務のある企業向けに障害者雇用サポートを提供し、障害者の雇用定着に必要な環境整備・人事向け採用コーディネート・助成金相談、また障害者人材を活かした事業に関するアドバイスを実施。障害者雇用メリットの最大化を提案。その他、船井総研とコラボした勉強会・見学会の開催や助成金講座の講師やコラム執筆など、障害者雇用の普及に精力的に取り組んでいる。

▼アドバイス実施先(一部抜粋)
・opzt株式会社・川崎重工業株式会社・株式会社神戸製鋼所・沢井製薬株式会社・株式会社セイデン・日本開発株式会社・日本電産株式会社・株式会社ティーエルエス・パナソニック株式会社・大阪富士工業株式会社・株式会社船井総合研究所・株式会社リビングプラットフォーム