企業の人事担当者とお話をする機会の多いこの仕事では、「法律改正」「法定雇用率」「助成金」など、障害者雇用に関するご相談の他にも、一般の従業員に関する労務関連のお話を聞くことも少なくありません。そうすると、この数年で会社での「働き方」が大きく変化したことを感じます。
一昔前までであれば、「月の残業が〇〇時間以上」「休日も出勤」「有給休暇未使用」なんてことが当たり前のように存在していたのが、今では各企業が努力して従来からの働き方を見直し、従業員の仕事以外の時間を有効活用してもらうことを目指しています。
当然、このような取り組みは大企業を中心として進められています。これは、就職を目指す新卒性たちからのエントリーがひとりでも多ければ、自社にとって優秀な人材確保につながるという考えもあるからなのでしょう。中小企業よりも求職者は集まりやすいと思いますが、大手企業の人事担当者ほど求人活動に努力を重ねているように見えます。
求職者から見た「魅力ある企業」とは何でしょう。
現代の就職とは「ガムシャラに働いて売り上げを伸ばし成績を上げて出世するぞ!」という時代から大きく舵を切ることになりました。それは、以前までの大手企業に見られたネームバリューで一定数の人を集めるという時代ではなくなってきました。この点は、一般の求人だけではなく障がい者の求人においても見られる現象だと思います。
ネームバリューで障がい者からのエントリーを得られなくなるとしたら、どういった点を見直すことが必要なのでしょうか。例えば、「納付金(罰金)を支払っている」「障がい者に対する理解不足」「離職者が多い」「雇用=義務」といった企業に今後もエントリーする人材が集まる時代ではなくなってきました。
また、「社内での障がい者の役割」という点から見た時、これから障がい者の雇用定着を実現させる上でとても重要になってきます。特に『業務切り出し』は障がい者の求人活動から雇用の定着にいたるまでの大きな影響を与えます。
今回は重要でありながら障害者雇用の際に人事担当者が頭を悩ませるひとつとして挙げられる『業務切り出し』に関するお話をしたいと思います。
企業の『業務切り出し』の悩み
障がい者の雇用を進める上で難しいのが『業務切り出し』です。
企業の声として、
- 仕事の切り出し方が分からない
- どのような仕事をしてもらえばいいのか分からない
- 仕事を任せることに不安がある
- 障がいの特性に合った仕事を見つけられない
といった内容をよく聞きます。
障がい者の雇用定着のためには「義務」感ではなく「理解」が大切だということは周知されていることだと思いますが、単に「下肢に障がいがあるから移動のある仕事はやめておこう」「知的障がい者だからPC業務は無理だろう」といった判断をするのではなく、個々の特徴や強み・弱みを把握してから役割を決めるようにしていくことが大事です。
あくまでも参考ということで各障がい特性ごとの働く場面で見た良い面(メリット)と悪い面(デメリット)を見てみましょう。
「身体障がい者」
「身体障がい者」・・・オールラウンドプレーヤー、どちらかというとデスクワーク優先
良い面 | 悪い面 |
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・特性の理解が容易 |
・配慮に設備コストが掛かる |
主な業務 |
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・事務系業務:管理部門、書類作成、PC操作、デザイン など |
「精神障がい者」
「精神障がい者」・・・個々の状態によるが、全障がいの中で業務の幅が最も広い
良い面 | 悪い面 |
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・真面目 |
・特性理解が難しい |
主な業務 |
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・補助業務:システム、設計 など |
上記に挙げた特徴は参考にしていただきつつ目安程度にしてほしいと思っています。
それは、人の性格がそれぞれで違うのと同様に、障がいの特性は同じであっても状態やできることも人によって様々であると認識してもらうことで障害者雇用を企業内で根付かせることができると考えるからです。
次回は、『業務切り出し』が難しいと感じさせる邪魔な思考を取り払う具体的な方法をお話ししたいと思います。