今回はミルマガジンにご相談のあった2件の質問にお答えします。
【Q.雇用している障がい者の仕事面以外のサポートに関する質問】
当社では約10年前から障がい者の雇用に取り組んできました。個々の障がい特性に合った仕事に就いてもらっていて、障がい者雇用に取り組み始めた当初からはたらいている人もいます。
これまでは仕事で成果を上げてもらうためのサポートや工夫を各職場の担当者が中心になって支援してくれていました。今後、障がい者が高齢になったりご両親がいなくなってからの生活を考えた時に会社としてどこまでサポートをすればいいのか考えるようになりました。
実際、企業には職場以外でのサポートについては義務ではありませんが、他の企業ではどのようにされているのか参考に知りたいと思います。
よろしくお願いします。
《製造メーカー、従業員数約200名、人事担当者》
【A.雇用している障がい者の仕事面以外のサポートに関する回答】
障がい者雇用に携わる立場として、以前に比べ今回のご相談者のように障がい者の私生活面のことを考えている企業が少しずつ増えてきていると感じます。
もちろん法律により企業が雇用する障がい者に対しての私生活面への支援が義務化されているわけではありませんのであくまでも任意になりますが、一部の障がい者とそのご家族にとっては安心した生活を送ることができると思います。
私生活面の支援としては、家族とは離れて独立した生活を送る、給与管理・貯蓄・保険といった金銭面、高齢化や状態の悪化による医療・介護に関する支援など様々です。
主には特例子会社がこれらのような支援についてのアドバイスや勉強会を当事者だけではなくご家族も参加できる形式として定期的に実施しています。また、障がい者雇用に積極的な一部の中小企業でもこういった勉強会を導入していると聞きます。
サポートの導入にあたり、働く障がい者の特性、年齢、家族構成なども考慮した上でどこまでの範囲をサポートするのかを組織として検討するところから始めてください。企業がどこまで介入するかは最初に決めておく方が良いでしょう。親御さんがいる間に勉強会を実施し、なるべく自分の力で将来のことを考えた行動をとっておいてもらうことが良いのではと考えます。
当事者にとって困っている内容に応じた相談窓口や福祉サービスがあることを勉強会で伝えていくところから始めてみてはどうでしょうか。下記に一例を掲載します。
※下記の窓口は全国に設置されていますが、まずは各自治体にある福祉担当窓口へ問合せてください。
- 基幹相談支援センター
障がい者が希望する支援に関連した役割(支援体制の強化、地域移行や定着、虐待防止など)を果たす総合窓口。
- 特定相談支援事業所
障がい者が日常生活を送るために受ける福祉サービスについて、活用するために必要な利用計画の作成を支援。
- 住宅入居等支援事業(居住サポート事業)
ご両親などの保証人がいないといった理由で賃貸住宅への入居が困難な障がい者に対して、必要な申請・調整、家主への説明などの支援を行う地域生活支援事業のひとつ。
仕事とプライベートの両立を考えた場合、豊かな社会生活を送るためには余暇の過ごし方を身につけることも大切だと感じます。
ある会社では、卓球部やボーリング部といったスポーツや英会話教室などを設け、仕事以外の生活の充実を図っているところもあります。また、障がい者の中には偏った食生活を送っているために栄養面や健康への影響を考えて、昼食を提供する会社もあります。
【参考:過去の取材先企業】
【Q.仕事の切り出しのポイントに関する質問】
障がい者の雇用義務がある企業としてようやく本格的な採用を始めることになりました。現在、ハローワークへの相談から始まり、地域の障がい者支援事業所からのサポートを受けながら求人票の仕事内容を希望する求職者を数名実習として受け入れることが決まりました。
実習に来ていただいた時の切り出す仕事について、どのような考え方で進めれば良いでしょうか。受け入れを想定している部署にお願いをする時のポイントなどがあれば教えてください。
よろしくお願いします。
《医療品商社、従業員数約150名、人事担当者》
【A.仕事の切り出しのポイントに関する回答】
ミルマガジンのコラムでは雇用する障がい者に担当してもらう業務の切り出しについて取り上げたことがあります。それだけ、障がい者の雇用を進めるプロセスの中で直面する壁のひとつだと認識しています。
改めて業務の切り出しについてご紹介します。
前提として「障がい者に担当してもらう仕事」という考えを一旦傍に置いておいてください。
「障がい者だから無理だと思う」「障がい者には担当させられない」「障がい者に適した仕事が思いつかない」といった理由が先に頭の中を占領してしまい、結局は仕事を切り出すことができません。人には誰しも強み弱みがあるので、障がいの特性に関係なく担当してほしい業務に該当する人材を採用するという視点を忘れないようにしてください。
ポイントとしては、
- 労働力が不足しているため特定の部署や人材に負担となっている業務
- 切り出すことで別の仕事に取り掛かることができる業務
といった点に注意して社内にアナウンスしてください。
いきなり、フルタイムの仕事量を切り出せなくても構いません。何度かの実習を経ながら、切り出した業務が障がい者にマッチしたものなのか、受け入れ部署に過度な負担になっていないか、仕事の時間配分に問題はないかなど、を見極めながら徐々に担当してもらう業務を整えていけば問題ありません。
また、「○◯の業務ができるのなら△△の業務も試してもらおう」というように実習の中から新たに切り出せる業務のヒントが見つかることもあります。
最初は色々なことを考えすぎてしまい、切り出せる業務も限定的になりがちですが、実習を通して実際に仕事に関わる障がい者の姿を目にすることで大きな可能性を感じることができます。
支援していただく福祉事業所の担当者とコミュニケーションを図りながら、少しずつ理解を深めながら素晴らしい雇用を目指してください。