書籍:「奇跡の会社」


仕事柄、障がい者のはたらく職場について意見交換、議論、考える場面を多く持つことがあります。障がいのある方のことを“障がい者”とひと言で表現されることがあります。人の顔貌や性格に違いがあるのと同様に障がいについてもそれぞれの障がい者には違いがあります。
もう少し丁寧に表現をするならば、障がい由来の特性として共通する部分は限定的で、概ねのところは障がい者一人ひとりが周囲に対して求める理解や配慮には違いがあるということです。
職場を見たときに組織がこの部分について理解しているかどうかは、障がい者を含めた多様性に関する受容度や個々にある能力の活用に焦点を当てているのかという点につながってくると考えます。

これまで、企業は採用する従業員についても一括りとして捉える傾向が強く、企業が雇用しやすい人材・管理しやすい方法を受け入れる人材を採用してきました。時代が変わり、少子高齢化に伴い限られた労働力の確保が多くの企業にとって共通する課題となりました。
個々の従業員の特性やそれに基づいたはたらく上での心理的安全性にあまり目を向けてこなかったのですが、大企業を中心として職場の環境作りに理解を示し始めていると感じます。特に障がいのある方のように“できる領域”と“できない領域”の差が大きかったり、周囲(あるいは本人も含めた)による特性理解のもとで能力が発揮できる職場環境の構築は貴重な人材リソースを最大限に活用するためには不可欠な要素だと考えます。

今回ミルマガジンでは、様々な特性や背景のある障がい者を雇用する一方で廃棄物処理施設の運営・管理が業界トップクラスの業績を上げ続けている株式会社障がい者つくし更生会の専務取締役 那波和夫氏の著書「奇跡の会社」をご紹介いたします。

【参考】

雇用企業インタビュー:株式会社障 がい者つくし更生会

2018.07.17


株式会社障がい者つくし更生会は、福岡県春日市と大野城市から廃棄物処理施設である「春日大野城リサイクルプラザ」の運営・管理業務を受託し、両市にある一般家庭から排出される廃棄物の分別再処理を行なっています。事業の中心となるのが廃棄物(いわゆるゴミ)を取り扱っているという点が一般的な企業と比較して特殊な事業であることが分かります。
環境問題が注目されている昨今の時代、ゴミの分別処理には細心の注意が求められる一方、危険とも隣り合わせの仕事が少なくありません。例えば、カセットコンロで使用されるガスボンベの分別を間違えると大きな事故の原因となります。また、銅やプラのようなリサイクルとして再利用できるものに関する細やかな分別により、環境保全に大きく貢献した結果、全国でもトップクラスの成果を上げることができています。

また、同社に在籍する役員・従業員39名のうち33名が障がい者にも関わらず廃棄物処理業において全国トップクラスの成果を挙げているのです。
中には「勤務している障がい者の多くが身体障がい者や軽度障がい者なのでは?」と思われるかもしれませんが、身体障がい者をはじめ知的障がい者や精神障がい者の方たちも働いています。そのような組織ですから、企業や教育関係者・支援機関などから毎年多くの職場見学の問い合わせが入ってきます

様々な障がい特性のある人材が多くはたらく会社ですから、個々に求める配慮や関わり方にも違いが生まれます。それにも関わらず各自の特性を強みとして業務で発揮できるような配慮を実施、尚且つ事業で実績を上げて企業価値を高めることができています。
理由は、人材を一括りとして見るのではなく、一人ひとりに目を向けつつ各自の「困っていること」「強みが発揮できる方法」を本人を交えて考え実践していくことの積み重ねが、著者である那波氏が全国で講演を行ったり、組織の研修に招待される理由の表れだと思います。

著書では、同社の設立から多くの苦労と経験により導き出された多様な人材の活用事例のヒントが数多く記されています。




著 書:奇跡の会社
障がい者雇用率100%の株式会社がなぜ業界トップクラスであり続けるのか
躁うつの波と付き合いながら働く方法
著 者:那波 和夫(ななみ・かずお)
株式会社障がい者つくし更生会 専務取締役
福岡県生まれ。1988年大学卒業後、環境保全車両等の製造・販売会社に入社、営業部を経て1995年株式会社障がい者つくし更生会に入社、春日大野城リサイクルプラザの不燃性一般廃棄物処理施設全般の運転・管理の業務に携わる。2009年に現職に就き、障がい者の理解、共に働ける環境づくりが、会社の価値向上につながることを確信し、経営に取り組んできた。
現在、つくし更生会は健常者と変わらない賃金を実現し、障がい者も高い生産性を上げられることを実証しており、全国から企業・教育者・福祉関係者等多くの視察者が訪れている。
同社は2015年、「日本でいちばん大切にしたい会社大賞」審査委員会特別賞を受賞。ドキュメンタリー番組「“できる”を集めて」(テレビ東京系列)など、多くのメディアで紹介されている。
発行所:株式会社あさ出版
東京都豊島区南池袋2-9-9 第一池袋ホワイトビル6F

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[障害者雇用コンサルタント]
雇用義務のある企業向けに障害者雇用サポートを提供し、障害者の雇用定着に必要な環境整備・人事向け採用コーディネート・助成金相談、また障害者人材を活かした事業に関するアドバイスを実施。障害者雇用メリットの最大化を提案。その他、船井総研とコラボした勉強会・見学会の開催や助成金講座の講師やコラム執筆など、障害者雇用の普及に精力的に取り組んでいる。

▼アドバイス実施先(一部抜粋)
・opzt株式会社・川崎重工業株式会社・株式会社神戸製鋼所・沢井製薬株式会社・株式会社セイデン・日本開発株式会社・日本電産株式会社・株式会社ティーエルエス・パナソニック株式会社・大阪富士工業株式会社・株式会社船井総合研究所・株式会社リビングプラットフォーム