書籍「発達障害の人の会話力がぐんぐん伸びる アイスブレイク&ワークショップ」

今回ご紹介する書籍は「発達障害の人の会話力がぐんぐん伸びる アイスブレイク&ワークショップ
」(講談社)です。

心理的安全性が確保された「ノーリスクでコミュニケーションを試せる場」

この書籍では、全国でコミュニケーションの力を伸ばすワークショップを開催している任意団体「イイトコサガシ」のノウハウが伝えられています。著者はイイトコサガシ代表の冠地情氏で、内容はADHD(注意欠陥多動性障がい)の子供の母でもある漫画家かなしろにゃんこ。氏の漫画で説明されています。

冠地氏は、ADHDとアスペルガー症候群の混合型の発達障がいと診断されています。10代の頃からいじめ・不登校・ひきこもりを経験し、そのつど社会復帰して就職したこともありましたが、転職を重ね結局ひきこもりに戻ってしまいました。発達障がいの診断を受けたのはその頃でした。自らの生きづらさをなんとかしようと、発達障がいの当事者会にも参加しました。
そこで「会話が苦手だけど、誰かと話したがっている」人が発達障がいの人の中にいることに気付きました。そこで、ひきこもりから立ち直る過程で参加した演劇表現ワークショップを体験したことを取り入れて、楽しくコミュニケーションができるワークショップを創りました。

これといった病気や障がいの診断がなくても、コミュニケーションで悩んでいる人は多くいます。特に会話が苦手だと社会経験が不足しがちになり生きづらくなるという悪循環が起こります。被害妄想の強い人がその例です。他人とのトラブルも起きやすいし、どんどん自分の殻に閉じこもってしまいます。ひきこもりになります。
しかしながら実社会では、そうした人々がノーリスクでコミュニケーションを試せる場(タイムリーな言い方で言えば心理的安全性が確保された場所)がないのが現状です。一般の職場でさえもコミュニケーション不全になっていることが多くあります。

イイトコサガシのワークショップは、否定的・批判的発言をせず、参加者が互いに「いいところ」を探しつつ応援しあって進めていきます。「イイトコサガシ」という名前になったのはそのためです。「ゆっくりで大丈夫」と受け入れられ、誰でも変わるきっかけをつかめる場所になるように作られています。

第1章「ワークショップって何だろう」のページ

冠地氏は「ワークショップはその場にいる全員で試行錯誤しながら創りあげるもの。そうやって創りあげていく作業がコミュニケーション力の向上につながる」と述べています。
たとえそれが上手にできなくても「試しただけで大成功」で、できないなりにやってみることを考えて実行することを説いています。

気持ちを見つめるワークショップ

第4章「気持ちを見つめるワークショップ」のページ

イイトコサガシのワークショップに、「イイトコドリスト」があります。

① まずは、自分にとって心地よい人間関係をどんどん挙げていく。

例)「私が話したい話をニコニコ聞いてほしい」
「告白は必ずうまくいってほしい」
「上下関係にうるさく言わないでほしい」
「肩書に関係なくつきあってくれる」

② 次に、イイトコドリした人間関係の問題点を挙げていく。ある立場から見た一面とは別に、考えられる別の側面を穏やかに指摘する。

例)「〇〇という事情もあるはずだから難しいんじゃないかな?」
「××という見方もあるから無理なこともあるかもね」

③ 感想を話し合う(振り返り)

例)「エゴ丸出しの意見に全部同意だったけれど、問題点を考えることが自分を成長させるきっかけになると思った」

冠地氏は「生きづらさを抱えている人ほど、自分を押さえつけてしまって本音が言えなかったりする」と述べています。このワークショップではそれを行うことができます。そして単なるガス抜きで終わるのではなく、発言したことについて改めて他人と共に考えます。参加者は、エゴと問題点の双方を同時に考えることで、人間関係を多角的にとらえられるようになります。

会話を楽しむワークショップ

第5章 「会話を楽しむワークショップ」のページ

冠地氏は、「人生には会話の土壇場といえる場面がある」と述べます。面接などがそうでしょう。「仲良くなりたいと感じる人と出会ったとき、『本音を伝えるべきか、それともやめるべきか』の選択に直面したとき、自分の発言ひとつで相手への印象が大きく変わりかねないとき。こういうときにどんなやりとりをするかで人生が大きく変わる」と述べています。会話の土壇場に対応するためには、コミュニケーションする力を鍛える必要があります。
イイトコサガシのワークショップでは参加者に多くの会話を経験してもらい、会話のルールを体に刻み込んでもらうことをねらっています。

冠地氏の考える会話の共通ルールは、

  • 相手の話を聞く
  • 話は短く
  • 会話のテーマに合わせる
  • 半分ずつ公平に(どちらか一方だけが話しすぎない)
  • 話しているテーマにそって話す
  • 7~8割の内容を肯定する(ツッコミ、いじり、辛口コメントは避ける)

会話を楽しむワークショップのひとつに、「何でもリレー」があります。

  1. 手を叩いてリズムをとりながら「自分が好きなもの」を言う。言葉に詰まったときは自分の名前を言う
  2. 他の人とは異なるジャンルから言うことを選ぶ(ひとりが「あんぱん」と言うと、次の人もつられてパンの名前を言う、ではなく、自分の頭で考えてものを言う)
  3. リレーが終わったら、リレーで出てきた自分以外の人の「好きなもの」のどれかについて、「〇〇さんは□□が好きなんですね」と質問をする。質問された人は30秒で答える。

ここで大事なのは、自分以外の人の「好きなもの」を聞いて覚えていたかどうか。
人は会話のなかで、自分が好きだといったことを相手が覚えていて、それに興味を持ってくれたら嬉しいと思うもの。「何でもリレー」を通して身に付くのは、「相手の興味のあるものに関心を持つ」という感覚です。

40種のアイスブレイク&ワークショップ

アイスブレイク「YOU!!」を図入りで紹介したページ

本書には、40種類以上のアイスブレイク(「氷を砕く」という意味で、緊張や警戒心をほぐす目的で行うワークショップ)とワークショップが収められています。

  • 相手に合わせる経験を積む「トリプルインパクト」
  • 互いのタイミングを確認しながら「やりとり」をする「エアー手裏剣」
  • 相手と確実にコミュニケートする経験を積む「YOU!!」
  • その場の空気を推測してみる「マジョリティを探せ」ワークショップ動画
  • 自己紹介のパターンが広がる「あかさたなで自己紹介」
  • 気分の切り替えを試してみる「王様の耳はロバの耳」
  • 話の引き出しを増やす「ちょっとでも好きの8テーマ」
  • 会話における反応力を鍛える「聖徳太子」
  • 深い話もできる「イイトコサガシ・ディスカッション」

ワークショップ「イイトコサガシ・ディスカッション」を紹介したページ

今からできるワークショップ

イイトコサガシのワークショップは2009年以来、全国43都道府県で1000回以上開催され、参加者はのべ1万人以上。発達障がいの支援機関、発達障がいの親の会、特別支援学校にとどまらず、こども食堂、行政の職員研修でも行われてきました。テレビや新聞などメディアにも50回以上取り上げられています。
冠地氏の10年以上の地道な活動が実を結び、本書は2019年12月に出版されてから、アマゾンの「学級運営」カテゴリで1位になるなど大きく注目され、2月に重版が決定しました。

本書を参考にしたワークショップは、会議室、ホワイトボード、キッチンタイマー、ネームプレートがあれば、自分達でも実践することができます。
冠地氏は「うまく運営するには、ファシリテーターが参加者から信頼されること、ファシリテーター自身がイイトコサガシを実践することが大切」と述べています。

参加者が失敗したときには、みんなで考えるきっかけができたと思いましょう。「〇〇さん、ありがとうございます! おかげで、このワークショップの難所がわかりましたね。どうすれば乗り越えられるか、全員で考えましょう!」という声かけでプラスに転換するといい、と冠地氏は述べています。
冠地氏はまた、「ワークショップは何かを評価するためのものではない」とし、「きみはここを直したほうがいいと思う」といった“論評”や、「自分は××ができませんでした。すみません」といった“反省”は、ファシリテーターも参加者もNG。自己肯定感が低い人もいるので、いいとこばかり探すくらいでちょうどいい、と述べています。

冠地氏は「現代の日本では、誰もが大なり小なり生きづらさを抱えています。これは国全体の問題です。日本人には今、コミュニケーションを磨く場所が必要なんです」と述べています。

イイトコサガシのコミュニケーション・ワークショップ 開催予定

  • イイトコサガシ出版記念ワークショップ

2/22(土)13:30分~16:30(15分前より受付開始)
川崎市中原市民館 第六会議室
神奈川県川崎市中原区新丸子東3丁目1100番地12
パークシティ武蔵小杉ミッドスカイタワー1・2階
ファシリテーター 冠地情(イイトコサガシ代表)
https://kokucheese.com/event/index/590174/

  • イイトコサガシ初心者向け会話のワークショップ IN  新浦安

2/26(水)14:10-16:50 
浦安市まちづくり活動プラザ 第3多目的室
浦安市入船5-45-1 (JR新浦安駅徒歩8分)
ファシリテーター  ちゃびん(女性) 
主催:イイトコサガシ・千葉
https://kokucheese.com/event/index/584723/

  • 「イイトコサガシ初心者向け会話のワークショップ IN 飯田橋

2/27(木)13:30-16:30(受付13:15から)
東京ボランティア・市民活動センター
東京都新宿区神楽河岸1-1 セントラルプラザ10階
ファシリテーター:ちゃびん(女性)
https://kokucheese.com/event/index/589562/

  • イイトコサガシ 出版記念パーティー

3/8(日)午後
会場:浦安市まちづくり活動プラザ 第1多目的室
浦安市入船5-45-1 (JR新浦安駅徒歩8分)
https://kokucheese.com/event/index/589787/

  • 「イイトコサガシ初心者向け会話のワークショップ IN 飯田橋

3/11(水)13:30-16:30(受付13:15から)
東京ボランティア・市民活動センター
東京都新宿区神楽河岸1-1 セントラルプラザ10階
ファシリテーター:ちゃびん(女性)
https://kokucheese.com/event/index/589563/

  • イイトコサガシ・1時間お試しワークショップ+プチ講演会

3/27(金)13:10-15:00 
浦安市文化会館第2練習室(浦安市猫実1-1-2)
お申込みはメール asupe.db@gmail.com
件名:だんだん2部参加希望
本文:お名前、ハンドルネーム、電話番号
主催:発達凸凹のつどい「だんだん」HP https://ameblo.jp/asupetorisetu/
ファシリテーター:ちゃびん(女性)

  • 「イイトコサガシ初心者向け会話のワークショップ IN 飯田橋

4/8(水)13:30-16:30(受付13:15から)
東京ボランティア・市民活動センター
東京都新宿区神楽河岸1-1 セントラルプラザ10階
ファシリテーター:ちゃびん(女性)
https://kokucheese.com/event/index/589564/

詳細:イイトコサガシのコミュニケーション・ワークショップ

ABOUTこの記事をかいた人

長谷 ゆう

神戸市生まれ、都内在住。翻訳者・ライター。大学在学中に広汎性発達障がいの診断を受ける。発達障がいにより人間関係に困難さを抱えた経験を経て、ダイバーシティ&インクルージョンの進んだ外資系企業で新たな経験をする。障がい者が活躍できる社会を願い、当事者・社会双方に向けたメッセージを発信したり、相互理解とつながりを広める活動を行う。

NPO法人「施無畏」で、障がいのある女性向けフリーペーパー「ココライフ女子部」の制作や、障がい者に関する調査に関わる。ミルマガジンでは海外の障がい者雇用事情をリサーチ・翻訳・分析した記事を執筆する。

ブログ「艶やかに派手やかに」
https://ameblo.jp/adeyakani-hadeyakani
LinkedIn(Yuko Hasegawa)
https://www.linkedin.com/in/yuko-hasegawa-558784142/

▼執筆メディア
障がい・難病の女性向け季刊フリーペーパー「CoCo-Life☆女子部」
https://www.co-co.ne.jp/?page_id=1145
障がい者調査シンクタンク「CoCo-Life調査部」
https://research.co-co.ne.jp/


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