前回に引き続き、インターネット上で簡単に見られる障がい者の採用や雇用に役立つ資料集をご紹介したいと思います。
近年、企業からのご相談で多いのは「発達障がい」に関する内容です。書籍やテレビ・新聞などのメディアにも多く取り上げられていることから、皆さんもよく耳にするワードではないでしょうか。
その割には、「発達障がい」について詳しく知っている方は少数なため、いざ仕事の場面で遭遇した時には対応に頭を悩ませてしまう担当者や当事者が少なくありません。
先ずは、「発達障がい」に関する資料のご紹介をいたします。
1.『大人の発達障がい』
書店などでは「発達障がい」をテーマにした書籍が非常に多くなってきました。「仕事の場面」「解説集」「医療の視点」「自伝的なもの」「家族の手記」などなど。「発達障がい」に興味のある方は是非とも手に取って読んでいただきたいと思います。おそらく、自分も「発達障がい」なのではないだろうかと思うに違いありません。これは、人がそれぞれ持っている“癖”に通じるところがあり、「発達障がい」の場合はその“癖”の度合いが大きかったり、頻度が多かったりするのですが、文章で読んでいると自分も重なって感じてしまうのだと思います。実は、それぐらい「発達障がい」というのは、“未知”なるものではなく、“身近な”存在だと感じるはずです。
書籍に比べると、こちらの資料は情報量としては多くないので、手軽に読むことができるものとなっています。大人の発達障がいを分かりやすく簡潔に解説していますので、入門編としておススメです。
後半部分には、自分やご家族が「発達障がい」を疑っている際に使用してみるチェックリストが付属されています。
『大人の発達障がい』
https://adhd.co.jp/pdf/animation_commentary_adult1.pdf
2.『冊子「虎の巻」シリーズ』【札幌市】
こちらの資料は非常にユニークな作りをしています。「職場」「暮らし」「学校」「子育て」といった場面ごとに「発達障がい」者との接し方を解説しています。
特徴としては、マンガ風に「発達障がい」者への仕事の指示方法やコミュニケーションの取り方を説明しているのですが、これがなかなか良くできた資料になっています。仕事の場面などで「発達障がい」を持つ方と関わったことのある人なら経験したことがあるのではないかというシーンを上手く表現しています。
また、職場だけではなくプライベートや子育てでの場面も想定して作られていますので、広い範囲で理解促進に繋がる内容となっています。
この資料を見て改めて感じたのですが、「発達障がい」の持つ特性によって当事者や周囲が感じる困り感は、しっかりとした理解のもと行動する配慮によって軽減されるんだということです。例えば、曖昧な表現をインプットし咀嚼することが苦手です。それならば、曖昧な部分を明確に(数値化したりなど)することで詰まっていたことが解消されるわけです。これは、お互いがしっかりと理解し合うことで職場での「お荷物」から「戦力」へと生まれ変わることができるのです。
『冊子「虎の巻」シリーズ』【札幌市】
http://www.city.sapporo.jp/shogaifukushi/hattatu/hattatu.html#toranomaki
3.『発達障がい、知的障がい、精神障がいのある方とのコミュニケーションハンドブック』【国土交通省】
あと、国土交通省も障がい者とのコミュニケーション方法を解説したハンドブックを紹介しています。こちらは、交通機関を利用する場面で障がい者と取るコミュニケーション方法をシーンごとに解説しています。
このハンドブックもイラストを用いて、分かりやすく説明しており、特にサービス業などの接客が必要となる業種を持つ企業にとって参考としていただけるものではないでしょうか。
当然、コミュニケーションということでは、サービス業に関わらず従業員として接する場面もあることから一般的な企業でも役立つ内容になっています。
『発達障がい、知的障がい、精神障がいのある方とのコミュニケーションハンドブック』【国土交通省】
http://www.mlit.go.jp/common/001130223.pdf
4.『障害者雇用のためのハンドブック』【札幌市】
最後は札幌市が公表している資料となります。こちらは企業での雇用事例を詳しく紹介しています。
7社の企業が社名と従業員の写真や生の声をもとに実際の雇用場面を分かりやすく説明しています。
このように、顔の分かる資料というのは案外少なく、見る側にとってはイメージも持ちやすくなるので、障害者雇用に対するハードルも低く感じられるのではないでしょうか。
ひとつ、要望としてはもっと苦労したお話しを載せて欲しかったなぁと思います。
『障害者雇用のためのハンドブック』【札幌市】
http://www.hokkaido.doyu.jp/00case/image/case_report.pdf
いかがでしたでしょうか。2回に渡ってご紹介してきました。おそらく今後も障害者雇用の場面で非常に参考となる資料が紹介されると感じています。それだけ、障害者雇用が世の中に浸透している反面、苦労している企業も増えてきているからに他なりません。
前回と今回でご紹介した資料ですが、あくまでも障害者雇用に関する補足情報のひとつとして捉えてください。これらハンドブックやマニュアル通りのことを自社が独自に実践するために活用するというよりも、これらを予備知識として障害者雇用の専門家や支援機関からのサポートを受けられると、よりスムーズに作り込みが進むと思います。