みなさんには、普段の生活で取り入れているオリジナルのライフハックがあると思います。元々ライフハックとは「仕事の効率や生産性を上げるための工夫やテクニック」を指し、今では日常生活をよりよく過ごすために自分なりに取り入れている工夫やアイデアを表すときにも使われます。
例えば私自身が日常で取り入れているライフハックは、普段使っているバッグから別のバッグに代える際、鍵やカードケースを移し忘れてしまうことがあるため、バッグインバッグを使用しています。そうすることでバッグを代えるときにもバッグインバッグごと移し替えますので中身はそのままの状態を維持できるので忘れ物を減らすことができるようになりました。
このように日常生活を暮らしやすくするための「独自の工夫」をひとつやふたつ取り入れている人は少なくないのではないでしょうか。この「独自の工夫」を実施するには自分自身の特性・特徴を理解していることが条件です。(おそらくは困りごとからくるライフハックが多いと思います)
少し話は変わりまして『繊細さん』もしくは「HSP(Highly Sensitive Person)」という言葉をご存知でしょうか。最近では『繊細さん』に該当する芸能人や著名人がテレビ番組や書籍の特集で取り上げられることで認知が広がってきたように感じます。
『繊細さん』とは、他の人よりも「感じる力が強い」人のことを指し、周囲からの刺激に対して意思とは関係無く敏感に反応してしまうために人一倍疲れてやすかったりストレスを感じやすいと言われています。
以前にテレビで『繊細さん』のことを取り上げた番組を見たことがきっかけで興味が湧き、今回ご紹介する「『繊細さん』の本」を手にしました。
『繊細さん』は障がい者ではありませんが特性である「感じる力が強い」ことが原因となり日常生活の色々な場面での困りごとや生きにくいと感じるところが多いという点は障がいのある人とも共通するところだと感じます。そのため、『繊細さん』のことを知ることで障がいのある人への理解や気づきへのヒントにし、仕事の場面で一緒にはたらく際の配慮にもつなげていくことができると思います。
書籍では『繊細さん』が生きにくいと感じる世の中で取り入れてほしい工夫や物事の捉え方について、事例を交えながら教えてくれます。
これは、著者自身が『繊細さん』であることと同時にこれまで多くの当事者との面談により蓄積された正にライフハックをもとにして書かれています。そのため、自分が『繊細さん』だと自覚がなくても世の中がどこか生きにくいと感じている方が手にしてみる価値があるのではないかと思います。私自身も読み進めるに従って全ての場面ではないものの、自分の中にも少しは『繊細さん』に通じるところがあると感じられました。その感覚を踏まえて多様な人たちが世の中で生活をしていることを再認識することができました。
我々にとって「当たり前」「普通」と感じる場面や行動が、実はその人からすればストレスとなることを気づき、認識する気持ちが大切だということです。
障がい者雇用の場面では、自分と違う人の立場や考え方を理解することを求められます。このことは障がい者に限定された話ではなく、多様性理解を進める上では不可欠な感覚です。
『繊細さん』は必要以上に周囲に気を使いすぎたり自分の特徴や特性が特異と感じたことで他人に言い出せなかったりして「我慢」を強いられる世の中に存在しているように感じます。
その「我慢」が美徳だと教えられた時代からすると、それが当たり前のような社会は誰かにとっては生きづらいと感じさせていたはずです。この書籍のように『繊細さん』をひとつの存在として認識を広めることで少しでも生きやすい世の中づくりにつながると思いました。
特性も「ひとつの個性」という表現。人によっては個性と括られることに違和感を感じる人もいます。
でも自分の好きなところも嫌いなところも自分を形作っている「いち部分」と捉えることができるなら納得できるのではないでしょうか。
個性を表す特徴は自分を幸せにしてくれるものばかりではなく、時には自分を困らせる存在でもあります。(おそらく後者と感じる方が占める割合としては大きいと思いますが)
自分の中にある個性を気にせず表現できる社会とはどのようなものなのか。改めて立ち止まり考えてみたいと思います。
著 者:武田友紀(たけだ・ゆき)
日本で数少ないHSP専門カウンセラー。自身もHSPである。九州大学工学部機械航空工学科卒。
大手メーカーで研究開発に従事後、分析力とHSP気質を活かしてカウンセラーとして独立。
全国のHSPから寄せられる相談をもとに、HSPならではの人間関係や幸せに活躍できる仕事の選び方を研究。HSPの心の仕組みを大切にしたカウンセリングとHSP向け適職診断が評判を呼び、日本全国から相談者が訪れている。
HP「繊細の森」で検索してください。
発行所:株式会社飛鳥新社
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