企業が障がい者雇用に取り組む上で、
- 「それぞれの障がいのことがよく分からない」
- 「どのような配慮をすれば良いのか分からない」
- 「障がい者に任せて良い仕事が分からない」
といった意見が職場から聞かれます。障がい者を受け入れることになる職場の従業員が不安な気持ちから来るこの様な意見もよく理解できます。
企業の人事担当者にとって、この様な意見を踏まえて組織内での障がい者理解を深める取り組みは避けて通ることができないハードルのひとつとなります。
特に、精神障がい者・発達障がい者の雇用がますます増加することになるこれからの障がい者雇用では、法定雇用率の達成に加えて障がいのある従業員もやりがいを感じる仕事を通じて積極的な社会参加が進められる世の中を目指すことになります。その実現のためには職場で関わるそれぞれが相互理解を図り、仕事で成果を上げることができる組織作りが必要となります。
2022年6月、ボードゲームをプレイすることで障がい者の「特性理解」や「合理的配慮」を学ぶことができる商品および社内向け研修サービスを株式会社セガ エックスディーと東京都ビジネスサービス株式会社が共同開発しました。
ミルマガジンでは「障がい者就労支援ボードゲーム『ズバリ 気配り アニマッチ』」の共同開発である株式会社セガ エックスディーのプロダクトマネージャー 野尻昌仁氏と東京都ビジネスサービス株式会社(東京都と株式会社システナとの第三セクター企業・特例子会社)の専務取締役 中新井肇氏から開発にいたった経緯とサービス内容について話をお聞きしてきました。
◯開発の経緯
《話・中新井氏》
当社の主な事業は人材教育や研修、人材紹介事業、障がい者雇用コンサルティングなど、HR関連のサービスを提供してまいりました。
私がグループ会社の株式会社ProVisionと兼務することになり、特例子会社としての役割を踏まえて社会的に意義のある事業を手掛けたいと考え、これまでと違ったサービスの提供を念頭にセガ エックスディーさんにご相談をしたところからプロジェクトが始まりました。
《話・野尻氏》
当社は、ゲーミフィケーション(ゲームのメカニズムを非ゲームの分野に応用することで、対象となるユーザーや従業員の意欲の向上を図ること)を通じて企業へのコンサルティングや製品・アプリの開発を主な事業としています。
ご相談いただいた当初はカードゲームとして企画されていたのですが、製品を通じてプレイヤーに学んでもらいたいこと・体験とは何なのかを突き詰めた結果、ボードゲームを採用しました。
働く場面で身につける障がい者の特性理解を覚えるだけであれば本を読めば良い...ということではなく、障がい者が必要とする適切な理解と配慮がどのようなものなのかについて、本人に耳を傾けてヒアリングし、迎え入れるメンバーと一緒になって議論しながら適切な理解と配慮をしていくことが大事、と気づいてもらえるような体験ができるゲームを作る方向にシフトしました。
しかし、ここに辿り着くまでの道のりは大変で『ズバリ 気配り アニマッチ』の初期バージョンでは、障がいのあるキャラクターへの単なる気配りや大喜利のような設定となり、ゲームとしての面白さを感じられず、きちんと楽しめるゲームとなるような設計に試行錯誤しました。
具体的には、障がいのあるキャラクターに対して適切な理解や支援に合わせてポイントが付与される要素を加えたところ、プレイヤー同士が必要な理解や支援について考えを深め積極的な意見を出し合えるような内容となり、楽しみながら多様性を理解することができるようになりました。
障がい者雇用で必要な条件として、個々の障がい者が必要とする配慮には違いがあり、それを理解するためにはその人自身がどのような人物なのかを知ろうとする姿勢が求められます。そのため、このゲームのコアテーマである「合理的配慮」をプレイすること身につけられることを伝えていきたいと考えています。
◯『ズバリ 気配り アニマッチ』について
《話・中新井氏》
この『ズバリ 気配り アニマッチ』は企業での障がい者雇用活動で必要な障がい理解の一環として従業員を対象にした研修プログラムとして当社が提供するサービスとなっています。
ゲームの登場キャラクターにはそれぞれ異なる特徴があるのですが、その特徴は実際の障がいを元に設定されています。ただ、「障がい」と重々しく受け止めて欲しくないため、ゲーム内には障がい名は明記せず、ゲーム中では個性・特徴というように記載しております。
ご希望に応じてゲーム終了後の研修で各キャラクターの障がい特性について説明を通じて基本的な障がい理解ができる講座もご用意しています。
《話・野尻氏》
ボードゲームの設定として自分が他のプレイヤーよりも先にゴールすることを目的にしたタイプが一般的だと思いますが、他のプレイヤーと協力をして一緒にゴールを目指す協力型のボードゲームがこの『ズバリ 気配り アニマッチ』になります。
ゲームのデザインやモチーフを決める中で、多様性を表現するために色や形状のバリエーションが豊かな動物をモチーフにしました。設定は学校の生徒会に体験入学を希望する新入生に対して、4人の先輩が本人の適性をヒアリングしながら理解し、適正な役割や求めている配慮を提供することでスタート時は0だったポイントを増やしてゴールを目指すゲームになっています。
例えば、「集中しすぎてしまう」「こだわりが強い」といった特徴がある新入生だった場合、どのようなことに注意をしてあげないといけないのか、強みを活かした役割は何になるのか。と言ったことを本人からヒアリングした情報をもとにチーム内で話し合いながら自分と違う他者を理解する経験を通して、職場で障がい者を受け入れる際に必要な合理的配慮の視点を身につけてもらいたいと思います。
また、この研修プログラムでは先輩という立場でプレイするため、リーダーシップとしての素質を見る材料にもなりますし、新人研修など、必ずしも障がい者に限定せず、多様性を受け入れが必要な様々なシーンで使っていただけるボードゲームになったと思います。
研修プログラム
- 研修内容:ボードゲームの説明と体験:60 分(ワークショップ)
障がい者とともに働くファーストステップ:60 分(講義) - 参加人数:5~20 人
- 料金:200,000 円~(税別)※料金内に本ボードゲーム 1 個付
合計 120 分
※追加ボードゲームご購入も可能です。 ※参加人数、実施場所、実施方法、費用については下記までお問合せください。
【お問い合わせ先】
東京都ビジネスサービス heartful@tokyotobs.co.jp
現在、社会で求められている「多様性理解」は、言葉では理解できていても普段の行動に反映させるところまで深めることを考えると簡単なことではありません。
今回両社が提供するボードゲームは、この「多様性理解」をゲームをプレイすることで誰もが楽しく身につけられる素晴らしい内容になっていると取材を通して感じることができました。6月にリリースしたばかりということですが、企業からの問い合わせが増えてきているとお聞きしました。
また今後は、企業に限定せず早い時期から多様性について考える場として学校の生徒たちを対象にしたプログラムも検討されています。
ご協力ありがとうございました。
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