厚生労働省からの公表データでは全国には就労継続支援B型事業所(以降B型事業所)が16,713ヶ所あります。(令和5年時点)障がい者を対象とした就労系の福祉サービスでは最も多い事業所数になります。(参考:就労移行支援事業所「3,301ヶ所」、就労継続支援A型事業所「4,676ヶ所」、就労定着支援事業所「1,809ヶ所」)
一般的にB型事業所とは「企業等への就労が困難な障がいのある人たちがはたらく場」として通うところだと言われています。しかしながら、個々の事業所が取り組む活動には様々な特徴があり、企業との接点を多く持つところや通っている障がい者(利用者)の就職に積極的な事業所も見られます。そういった事業所に通う利用者の中には労働力として十分な能力を発揮することができる方も少なくないと感じています。
理由のひとつとしては、そのB型事業所の法人・組織としての考えや役割、実現させたいビジョンが明確であり、そのことが職員全体にも浸透しているため、各自が求められている職務を追求していこうとする力がはたらきます。結果として利用者の強みを活かし、成長に繋げることができるからだと考えます。
ミルマガジンでは過去に何度も取材にご協力をいただきました千葉県富津市にありますNPO法人AlonAlonが運営する就労継続支援B型事業所「AlonAlon」が新たな一歩を踏み出す取り組みを始めるとのことで代表の那部智史氏にお話しをうかがいました。
【参考】
那部氏はこれまでも、従来のB型事業所の概念を打ち破る活動を数多く実践されてきました。
今回同事業所は三井不動産グループの一員として国内の園芸分野を牽引してきた第一園芸株式会社との協業を発表しました。

〇第一園芸株式会社との協業について
《話・那部氏》
我々がB型事業所に通う利用者の仕事として胡蝶蘭の育成と販売の事業をスタートさせて7年になります。これまでは障がい者が作った胡蝶蘭は贈答品として販売することは難しいと考えられていました。しかし、私どもの農園で障がいのある人たちが仕事として胡蝶蘭の育成に携わる様子を見てきて感じたのは「障がい者の特性はお花作りに強みがある!」ということでした。
例えば、胡蝶蘭の鉢上げは複数本の胡蝶蘭をバランスよく植えこんでいく作業で難しい技術を求められる作業ですが、自閉症の特性のひとつであるこだわりの強さが美しく見栄えの良い胡蝶蘭鉢づくりには欠かせません。また、胡蝶蘭の生産量を一定に保つためには知的障がい者に見られる根気強さと継続性が重要な役割となっています。そういった障がい者の強みを戦力化した結果として、我々が年間に生産する胡蝶蘭の販売数は年々増加しており、それは「障がい者が作った胡蝶蘭の品質は良い」という評価をご利用されるお客様からいただいた何よりの証拠だと考えています。
そのような中、創業127年として園芸分野の先駆者である第一園芸株式会社にて当事業所が育てた胡蝶蘭を取り扱っていただくことが決まりました。このことは長い歴史で培われた園芸分野の専門知識と技術力のある同社に胡蝶蘭の仕入れ先としてB型事業所である我々が認められたことであり、それと同時に我々が利用者と一緒に作り続けてきた胡蝶蘭の品質が間違いなかったのだと認識する機会になりました。


◯これから期待していること
第一園芸が我々の胡蝶蘭を仕入れ先として選んでいただいたことは、障がい者でも一流の製品を生み出す力があると証明されたことの表れだと感じています。また「業界の一丁目一番地」で障がい者がはたらくことと同一であるとも感じています。
しかしこれらのことは私が目指したい社会作りの始まりに過ぎません。有難いことに私どもの胡蝶蘭農園は年々生産数を伸ばしていますが、一方で廃業する胡蝶蘭農家もあります。最近では農福連携をいう言葉をよく耳にするようになりました。人手が足りない農作業を補うためという考えから単純に障がい者の労働力を使っているだけの農福連携が少なくないと感じています。
真夏の強い日差しの中、低い賃金で過酷な農作業に従事している障がい者を見ると我々が目指している農福連携とは大きく違っていると思います。
以前にミルマガジンで取材をしていただいた「マンゴー栽培」ですが、その後順調に生育が進み、現在ではふるさと納税の返礼品や贈答品として出荷されるようになりました。我々のマンゴー栽培ではテクノロジー技術を提供する企業とタッグを組み、完全ハウス栽培を実践しています。真夏の炎天下でもオートメーションで空調管理がされており、はたらく障がい者の体に負担の掛からないようになっています。これらは農業の労働力不足や耕作放棄地の問題の解決につながる活動だと考えます。
我々がこれまで胡蝶蘭やマンゴーの栽培を通じて証明してきた結果により障がい者の特性を強みに変え、それをビジネスとして実現できる社会を目指したいと考えています。
よく「障がい者は天才だ」と表現されることもありますが、関わっている我々からするとそのような表現で簡単に片付けられないものだと思っています。一方で障がい者全てが劣っていると感じている世の中にもそうではないことを表現していきたい。「障がい者のはたらく」を経済活動に組み込んでいく社会作りの実現を目指すことができれば、社会にある課題の多くを解決させることができるのではないかと考えています。


URL:https://alonalon.or.jp/
所在地:千葉県富津市西大和田1234-2
Facebook
URL:https://www.facebook.com/kyonan.alonalon
YouTubeチャンネル
URL:https://www.youtube.com/channel/UCUZ1Nz6aKl7KPvUbUcZcLBA