ミルマガジンではこれまで多くの企業や就労支援事業所などを取材してきました。2018年7月には自身が重度の身体障がい者でありながら愛知県で人生2度目の起業をした株式会社OLDROOKIEの代表取締役社長 松元氏を取材しました。
また、同氏にはミルマガジンにてコラムニストとしても活躍をしていただいてます。
https://mbit.co.jp/mag/author/7
松元氏が新たなチャレンジ『ふくはび愛知』を始めると聞き、ミルマガジンでは詳しい話を聞くため同氏の元を訪ねました。取材当日は松元氏と『ふくはぴ愛知』を共同で運営する林氏(リモートにて)のお二人から話をお聞きしました。
◯新たな事業『ふくはぴ愛知』にチャレンジするきっかけ
《話・林氏》
私は重度訪問介護のヘルパーの出身です。松元さんとは利用者とヘルパーの関係としてスタートしたのですが、最近では松元さんに自身のことについて相談を聞いてもらうなど、公私でよくしていただいています。そのような中、介護サービスで普段から感じていた課題について「これからは訪問介護の業界もデジタルの導入が不可欠だと思っています。解決策のひとつとして利用者と事業所のマッチングアプリのアイディアがあります。例えば、利用者側が希望のサービスなどを入力すると該当する事業所と繋がることができるというものになります。」と提案をお伝えしたところ、松元さんから「それ面白いね!そのマッチングアプリだったら、私なら作れますので一緒にやってみませんか!」という答えが返ってきました。
詳細をお話しする前に訪問介護業界の課題を挙げます。
- 利用者がヘルパー不足だと感じていること
- 訪問介護に関する情報が得にくいこと
- 訪問介護を受けられるサービスが知られていないこと
特に①については、世間では「訪問介護ヘルパーが不足している!」と耳にすることが少なくありませんが、実はヘルパーは不足していません。
もちろん、厳密に言うと介護利用者よりもヘルパーの数が少なくなっている地域も存在しますが、それならば隣の市区町村から通うことができるヘルパーに訪問をお願いすることができれば解決します。しかしながら、利用者からの問い合わせや相談に答えるケアマネージャーや相談センターが「隣の市区町村にはお願いできるヘルパーがいる」という情報を持っていないために繋げられていないので、結果として「ヘルパーが見つからない=ヘルパーが不足している」となってしまっているのが現状です。
なぜこのようなことが起こっているのかと言いますと、ズバリ「福祉業界のデジタル化が進んでいない!」ことが原因です。これまでヘルパーの紹介情報は人と人との横のつながりに大きく頼ってしまっていたために相談を受けた担当者が持っている住所録に記載された連絡先だけの限定的な範囲でヘルパーの手配をすることが常態化してしまっていて、一軒一軒連絡をする方法しか知らないからです。
また、②や③のような情報についても必要としている利用者まで適切な発信ができていないことが散見されます。例えば、訪問系サービスには訪問介護や訪問看護以外にも訪問リハビリ・訪問マッサージ・訪問歯科といったサービスがあるのをご存知ない利用者が少なくありません。
《話・松元氏》
当初、林さんから訪問介護の課題に関する相談を聞いた時に「我々であれば解決することができる」と伝えました。元々私自身が先天性の重度障がい者ということもあり、日常生活では訪問介護サービスが欠かせません。一方でコロナ禍にこれまでの事業に加え訪問介護事業を新しく立ち上げていました。「利用者側の体験」と「サービス提供側の体験」両者の立場は我々にとって強みになると感じました。
そこで林さんと膝を突き合わせて打合せを繰り返し、訪問介護の世界にもデジタル化を進めていくことで利用者の生活の質を上げることが可能だと考え、新しいサービスとして『ふくはぴ愛知』を開発することになりました。
◯ケアサポートマッチングシステム『ふくはぴ愛知』について
《話・林氏》
訪問介護サービスを必要としている利用者と訪問介護サービスを提供する訪問介護事業所をマッチングさせるサービスが『ふくはぴ愛知』になります。
利用方法は簡単で、利用者が「利用したい曜日」「必要なサービス」「地域」を入力すると訪問介護事業所とのマッチング情報が表示されます。表示された情報を元に担当のケアマネージャーや相談員に利用者の状態と提供サービスのマッチングが適正であることを判断してもらった上で事業所側と契約を結んでいただきます。
一方で、訪問介護事業所側にとっても『ふくはぴ愛知』に登録をしていただくことで、これまではつながることができなかった利用者の獲得にもなりますので両者にとって大きなメリットを生み出します。
2023年11月16日のリリース(※取材時)を目標に準備を進めており、まずは我々の拠点がある愛知県からスタートさせたのちには、他の地域も同様の課題がありますので全国へサービスを展開したいと考えています。利用料金については利用者・訪問介護事業所ともに無料です。
《話・松元氏》
アナログ文化が強い訪問介護業界にとって革命的な事業になると感じています。これまではケアマネージャーがひとりずつ電話やメールを使ってヘルパーを手配していた状況から、スマホやタプレットを使って手軽に且つ多くの登録情報から適正なヘルパーを検索し手配をすることが可能な時代がやってきます。
例えるならフリマアプリのように自分が欲しいと思った商品を指先操作で検索し購入するかのようなイメージですね。
『ふくはぴ愛知』ではヘルパーの検索だけではなく、利用者の生活に必要な制度などの情報発信も行うことで生活の質を向上させたいと考えています。
課題としては、福祉サービスに関連した事業となるために営利目的によるサービスの提供には規定があるために運営資金の調達に苦労しています。そのため、現在クラウドファンディングにて支援金を募っています。ぜひ、ご協力をお願いします。
今回の取材を通して耳にした訪問介護業界の課題は、単なるデジタルに乗り遅れた業界という表現だけでは見えてこない深層にある大きな社会問題だと感じました。ここに、利用者と事業者の両方の立場を理解する松元氏と訪問介護業界の実情を知る林氏がタッグを組むことで生まれた『ふくはぴ愛知』は正に業界に大きな変革を起こしてくれるサービスであると感じさせられました。
ご協力ありがとうございました。
訪問介護ステーションぶらうんらっと
所在:愛知県名古屋市緑区平子が丘2202-2
URL:https://brownrat.jp/
ふくはぴ愛知
URL:https://aichi.fukuhappi.jp/?fbclid=IwAR2OPbD6dvGVaamAkDi3dwD6mvtyTyNoEfOk54Oxvv4Qlx0iVkn1eLpPHBQ