【上前のひとり言】生産年齢人口問題は対岸の火事ではないこと

人材を募集しても「採用ができない」と感じている経営者や人事担当者が少なくないと思います。人材の採用で感じていた悩みは今後、もっと深刻な状態になるとしたら。

耳にする機会が多くなった生産年齢人口問題は我が国の少子高齢化による人口減少といった大きな社会課題のひとつです。少子高齢化の進行により国内の生産年齢人口(15〜64歳)は、今から28年も前に当たる1995年の8,716万人をピークに減少の一途を辿っています。直近にあたる2025年には「団塊の世代」と呼ばれる世代(出生数約800万人)が75歳以上の後期高齢者となり、2030年には生産年齢人口比率が60%を下回るため労働需要に対して約650万人の人手が不足するだろうと予測されています。

このままいけば、現在よりももっと人手不足感が強くなります。

【参考:内閣府「令和4年度高齢社会白書」より抜粋】

人材を募集しても集まらないと感じている感覚は上記が理由だということを物語っています。
悲しいことに現在の国の政策を見ても劇的に生産年齢人口が回復することは考えにくいことからも、将来に起こるであろう事実に向き合い、今のうちから活用できる人材の限界値を広げるための柔軟な考え方と行動が各組織に求められます

お気づきだと思いますが、本来であれば戦力として十分に働ける層があるにも関わらず目を向けられていません。今こそ眠っている人材にスポットを当ててみてはどうでしょうか

「生産年齢人口の減少」に対して企業ができること

◯求職活動人材の希望を理解した労働条件

2020年世界で流行した新型コロナウイルスにより、我々はこれまで当たり前だと思ってきた働き方について変化を求められ、結果を残すことができました。その代表が「テレワーク(会社に出社せずにリモートにより働くスタイル)」です。

働くとは会社に出社し業務につくことを大前提とし、その中で同僚や上司とはフェイストゥフェイスでコミュニケーションを図り、取引先と足を運んで担当者との対話を通してニーズを獲得するなど、人との関係構築も対面で行うものだと思っていました。しかし、コロナ禍では対面による感染を抑制するためにオンラインによるリモートでのコミュニケーションが導入されました。当初はオンラインツールの不慣れな扱いやリモートへの信頼が持てないと感じる部分もありましたが、結果としてはテレワークでも業務で成果を上げられることが証明され、実感することができました。

もちろん、テレワークの導入が困難な業態や職種もありますが、危機的な状況下でも業務で成果を残すために柔軟な働き方やサービスが生まれたことを我々は認識しています。
おそらく、コロナ禍を経験した社会はこれまでの当たり前だったスタンダードを打破し、多様なニーズを反映したニュースタンダードが生まれていくと考えます。同じく個人が求めるライフスタイルの多様化を許容する社会へと変革し、いち早くその社会へフィットさせる企業やサービスが人から選ばれる世の中になっていきます。

生産年齢人口が減少する将来、企業が必要とする労働力を確保するためには働き手が希望する働き方・労働条件を提示できる組織が生き残ることができる世の中へと進んでいきます。

◯「5・9-17」→「3・4」

人材(特に正社員)を募集する際、「フルタイム「週5日・9-17時」で勤務できる人」はどの程度マストな条件なのでしょうか。

育児、介護、看護を対象とする家族がいる人材にとってフルタイムでの募集はエントリー外の求人情報だと目に映ります。
特に女性が該当すると考えられますが、バリバリ働いていた経験のある人材が結婚・出産後に育児優先の生活のため、「限定した時間帯での勤務」でないと働くことができないと考える人材が少なくないと感じます。この機会に「一日7〜8時間の働き手が本当にマストで募集する条件なのか」を改めて検証
検証の結果「一日3〜4時間勤務の人材が二人でも求める成果が得られる」可能性が考えられるのであれば募集条件の変更が必要ではないでしょうか。

併せて、これまで当然のように進められていた業務フローの洗い出しや見直しなども検証していただくことをお勧めします。

◯「ゼネラリスト」人材から「スペシャリスト」人材へ


これまでの組織の多くは、個々に色々な仕事で平均点を出せる人材を募集し、採用することを目指していました。どの科目でも平均点を出せる人材であれば、営業にも企画にも総務にも配置することができますので、雇用主側の立場としてはマネジメントをする上で「楽」ができます。
今後も同様の考え方による人材募集のみで人を採用することは非常に厳しくなってくることが予想されます。現実は少子高齢化に伴う生産労働人口の減少とともに、企業が求める人材との出会いは実現されにくい世の中が待っています。

ここでも柔軟な考え方として、これまでと同様に多種多様な業務を担当できる「ゼネラリスト」の人材募集に加えて、一人の人材が担当する業務を限定的なものに集約した「スペシャリスト」的な人材もターゲットとして検討してみてはどうでしょうか。
データ集計に特化、HPの更新・修正に特化など、特定の業務に専任となる人材募集に絞り込むことで希望者を増やす工夫を行なってください。担当業務を絞り込むのに合わせて前項のように就労時間・日数の変更も検討できます。

募集の間口を拡大させることで多くの人材が候補となります。人手不足と言われる昨今ですが、少し視点を変えれば、障がい者・女性・高齢者など活躍が期待できる人材層はあると考えます。
「今」動くのか、「後回し」にするのか。

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[障害者雇用コンサルタント]
雇用義務のある企業向けに障害者雇用サポートを提供し、障害者の雇用定着に必要な環境整備・人事向け採用コーディネート・助成金相談、また障害者人材を活かした事業に関するアドバイスを実施。障害者雇用メリットの最大化を提案。その他、船井総研とコラボした勉強会・見学会の開催や助成金講座の講師やコラム執筆など、障害者雇用の普及に精力的に取り組んでいる。

▼アドバイス実施先(一部抜粋)
・opzt株式会社・川崎重工業株式会社・株式会社神戸製鋼所・沢井製薬株式会社・株式会社セイデン・日本開発株式会社・日本電産株式会社・株式会社ティーエルエス・パナソニック株式会社・大阪富士工業株式会社・株式会社船井総合研究所・株式会社リビングプラットフォーム