当事者と企業から見た発達障害者雇用!『業務説明に時間を掛けるべき理由』 ~企業の視点~

前回に続き、『イメージすることが苦手・弱い』特性のある発達障がい者が職場で定着するための対処法となるポイントを「企業側」からの視点でご紹介したいと思います。

当事者と企業から見た発達障害者雇用!『業務説明に時間を掛けるべき理由』 ~当事者の視点~

2020.03.31

①職場における発達障がい

この数年、企業で働く障がい者が増加した背景には、法律改正や法定雇用率の引き上げに加えて、SDGs・ダイバーシティの考え方が浸透してきたことによります。それに伴い、身体障がいや知的障がいのある人材が多く採用されてきたこれまでの障害者雇用から精神障がい者・発達障がい者を対象にした求人情報に進んだ結果、これらの障がい特性が急激に雇用数を伸ばすことになりました。
例えば、東京にある就労移行支援事業所では、利用者として就労訓練を開始してから企業に就職するまでの期間が他の地域よりも短いという話を聞きます。これは、企業から採用の要望が高いということを証明するひとつの理由となっています。

精神・発達障がい者を対象にした求人情報の増加は、企業における急激な精神・発達障がい者の雇用数増加を実現しましたが、それに伴い職場で発生する大小様々なトラブルや課題の数も多く見られるようになってきました。
例えば、

  • 職場でのコミュニケーションの取り方
  • 障がい特性を知らない
  • 一緒に働く従業員への配慮

など、企業による受け入れ準備が満足いく程度にはできていないため、障がい者本人に対して「腫れ物に触る」「極力関わらない」という行動が発生しやすくなり、結果として職場に定着することなく退職してしまう障がい者が増加傾向にあります。

特に発達障がい者の場合、「こだわりが強い」「感覚過敏」「臨機応変が苦手」などの特性について、知識として身に着けていない周囲にとっては、職務上どのように接すれば良いのか『分からない存在』という風に映っています。

②「説明不足」+「イメージし辛い」は「業務停滞」を招く


上記に挙げたような発達障がい者の特性の他に代表的なものとして『イメージ力の脆弱性』があります。
一般的な職場では、「阿吽の呼吸」とまでいかなくても、お互いの役割やこれまでの経験により最後まで伝えなくても「おそらく分かってくれるだろう」「多分、〇〇のことだな」と推し量りながら仕事を進めていくということが日常的に行われていたりします。

また、日常業務というのは、色々な工程や作業を経た後に自分のところに回ったり、自分の担当業務を処理してから次の工程の担当者に仕事を連携するというように、一連の業務をそれぞれのパートに分けて様々な担当者が自分の役割を処理するということが多くなっています。
このような場合、一般的には担当業務に就き始めた多くの人は、自分の担当する業務の「作業手順」「確認箇所」「スケジュール」などを理解するところから始め、徐々に仕事の理解度を深めていきながら、「自分の担当業務は〇〇な仕事の一部分だったんだ」「私が処理した後にはこういう作業が待っているんだ」というように全体像を知識として身に着けていきます。

ところが、イメージすることが苦手な特性のある発達障がい者にとっては自分の役割りに特化した業務理解だけで仕事を進めることが苦手ですので、その結果として思うように仕事が進まないという状況が生まれてしまいます。

③理由と対処法


今の時代、一般的な企業の仕事の特徴として、スピードが求められる上に役割が多くなった印象です。そのため、一つひとつの業務を丁寧に実行するというよりも、「決められた時間内により多くの処理をこなす」というのが職場で求められる仕事の姿ではないでしょうか。

イメージすることが苦手な特性のある発達障がい者の場合、自分の担当業務の作業内容だけを説明されたときに感じるのが、「私の担当作業で何ができるんだろう」「何の役に立っているんだろう」となってしまっている人が多いのではないでしょうか。その結果として「何につながっている仕事なのか分からないので、業務に気持ちを込めることができません」という風になっていることが、発達障がい者が職場で担当業務を上手く進めることができない理由のひとつに該当します。ところが周囲に対してそのような特性理解が進んでいないのであれば配慮の必要性を感じてもらうことができません。

もし、このような状況を感じている発達障がい者の方がいるのであれば、自分の発達障がいの特性である「イメージすることが苦手」からくる仕事に対する考え方と全体像の説明が必要という点を周囲に伝えることが重要です。
発達障がいに関する知識が不足している職場もあると思いますので、人事担当者や管理者に説明をし、自分独自の指揮・命令方法を作るようにしましょう。
その時の説明として、

  1. 発達障がい特性として「仕事の全体像を理解したい」があります
  2. 全体像が見えないと仕事に取り掛かることができない
  3. 「全体像の理解」は業務に対する自分の役目を知りたいからです
  4. これは想像することが苦手なため起こる現象

という部分を伝えることを意識してみましょう。
例えば、プラモデルをつくる時というのは、完成図(ロボットや戦闘機、スーパーカーなど)を頭にイメージしながらパーツごとに組み立てをしていき、最終的に各パーツを合体させて完成させます。発達障がい者はこの完成図を想像するという部分が苦手ですので、「全体像=完成図」を説明してほしいということを職場で伝えるようにしましょう。

④キーポイントは「自己特性の共有」

当初、職場では発達障がい者が持つ特性について理解されにくいと感じることが多いと思います。だからといってひとりで抱え込んでしまっても、解決させることは困難に等しいです。
それよりも、周囲に困りごとを相談・共有し、ひとつずつ経験を積み重ねることで「〇〇さんに仕事をお願いするときには全体像の説明が必要」という風に周囲が分かってくれるようになります。これを継続させることで、他のシチュエーションで発生する別の特徴についても柔軟に対応してくれるようになってきます。

今後、「当事者と企業から見た発達障害者雇用!」は、発達障がい者を雇用する職場で考えられる課題の解決について「当事者の視点」「企業の視点」からお話をしていこうと思います。

ABOUTこの記事をかいた人

上前 忠司 (日本障害者雇用総合研究所代表)

[障害者雇用コンサルタント]
雇用義務のある企業向けに障害者雇用サポートを提供し、障害者の雇用定着に必要な環境整備・人事向け採用コーディネート・助成金相談、また障害者人材を活かした事業に関するアドバイスを実施。障害者雇用メリットの最大化を提案。その他、船井総研とコラボした勉強会・見学会の開催や助成金講座の講師やコラム執筆など、障害者雇用の普及に精力的に取り組んでいる。

▼アドバイス実施先(一部抜粋)
・opzt株式会社・川崎重工業株式会社・株式会社神戸製鋼所・沢井製薬株式会社・株式会社セイデン・日本開発株式会社・日本電産株式会社・株式会社ティーエルエス・パナソニック株式会社・大阪富士工業株式会社・株式会社船井総合研究所・株式会社リビングプラットフォーム