今回ミルマガジンの取材にご協力いただきましたのは、愛知県春日井市で株式会社レボが運営しています『就労移行支援事業所ふらっぷ』になります。
詳しくお話しを聞かせていただいたのは、事業所の管理者 藤井貴之氏になります。
『就労移行支援事業所ふらっぷ』のことを教えてください
《話・藤井氏》
2021年11月で7年目を迎えます。私たちの事業所は愛知県春日井市にあり、地域に根差したサービスの提供を行っています。
大きな特徴としましては、「完全個別性」を取り入れており、当事者ひとりひとりに合わせた支援を目指して、カリキュラムをゼロから作成するところからスタートしています。
当事業所には退職した方や企業の選考に残らなかった方など、就職が困難な当事者が通っており、通所を希望される方は原則断らずに受け入れるようにしています。そういった方たちの中には、週1日しか通うことができない方もいたりなど、登録者は40名近くになります。結果として、年間に30名の利用者に就職してもらうことができました。(3年連続)
私たちがそのような結果を残すことができたのは、
- 企業との事前共有に時間を掛ける
- 実習を最大限活用する(最長3ヶ月間)
- 企業の困りごとと障がい者の強み(特性)をマッチングさせる
を実践しているからです。
「①」は、利用者の強みを深掘りし、できることとできないことを明確化させ企業に分かりやすく伝える努力をすることです。そのためには、特性が強くて一般的な就職が叶わない当事者であっても、やりたことをやってもらい、やりたくないときはさせないようにしつつ、その中から本人にとって最適な仕事・作業・環境を見極めていくようにしています。そういった情報について採用活動をしている企業に情報共有することで理解を深めていただきます。
「②」につきましては、利用者は自己理解と適正業務の発見、企業は障がい理解をそれぞれ深めてもらうため、実習に時間を掛けてより多くの経験を積んでもらうようにしています。
「③」につきしては、事例でお話ししたいと思います。障がい者雇用に抵抗がある企業がありました。製造工場での夜間警備の仕事なのですが、人材の採用が進まず人事担当者が困っていました。そこで、「昼夜逆転」「生活リズムが崩れている」「コミュニケーションが苦手」な人材を紹介したところ、勤務は夜勤で人と接触の少ない仕事だったために、本人にとっても企業にとっても最適な雇用となったことがありました。
このように、人材採用に困っていたり特殊な仕事なために人が集まらないといった求人でも、利用者の強みを深掘りすることで適正な仕事だったりすることがありますので、求人情報と利用者のマッチングに多くの時間をお掛けるようにしているのが当事業所の大きな特徴だと言えます。
支援を通じて感じること、目指す未来
私たちが提供している支援ですが、当初は手探り状態からのスタートでした。
現在のようになるまでは、一般的に言われていた支援のかたちを参考にしていたのですが、利用者それぞれが望む支援のかたちには違いがあり、就職を目指している方たちの中にはフルタイムではなく、社会とつながりたいことが大きな目的なために週1日の仕事を選ぶ人もいます。
このように、「就職=フルタイム」といった視点だけではなく、「就職=本人が望む就職」を我々が理解してマッチングするように心掛けています。
これまでは、強みを伸ばし活かすことに重点を置く支援が多かったのですが、私たちではご家族からの了承のもと本人が希望するのであれば、苦手な部分を克服するための支援を実施してきました。
例えば、面接が苦手な利用者が面接でしっかりとした受け答えができるようになりたいと希望するなら、多人数で敢えて厳しい質問をするような面接を経験してもらったりします。その結果、離職する方もいらっしゃいますが、苦労を乗り越えて適性に合った仕事に就く確率も高くなっています。
ここまでひとりひとりの要望に応えてしまうと、支援スタッフの手間も大きくなるのですが、こちらの事業所を頼ってくださる方も多くなってきました。
これから私たちが目指したいことは、これまでの就労支援にある“当たり前”を変えていきたいということです。ご説明しました様に当事業所は、独自性の強い支援を実施しています。これからは、自分が希望する進路や目的に合ったサービスを提供してくれる福祉を当事者が選べるようにしたいと考えています。そのために将来的には当事業所で様々な福祉サービスが受けられるよう準備を進めています。
今回お話しを聞かせていただきました藤井氏からはこれまでの経験を通して得た中から生まれた独自性のある支援とその成果に今後の力強さを感じさせられました。
ご協力ありがとうございました。