「障がい者」と「雇用」というキーワードの結びつきが強くなった現在、関連する書籍も増え、検索エンジンを使えばたくさんの情報を得ることができるようになりました。
障がい者に関連した情報の中で、特に多くの方の関心事として注目されているのが『発達障がい』です。『発達障がい』は身体障がいに比べて、特徴を捉えにくかったり理解が進まない障がい特性のひとつだからだと考えます。
私がこの「大人の発達障がいがわかる本」と出会った数年前、企業の担当者から「一緒に働く従業員が発達障がいかも・・・」「先日、採用した新人が発達障がいと自己申告してきました」といった相談が目に付くようになった頃でした。当時の私は、今よりも『発達障がい』に対する知識もありませんでしたから、福祉事業所の見学や関連する書籍からの情報がほとんどでした。
いくつか読んだ書籍の中からこの「大人の発達障がいがわかる本」をお勧めしたい理由は、“とても読みやすい!”という点です。どうしても専門書となると、書かれている内容が難しくて内容が頭に入りづらく、文中に専門用語がたくさん使われていると僕なんて思考が停止してしまいそうになります。
ところがこちらは、知識のない人でもスラスラと目を通すことができる文章になっており、イラストを使った解説と文字も大きいため、専門書特有の堅苦しい感が全くありません。ほとんどのセンテンスが見開きで開設されているので、分かりやすくまとめられています。
これらの専門書には2つの特徴が見られます。
自己・他人診断に役立つ
ひとつは、自分が発達障がいではないかと疑っている人が読むための内容になっている。私も過去にお会いした方でしたが、自分は発達障がいかもと薄々感じているときに母親(どちらかというと父親よりも子供のことをよく観察しているため)から関連書籍を勧められて、読んでみると自分に当てはまるところが見つかったために専門の病院で診断されたというパターンがよくあります。
もうひとつは、企業の人事担当者や管理者が自社の従業員で当てはまる人が居る時に読むパターン。この書籍は後者にあたります。周囲が『発達障がい』を持つ人材のことをよく理解するための文章構成になっています。
事例が豊富
また、事例や『発達障がい』特性にある「AD/HD 注意欠陥多動性障がい」「PDD 広汎性発達障がい」などの特徴をしっかりと解説してくれています。
この書籍を企業の人事担当者や管理者が読むパターンといったもうひとつに理由が「二次障がい」についての解説をしっかりしているところがあるからです。ご存知の方も多いと思いますが、「二次障がい」とは、例えば元々ある『発達障がい』の特徴が原因で周囲とのコミュニケーションや仕事が上手くいかずに、メンタル不調を訴えて「うつ病」などを発症してしまうことを言います。この「二次障がい」は『発達障がい』の診断を受けている人も受けていない人も周囲との関りによるストレスが原因で発病することがありますので、本文にあるヒントを参考に社内での取組みのきっかけにしてみてはいかがでしょうか。
あと、「二次障がい」ではありませんが、『発達障がい』を持つ人材との関わり方がしっかりと取れていない会社では、周囲の人が心身をすり減らしてしまった結果として「うつ病」などを発症してしまう例も多く見られます。多くは、指揮命令者や管理者の役割にあたる人ですので注意が必要です。
それと、巻末にある職場のQ&Aの内容も非常に参考になる内容となっています。
今後、企業は精神障がい・発達障がいを持つ人材の採用を本格的に進めていくことになります。その場合、各種専門機関との連携やサポートが職場定着に実現に必要不可欠になってきます。いざ、その場面になって右往左往するのではなく、今回の書籍「大人の発達障がいがわかる本」を含めた知識の少ない自分でも読みやすい内容の専門書を読んでいただくことでしっかりと地に足の着いた取組みを始めることができるようになります。まずは、最寄りの本屋さんの専門書コーナーにある気になった本から手に取ってみてはどうでしょうか。
最後に、これら『発達障がい』を扱う書籍やインターネットで得られる情報で注意していただきたいことがあります。それは、記載されている内容が絶対ではないということです。冒頭でご紹介しました企業担当者からの相談「一緒に働く従業員が発達障がいかも・・・」といった事例の時、専門の医療関係者ではない限り、得た情報だけを頼りに該当する人のことを「発達障がい者」と決めつけることは出来ませんし、その場面において何かしらの状況が影響したのかもしれません。私も、相談者から『発達障がい』かどうかのお話しを聞かせていただく時に必ず注意していることは「私は医者ではありませんから、しっかりとした診断を受けるようにしてください」と相談者にお伝えをしています。
病気や障がいを疑うことは大切なことではあると思いますが、必ず専門の医療機関による診断結果をもとに対処法を考えるということをくれずれも忘れずに。