書籍:「障害者雇用で幸せになる方法」

障がい者雇用に取り組んでおられる企業の経営者や人事担当者であれば『もにす認定制度』というワードを一度は耳にされたことがあると思います。

『もにす認定制度』とは

「障がい者の雇用の促進及び雇用の安定に関する取組の実施状況などが優良な中小事業主を厚生労働大臣が認定する制度です。
認定制度により、障がい者雇用の取組に対するインセンティブを付与することに加え、既に認定を受けた事業主の取組状況を、地域における障がい者雇用のロールモデルとして公表し、他社においても参考とできるようにすることなどを通じ、中小事業主全体で障がい者雇用の取組が進展することが期待されます。」

※厚生労働省HP「障がい者雇用に関する優良な中小事業主に対する認定制度(もにす認定制度)」より抜粋

企業における障がい者の雇用実態のひとつとして「中小企業における法定雇用率の達成割合の低水準化」があります。これは、障がい者雇用の指針である法定雇用率の達成について、規模の小さな企業ほど法定雇用率を守られていない状況が続いています。
障がい者の雇用が進んでいない理由は企業によって様々ではありますが、大企業に比べて社会課題についての関心度合いの低さや法令遵守としての意識の脆弱さから生まれてきているのではないかと考えます。

一方で中小企業もしくは障がい者の雇用義務のない規模の企業でも熱心に障がい者を雇用しているところが全国にあります。障がいのある人材を雇用することで企業はどのようなことを手にしたのでしょうか。おそらくそこには障がい者を戦力化し、職場定着を実現させるヒントがあると考えます。

今回ミルマガジンでご紹介する書籍は一般社団法人ありがとうショップの代表理事 砂長美ん氏が執筆されました『障害者雇用で幸せになる方法』です。
著者の砂長氏自身も発達障がいのLD(学習障がい・ディスレクシア)がある中で働く障がい者と社会の接点を作ろうと日々奮闘されています。以前に砂長氏を取材した記事を下記にご紹介します。

取材レポート:『一般社団法人ありがとうショップ 代表 砂長美ん氏』

2020.02.25

本著ではもにす認定を取得された5社の企業による障がい者雇用の取り組みが紹介されています。5社のうち4社は本著が発刊された時点では障がい者雇用義務のない従業員数43.5名以下の企業です。

障がい者の雇用義務のない企業がなぜ障がいのある人材を雇用し、もにす認定を取得するまでに至ったのか。おそらくそこには数値達成だけでは測れない障がい者雇用を取り組むことによって企業として、人として得難いものがあるのだと感じます。
もちろんのことながら各社とも障がい者を雇用する経緯や実践内容は様々なのですが、共通項として見られるのは障がい者雇用を通して「自分との違いを認識・許容する」組織づくりです。

障がい者雇用では、より本人の特性に合わせた業務マッチングや成果を発揮してもらうために職場で行う合理的配慮など、個々の視点に立った働き方ができるような工夫を企業側は求められます。裏を返せば、個人の求めに応じた職場環境が整えられる組織は生産年齢人口が減少する遠くない未来において人材の確保の苦労を軽減できるのではないかと考えます。

また、本著ではもにす認定を取得するための解説やポイントなどをわかりやすく図解とともに紹介されています。もにす認定は中小企業を対象にした制度ではありますが、認定を取得するためのプロセスは企業規模に関係なく、障がい者雇用の「質」の向上を図る上では非常に参考になる制度であります。

2024年度以降、法定雇用率の引き上げをはじめ障がい者雇用を進めている企業を取り巻く環境が変わる節目のタイミングになります。これまでは法定雇用率の達成を第一の目標として取り組んでいた企業も、これからは雇用の「質」を問われることになります。では、雇用の「質」とは何を指すのでしょう。

具体的に「これです」と定義されたものはありませんが、障がい者を含め社会には様々なマイノリティ(少数派)が存在します。場面によっては自分もマイノリティな存在かもしれません。歴史を振り返っても社会はマジョリティ(多数派)によって形成されることが圧倒的に多くありました。
しかしながら、時代が進み考え方・文化が進歩したことで生まれた豊かな社会性により他者へ関心を向けることが評価されるようになりました。このタイミングをきっかけに、著書の表題「障害者雇用で幸せになる方法」と出会い、企業と人材が成長できる組織をひとつでも多く生まれてほしいと願います。

 
著 書:「障害者雇用で幸せになる方法」もにす認定5社の企業戦略

監 修:砂長 美ん(すななが・びん)
一般社団法人ありがとうショップ代表理事。ぜんち共済株式会社宣伝顧問、一般社団法人TED工賃向上担当、中小企業家同友会会員、ハートフォーアートプロジェクト広報担当、ヘアメイクアーティスト。
ありがとうショップでは、全国の働く障がい者の所得向上を目的として、障がい者施設と企業・個人の仕事づくりを事業の柱としている。20014年から、国会議員会館で障がい者施設の商品の総卸を担当。全国各地、高齢化町おこし、障がい者の仕事を結ぶコンサルが好評。

発行者:川畑善博
発行所:株式会社ラグーナ出版
鹿児島市西千石町3-26-3F

ABOUTこの記事をかいた人

[障害者雇用コンサルタント]
雇用義務のある企業向けに障害者雇用サポートを提供し、障害者の雇用定着に必要な環境整備・人事向け採用コーディネート・助成金相談、また障害者人材を活かした事業に関するアドバイスを実施。障害者雇用メリットの最大化を提案。その他、船井総研とコラボした勉強会・見学会の開催や助成金講座の講師やコラム執筆など、障害者雇用の普及に精力的に取り組んでいる。

▼アドバイス実施先(一部抜粋)
・opzt株式会社・川崎重工業株式会社・株式会社神戸製鋼所・沢井製薬株式会社・株式会社セイデン・日本開発株式会社・日本電産株式会社・株式会社ティーエルエス・パナソニック株式会社・大阪富士工業株式会社・株式会社船井総合研究所・株式会社リビングプラットフォーム