ご存知のとおり2024年度は障害者法定雇用率の引き上げや除外率の引き下げなど、障がい者雇用に関連した法律改正が施行されます。これまで以上に障がい者の雇用に伴い多様性を理解した共生社会がより一層促進される世の中となります。
自社での障がい者雇用に取り組むにあたり、他の企業・組織が実践している障がい者雇用には多くのヒントと気づきが内包されています。
我々のミルマガジンを始めとして、障がい者雇用関連のWEBサイトや書籍、各種メディアで障がい者雇用に取り組む企業の事例が紹介されています。
私のこれまでの経験から、他の企業による障がい者雇用の事例をそのままコピペしようとしても思っていたよりも上手く導入ができないことが少なくありません。おそらく、参考にしようとした企業が取り組むにいたった背景や過去の経験、障がい者と働く上での従業員の意識などに相違があるといったことが理由だと考えられます。
他の企業の事例においては、あくまでも良いところを参考にしながら、自社独自の雇用スタイルをカスタマイズするようなイメージがしっくりいくと思っています。
今回ミルマガジンでご紹介する書籍は、コラムニストとしてミルマガジンに参加していただいています株式会社ウェルガーデンの代表 古里靖氏が執筆されました『障がい者雇用のすすめ』です。古里氏はガーデニングの技術を活かしつつ障害者就労継続支援B型事業を複数開設した経験と新たなチャレンジとして企業向けの障がい者雇用コンサルティングの立場から、『障害者雇用のすすめ』を執筆されました。
本著では障がい者雇用に取り組む7つの企業を紹介。
著者である古里氏は各企業に取材を申し込み、直接担当者や経営者から聞いた障がい者雇用に取り組む話は、同じく障がい者雇用に熱心な取り組みを実践されている企業担当者や経営者がこの書籍を手に取っていただければ頷くことが多いはずです。
障がい者の雇用義務のある多くの企業にとって障がい者雇用の第一の目的は「法定雇用率の達成」となっています。しかし「法定雇用率の達成」に重きを置いた障がい者の雇用の先には何があるのでしょうか。
また、これからの障がい者雇用には「雇用の質」が問われると言われています。「法定雇用率の達成」にばかりフォーカスを当てた障がい者雇用の延長線上で「雇用の質」を問われた時に、企業側はどのような答えを持つのでしょうか。本著で紹介されている企業の中には障がい者の雇用義務のない組織も含まれています。では、なぜ障がい者雇用に取り組むのか。これは各社に通ずる点だと思いますが、「障がい者雇用の向こう側で得られる企業としての成長・人としての成長」を感じているのだと考えます。
障がいのある人たちと仕事を一緒にするということは、本人が求める配慮を周囲が理解しサポートする場面が職場で出てきます。時には自分の仕事の手を止めて一緒に考えることもあるでしょう。また、本人以上にその人のことを考えて行動することもあります。
こういったことを普段から継続していくためには強制的な働きかけよりも、企業文化として組織内に浸透しているからこそ行動に移すことができるのだと考えます。相互扶助の考えのある組織は企業としての成長があり、人としての成長が生まれるのだと本著を通じて感じることができました。
もちろん、本文には具体的な取り組みについても丁寧にわかりやすく紹介されていますので、自社の障がい者雇用の取り組みのテキスト本のような役割になっています。
私自身が本業である障がい者雇用コンサルティングでクライアント企業やその他講演などでお伝えしていることと大きく重なるところがありました。
今回、古里氏の著書を拝見し、改めて障がい者雇用と企業の関係性について考えてみました。この10年で企業による障がい者の雇用実績は大きく前進しました。しかしながら、それは数値的な視点からであってその中身を問われると疑問符がついてきます。
障がい者雇用の指針のひとつである法定雇用率の達成を目的として取り組みが進んだ一方で障がい者本人が望む雇用・働き方を実践できている企業がこの世の中にどの程度あるのか。そこで働く障がい者は障がいのない人たちと同じように自分たちの将来を夢見ることができる雇用なのか。単なる数合わせのための雇用となっていないのか。
この著書を読み、気づきを得ることができました。
著 者:古里靖(ふるさと・やすし)
1965年生まれ、秋田県出身。障がい者雇用と緑地管理のコンサルタント。
神奈川県の高校を卒業後、造園会社に3年間勤務した後、渡米。カリフォルニア州サクラメントで2年間ガーデナーとして働く。
帰国後、様々な職業を転々とした後、庭仕事は天職と悟り、個人宅を中心に毎月1回定期的に訪問するスタイルのガーデンクリーンナップサービスを開業。園芸療法に出会い、精神障がい者と共に庭仕事をする。
所属するキリスト教会の牧師が運営するNPO法人の下で障がい者の就労支援施設を設立し、所長に就任。
「ガーデニングで障がい者支援」をコンセプトに障がい福祉サービス事業所レインツリーを開設。以降、12年間で事業所を4か所開設し、延べ300名以上の支援に携わる。
事業を通して障がい者雇用の現状を知り、障がい者本人への支援から、雇用する企業の支援に軸足を移すことを決意し、株式会社ウェルガーデンを設立。障がい者従業員による緑地の維持管理体制の構築を主とするコンサルティング事業を開始。障がい者がいきいきと働く緑豊かな企業が増えることを目指して活動中。
株式会社ウェルガーデンのホームページ https://wellgarden.work/
発 行:合同会社オールズバーグ
発 売:株式会社扶桑社
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