Q&A:精神障がい者の採用に不安があるんですが・・・

来年度の「精神障がい者の雇用義務化」を目前に控えて、精神障がい者の採用・雇用に不安を抱える企業がとても増えています。今回は、そういった過去に精神障がい者の採用をしたことがない企業からのご相談です。

これまで当社では精神障がい者の採用をしたことがありません。実は、過去にメンタルを壊して休職や退職をした従業員を見てきたため、精神障がい者に対するイメージが良くないのも、採用が進まない原因だと感じています。本当に精神障がい者の人に働いてもらうことって可能なのでしょうか。

今回のご相談も障害者雇用をこれから本格的に始めようとする企業にとっては大きな悩みのひとつだと思います。

企業にとって「精神障がい者」に対する印象は決して良いものではありません。理由は、ご相談者の企業のように、従業員がメンタル不調になり徐々に元気がなくなっていき、最終的に休職や退職してしまうケースを経験してしまうと「精神障がい者」という人材は企業で活用することが不可能だという思い込みを植え付けてしまいます。

2016年度より労働安全衛生法の改定で企業に導入されました「ストレスチェック制度」により、企業によるメンタルヘルスへの関心度合いは非常に高いものとなりました。しかし、制度が始まったばかりの現在は、「ストレスチェック制度」

本来の意義や必要性が、従業員の隅々まで行き渡っているのかというとまだまだ十分ではありません。また、各企業を見てもリワーク(職場復帰)を目指した復職プログラムが確立していないところが多いこともあり、より精神障がい者に対するイメージが低いままになってしまっているのも仕方のないことです。

では、本当に精神障がいを持つ人材は企業にとって戦力として採用するに値するのか。答えは“YES”です。

ご存知のように、精神障がい者は身体障がい者に比べて障がいの特徴などをイメージすることが非常に困難なために周囲は配慮の仕方が分からずに距離を置いてしまいます。それに、前述したようなメンタル不調となった従業員を見てしまうと・・・

まず、現在精神障がいに該当する特性を列挙しますと「うつ病」「双極性障がい(そううつ病)」「統合失調症」「高次脳機能障がい」「てんかん」、それと知的遅れのない「発達障がい」が主だったものになります。

それでは、精神障がいの中でどの特性であれば雇用に適しているのかというと、どの特性であっても雇用することは可能です。

当然、担当してもらう業務内容や作業によって適性がありますので、その点は考慮した上での採用をする必要があります。例えば、「てんかん」であれば、特徴として発作が考えられますので、車や工作機械などの操作に従事するような業務には不適合だということは想像できると思います。

精神障がいの各特性の症状や特徴を正しく理解するところから始める必要があります。身体障がい者の場合、仮に足に障がいを持つ方に対しては移動のある仕事や重たいものを運ぶような仕事を避けると思いますが、これは足の障がいを理解しているからそのような行動を取っているのです。同じように、精神障がいの場合も事前に各特性の“正しい”知識を周囲が持つことで受入れを可能にします。この時に注意してもらいたいことが、“正しい”知識を周囲が持つということです。

例えば、「統合失調症」には幻聴や幻覚を見るといった特徴があるのをご存知でしょうか。それだけを聞くと、働くことが出来ないと感じてしまいますが、現在は治療方法もかなり進んでいますので、寛解(ほぼ完治した)状態として社会復帰している人も増えてきました。

また、「うつ病」や「双極性障がい」を発症した人でも、しっかりと通院や処方を守り、整った生活リズムを数年送っている人材であれば、十分採用に足る障がい者だと思います。

もうひとつ重要な点を申し上げます。それは、“面接力”を身に付けるということです。前述のような企業にとって戦力となる精神障がい者は、求職者の中にたくさん存在しますので、採用する企業側が正しい知識を持つことでそれを実感していただけるはずです。採用過程のポイントとして面接がありますが、この時にしっかりと人材を見極めないと企業側は正しい知識を持っているにもかかわらず、面接で見落としや確認漏れがあったために戦力不足な人材を採用してしまった場合、せっかく精神障がい者に対するポジティブなイメージを損なう結果となってしまう恐れがあります。

例えば、面接の回数は複数回の実施。求職は面接のときにはしっかりとピントを合わせて自分を準備します。1回の面接で知ることのできる部分は限られますので、何度お会いしても同じ良い印象を持てるかどうかを判断基準にしてください。

それと、上記に少し記しました生活リズムがどの程度整っているかを確認してください。面接ではしっかりとした受け答えをしていても、定期的な通院や服薬を守っていないのであれば、雇用してから崩れる可能性は大いに考えられます。こういった点もしっかりと見極める上でも“面接力”を身に付けることが大切です。

企業にとって安心して働いてもらえる精神障がい者はたくさんいます。しかし採用する企業側の問題で実現できていません。障がい者から選んでもらえる企業を目指すために必要な対策を講じる良いきっかけにしてください。

ABOUTこの記事をかいた人

上前 忠司 (日本障害者雇用総合研究所代表)

[障害者雇用コンサルタント]
雇用義務のある企業向けに障害者雇用サポートを提供し、障害者の雇用定着に必要な環境整備・人事向け採用コーディネート・助成金相談、また障害者人材を活かした事業に関するアドバイスを実施。障害者雇用メリットの最大化を提案。その他、船井総研とコラボした勉強会・見学会の開催や助成金講座の講師やコラム執筆など、障害者雇用の普及に精力的に取り組んでいる。

▼アドバイス実施先(一部抜粋)
・opzt株式会社・川崎重工業株式会社・株式会社神戸製鋼所・沢井製薬株式会社・株式会社セイデン・日本開発株式会社・日本電産株式会社・株式会社ティーエルエス・パナソニック株式会社・大阪富士工業株式会社・株式会社船井総合研究所・株式会社リビングプラットフォーム