今回は読者からいただいた2つの質問についてお答えします。
【Q①】
障がい者法定雇用率について質問があります。
現在の法定雇用率は2.3%ですが、今後も引き上げられていくのでしょうか。どの程度まで引き上げられるのか教えてください。
よろしくお願いします。
《通販会社、従業員数約200名、人事担当者》
【A】
ご質問ありがとうございます。
先に結論から申し上げると間違いなく障がい者法定雇用率は「今後も引き上げられます」。
現行法では5年ごとに法定雇用率を見直し、直近の経済状況や社会情勢に照らし合わせながら引き上げの時期を決めています。
元々、障がい者法定雇用率が企業に義務化されたのは1976年に遡ります。当初の法定雇用率は1.5%から始まり、1988年1.6%→1998年1.8%→2013年2.0%→2018年2.2%→2021年2.3%と段階的に引き上げられてきました。
直近で耳に入ってきた情報では2023年度か2024年度には法定雇用率が引き上げられるようで、おそらく現行の2.3%から2.4もしくは2.5%になると考えられます。
この法定雇用率がどの程度まで引き上げられるのかが明言されているわけではありませんが、参考までに内閣府から公表されている障がい者白書に記載されている国内の障がい者人口から考えてみましょう。現在の統計によると身体障がい者が約436万人、知的障がい者が約109万人、精神障がい者が約419万人となり、合計で約954万人の障がい者が国内で生活されています。比率にすると7.7%となります。例えば、身体障がいと精神障がいが重複している方もいらっしゃるなど、多少の誤差があると考えても現在の法定雇用率と比較したときには大きな開きが見られます。
仮に人口比率を7%と見立てたとして、その半数の3.5%が当面の目標値だとするとこの数十年の間に1.2%程度は引き上げられるのかもしれません。
一方で、感覚的なところではありますが、障がい者法定雇用率が引き下げられることはないでしょう。
これまで障がい者の雇用義務のある企業が取り組む上で指針となってきた法定雇用率が今日の成果につながっている理由のひとつであることは周知の事実です。今後は、法定雇用率の達成に加えてはたらく障がい者の満足度を高める「質」の部分を充実させていくことが企業に求められると考えます。
【Q②】
以前に精神障がい者の短時間労働に特例措置があると聞いたことがあります。どのような特例措置なのか教えてください。
またどのようなメリットがあるのでしょうか。
よろしくお願いします。
《ビル管理会社、従業員数約350名、人事担当者》
【A】
ご質問ありがとうございます。
人事担当者と障がい者採用に関する打合せの際にこの特例措置についてお話をすることがあるのですが、ご存知ない担当者が案外多いようなので、改めてご説明します。
以前から精神障がい者の採用が企業によって進められる中、2017年の改正障がい者雇用促進法以降、より一層の精神障がい者の雇用が押し進められることになりました。
企業が法定雇用率の引き上げの対応や社会的な課題への取り組みとして障がい者の採用に注力していくためには、障がい者労働力の確保を考えたときに精神障がい者・発達障がい者の採用へと大きく舵を切る必要がありました。
しかしながら、企業側には精神障がい者・発達障がい者を雇用するための知識や経験値が少ないため、雇用を躊躇する会社が少なくありません。また、思い切って雇用を進めても職場での理解や意識が追いついていないために離職に繋がったり、その結果として障がい者雇用の進みが鈍化してしまっている企業も少なくありません。
そういった現状の中、精神障がい者・発達障がい者の雇用を推進していくための施策のひとつとして精神障がい者の短時間労働の特例措置があります。
内容は下記の通りです。
- 雇用対象者が精神障がい者手帳を取得している方
- 週20〜30時間未満の労働時間
- 本来0.5カウントが1カウントとして算定
- 下記2項目を満たす方
- 現在のところ令和5年3月31日までの期間限定の措置
・新規の雇入れから3年以内または精神障がい者手帳取得から3年以内
・令和5年3月31日までに雇入れをされた精神障がい者手帳取得者
この特例措置の企業側・当事者側それぞれメリットとしては、
【企業側】
- 短時間労働での勤務でも1カウントとして計算できる
- 初めての精神障がい者・発達障がい者の採用に取り組みやすい
- 経験値が少ない職場でも負担を軽減させながらの雇用が可能
- 短時間労働の求人によりエントリーする方が増加
【当事者側】
- 短時間からの労働で社会復帰が目指せる
- 体調を図りながら勤務が可能
などが挙げられます。
これから障がい者雇用に本格的に取り組む場合、精神障がい者・発達障がい者を求人ターゲットにも含めることが求められています。しかしハードルが高いイメージの中、短時間労働からのスタートでも1カウントとして算定できますので、この機会に雇用の準備を整えてみてほしいと思います。
上記にも記載しましたが、この特例措置は令和5年3月31日が雇用の期限となっています。まずは管轄のハローワークの窓口に問い合わせしてみてください。