【Q&A】①「休職する従業員の手帳取得」②「発達障がいかもしれない従業員への対応」

皆さんにご覧いただいている『ミルマガジン』は「障がい者雇用を頑張る」企業や人事担当者を応援するためにこの世に生まれました。

「法定雇用率を達成させたい!」という義務感だけで進めがちな障がい者雇用では今の時代は多くのミスマッチにつながってしまい、思ったような成果にならず納付金(罰金)を支払う状況になるかもしれません。法律助成金に関する情報をはじめ、他社事例や支援施設・専門家によるアドバイスなどを発信することで『障がい者雇用が企業の成長』になると感じていただきたいと思います。そのような取り組みであれば企業にとって「障がい者雇用=デメリット」ではなく、「障がい者雇用=メリット」として理解されると考えています。

今回は企業の人事担当者からいただいた2つのご質問にお答えしたいと思います。

休職する従業員の手帳取得

【Q①】

いつもお世話になっております。
当社の営業部に勤務する20代後半の従業員Sの件でご連絡しました。入社6年目のSが所属する課長から人事の私に相談がありました。Sは体調がすぐれないということで心療内科を受診したところ「うつ病」だと診断を受けました。しばらくの間、休職をすることになったのですが、Sに障がい者手帳の取得について話をするというのは問題があるのでしょうか。
当社は障がい者法定雇用率がギリギリなため、Sが手帳を取得した上で会社に届けてもらえると非常に助かります。
よろしくお願いします。
《システム会社、従業員数約700名、人事担当者》

【A】

今回のようなご質問をいただくことは少なくありません。採用に困っている人事担当者であれば一度は考えてしまう事例だと思います。

結論を先に申し上げますと会社側から精神疾患による休職となる従業員に対して障がい者手帳の取得を促すことはNG行為ですから実行してはいけません。原則として障がい者手帳の取得は本人の意思が優先されます。「医療機関の診断内容=障がい者」ではなく、「障がい者手帳の申請・取得=障がい者」となります。

精神疾患という診断により障がい者手帳を取得してほしいと考えるのは会社の都合によるものです。それよりも休職する従業員の不安な気持ちに寄り添う姿勢が必要ではないでしょうか。
今の時代、企業に求められているのは売上げや利益に加えて、従業員とその家族の豊かな生活の実現だと考えます。(働いている従業員の幸せを考えられない企業がこれから採用しようとしている障がい者のことを考えられるのでしょうか)「従業員が精神疾患に掛かからないための予防策」と「精神疾患による休職及び復職の対応」を考えておかなければいけません。元気なうちはどうしても他人事として捉えてしまうため、いざという時には遅い対処になってしまいがちです。

考えられる対処法としては、「精神疾患から身を守る方法」「体調不良を感じた時の対処法」「休職から復職までのプロセス」を準備し、従業員へ周知してもらうことだと考えます。この時の「休職から復職までのプロセス」の項目で、

  • 障がい者手帳の取得について
  • 障がい者の優遇措置(所得税や贈与税の軽減、公共交通機関の費用優遇、地域によっては助成金など)
  • 処遇面への影響
  • 体調に配慮した配属

などを説明しておくことが重要となってきます。

それらの事前周知には時間が掛かります。しかしながら、従業員への周知がされてる企業であれば、障がい者雇用への従業員理解も進んでいる可能性が高いと考えます。
そうすることで、ご自身から障がい者手帳の取得後の届け出も考えられると思います。

発達障がいかもしれない従業員への対応

【Q②】

お世話になります。
昨年中途採用しました従業員が発達障がい者かもしれないと思うことがありご相談で連絡しました。例えば、「仕事の締め切りを守れない」「ケアレスミスが多い(違う取引先にメール)」「アポイントを忘れる」といったことが、頻繁に発生したためにまわりの従業員からは距離を開けられています。
私自身は本などで読んだ程度の知識なので、絶対そうだと言い切ることはできませんが、発達障がいの特徴に当てはまるところがあると感じています。
この場合、本人と話しをするべきなのでしょうか。その場合は、どのような話をすればよろしいでしょうか。
よろしくお願いします。
《製造メーカー、従業員数約650名、人事担当者》

【A】

こちらのご相談内容ですが、大きな組織となり従業員数も多い企業の人事担当者であれば体験した方も少なくないのではないでしょうか。それぐらい、増えてきている内容だと感じています。

ご相談者は「本人と話をするべきでなのしょうか」とあります。これについては、このまま放置をすることはできませんので、早い時期に面談の時間を設定することが望ましいです。その際にどのような話をすることが良いのかということです。

例えば、人事担当者や上司から「君は発達障害者ではないか」と指摘することは専門的な医療機関しかできませんので、必要のない揉め事を増やすだけです。
この場合、職場で一緒に働く周囲の方々が距離を置くぐらいに困っている状況にあります。もしかすると、本人も「仕事」「周囲とのコミュニケーション」「日常生活」などの場面で『困り』を感じている可能性が考えられますので、先ずはその『困り』について本人から聞いてみる時間を設けてください。『困り』を感じているということは、どこかで苦しさを我慢しているはずです。誰かに助けてほしいと願っている部分があれば、その『困り』を解消する手伝いをするという気持ちを伝えてください。
解消するための手伝いのひとつとして、専門機関や医療機関への相談を切り出してみてください。忘れてはいけないのが、「自分たちは『困り』を解消する手伝いをする」という立ち場です。

文部科学省が2014年に行った調査によると、小中学校の生徒の約6.5%が発達障がいの傾向が見られるといわれています。成人し社会人として企業で働く年齢になった時に「自分は発達障がいです」と認識している人がどれだけなのかは分かりません。
事実として、今回の相談のようなケースが稀な事例でないということは、採用側である企業が柔軟な受入れ環境を作らなければいけないのではないだろうかと考えています。そうでなければ、「障がい者雇用は義務」「障がいのある人は職場では邪魔」「興味がない」といった状態から抜け出すことは非常に難しいでしょう。

障がいが有ろうと無かろうと、その人の持つ強みや弱みとなる特徴を活かした組織づくりが言葉だけではない真の「ダイバーシティ経営」を実施してる企業であれば求人募集にも困らなくなると思います。

ABOUTこの記事をかいた人

上前 忠司 (日本障害者雇用総合研究所代表)

[障害者雇用コンサルタント]
雇用義務のある企業向けに障害者雇用サポートを提供し、障害者の雇用定着に必要な環境整備・人事向け採用コーディネート・助成金相談、また障害者人材を活かした事業に関するアドバイスを実施。障害者雇用メリットの最大化を提案。その他、船井総研とコラボした勉強会・見学会の開催や助成金講座の講師やコラム執筆など、障害者雇用の普及に精力的に取り組んでいる。

▼アドバイス実施先(一部抜粋)
・opzt株式会社・川崎重工業株式会社・株式会社神戸製鋼所・沢井製薬株式会社・株式会社セイデン・日本開発株式会社・日本電産株式会社・株式会社ティーエルエス・パナソニック株式会社・大阪富士工業株式会社・株式会社船井総合研究所・株式会社リビングプラットフォーム